第9話 フロッタージュ

僕はこの手紙を見て、最初は一瞬わかりませんでした。けど‥‥‥


「確かにこの字はわかるよ」


「本当ですか!光様!」


ミリアが驚きながら僕を見ますよ。

で、その場にいた全員も僕を見て驚き、僕に一斉に視線を送りますよ。

僕はいったいないごとなのかわからなく


「ところで、手紙(これ)はどうしたの?」


「それよりも光様、これ、なんて書いてあるんですか?」


みんな僕が読めるよりも、この手紙の内容が早く知りたくウズウズしてますよ。

で、仕方ない顔をして僕は手紙を見ます。

その手紙は四行程の字が書かれていた。

で、その字とは‥‥‥


「カタカナ?」


そうなんです。カタカナで書かれていたんです。

ただ、その字は変なんですよね。

どう変かと言うと、字が逆さまなんです。

例えばアとかタなんて字は逆向きになっているんですよ。

よく小さい子供が覚えたての字を逆向きに書いてしまう。あんな感じです。


で、その手紙の内容は‥‥‥


「コノ‥テガミ‥ヒロッタ‥ラ‥文字がかすれて消えたりしているところがあるから読みづらいな」


「光様、それより続きを!」


「ミリア‥‥‥わかった」


「ワタシ‥タチ‥ト?‥トラ‥トラワレテマス」


その文字を僕が読むと、一同驚きます。

それはそうです。誰かが捕らわれていると書かれてますので。


「ナ?‥タ?‥ダ‥ダレカ‥ダレカ‥タスケテ‥クダサイ‥オネガイ‥イソイデ‥オネガイ‥‥‥」


僕が読み終わると、その場の空気が重たくなり、周りが静まりかえります。

そして僕が読み終えた手紙をテーブルに置くと、皆んなはその手紙を見つめます。


「ミリア‥‥‥これって‥」


「え、ええ。助けを求める手紙‥‥‥」


そう!これは助けを求める手紙。

しかもかなり急いでの。

女性兵も深妙な顔つきで、手紙を見つめます。そしてこの手紙を出した女性兵は


「ミ、ミリア姫様。この様な内容の手紙とは知らずとは言え、姫様に見させた事、まことに申し訳ありません」


席をガタンといきなり立つと、ミリアに頭を下げた。


「いえ、寧ろ感謝ですわ」


「えっ?」


「一国の姫として、この助けを求める手紙は無視する事は出来ませんわ!」


ミリアはテーブルの手紙を取ると、女性兵にそう言います。

まあ、確かにミリアのこの言葉に、その場にいた全員がミリアを感心な眼差しでみますけどね、


「けどミリア。この手紙だけでは、何処の誰だかわからないわ」


悪亜が正論の事を言いますよ!あの悪亜が!

けど、悪亜の言葉に僕も頷きます。

だって、これだけでは何処に行って誰を助ければいいかがわからないですからね。


で、因みに書かれていた内容が↓


コノテ・・ヲヒロタヒト・・オネガイ・

・・・・・・・ニトドケテ。ダレカ

イソイデ。アタシタチトラワレテマ・

オネガイ。

(この文章の・は消えて読めない字)


この手紙と小瓶に何かてがかりがないか、僕らは目を皿のようにして見ていたが‥‥‥


「手がかり‥‥‥ないですわね」


「そうですわね‥‥‥」


「姫様達‥‥‥私がこの様な手紙を出したばかりに‥‥‥本当に申し訳ありません」


また、女性兵が謝ってきたのでミリアとメイルは首を横に振ります。

やはり二人は女性でも、民の上に立つ王の娘ですからね。この様な内容の手紙を見せられては黙っていられるわけがないですよ。

けど、何度見ても触って見ても、手紙や小瓶からは手がかりは見つかりません。

で、そんな時悪亜が、


「ねえ光」


「なに?悪亜」


「あの手紙のアの字、あれだけは私覚えていたのよ。悪亜のアの字だと光が‥‥‥500年前の私の旦那が教えてくれたから」


悪亜は手紙を見ながら、何か遠い記憶を思い出したかの様に言うと、少し目を潤ませていた。

そんな気持ちの悪亜に僕は手紙を見ながら言います


「うん。カタカナでかいたアクアのア字だよ。そして、こうも思っていたと思うよ。500年前の僕は」


「えっ?」


「アの字は悪亜のアの字だけど、多分‥‥‥いや、絶対にこう言いたかったと思う。愛してるの愛(アイ)のアの字だと」


「光‥‥‥あなた‥‥‥」


悪亜の少し潤んだ瞳から頬をつたい、一粒の涙が流れた。

そして、悪亜は過去の記憶が脳裏に浮かび、物思いに悲しく耽ると‥‥‥

思いました?みなさん。違いますよ。


「やはり500年前と今の光は変わらないわ♡」


僕にいきなり抱きついてきましたよ。

しかも、メイルとミリアのまた前で。

そんな事すれは、またメイルとミリアは、炎のメイルとミリアになりますよね〜、て、既にまたなっててますよ。


「「悪亜あああ!!」」


と、まあ〜僕は三人の間で揉みくちゃにされます。

女性兵のみなさ〜ん!

今こそ言う時です。僕をお城に戻しますよ!と。

言えるわけないですよねぇ〜姫様相手では。

で、僕は三人から逃げようと、テーブルに手を置きます。で、その指先にあの手紙があったんです。

で、で、指先が少し黒く汚れていたのか、手紙が汚れてしまったんですよ。

そんな汚れた手紙を見て僕はある事に気付きました。


「あれ?‥‥‥これって‥もしかして」


僕は店の主人に紙と書くものを持ってきてもらうように頼んだんです。

で、店の主人が紙と鉛筆の様な黒い炭だろうか?持ってきた。

僕はそれを受け取ると、紙を手紙の何も書かれてない部分に当てます。そしてその当てた紙の上から鉛筆の様なもので、黒く薄く塗りつぶしていくと‥‥‥


「な、何ですか?これは!」


紙に浮かび上がったのは‥‥‥。













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