9年前に思い付いていたネタ

山村 草

柑橘類?


柚子ゆず柑子こうじか…」

 突然、さきはつぶやいた。

「咲、どうかした?」

「ほら、柑子こうじってみかんの事でしょ? 浩二くんの名前と一緒」

 柑子、という単語がたまたま呼んでた本の中に出てきたのだろう。

「柚子とみかんで柑橘系つながりじゃない? 私だけ仲間はずれだな…」

 なんでこう自分からネガティブになろうとするんだろう。

「おーす。元気か?」

 病室に入るのに「元気か?」などと場違いな事を言いながらくだんの浩二が現れた。

 ネットに包まれた八朔を持って。

「あ、浩二君だー。ヤッホー」

 咲は手をあげて浩二を迎える。さっきまでしぼんでたのはどこの誰だ。

「浩二くんそれ甘夏?」

「ん、これか? いや、八朔だけど。たまたま下の売店で売ってたから買ってきた。食べるか?」

 咲は嬉しそうに答えると浩二から八朔を受け取る。

「八朔か…」

「柚子ちゃんも、はい」

 私は受け取った八朔を見つめてみる。そしてあることに気づく。

「ああ、なんだ。咲、メモ帳とボールペン取って」

 私はメモ帳にまず浩二=柑子と書いた。そしてその下に自分の名前である柚子と書く。

「お、なんだ? 何が始まるんだ?」

 まるで意図の読めない浩二が聞いてくる。咲もきょとんとしている。

 私は「柑子」の横にさらに「葉月咲」と書き「葉月」の上に=を縦に書いて「八月」と添える。

「あ、ひょっとして!」

 咲も気づいたのかボールペンを取って「咲」の上に「朔」と書く。

 私は咲と目を合わせると「八」と「朔」を丸で囲む。

「つまり八朔! 柑橘類だ! みんな一緒だね」

 咲は嬉しそうに声をあげる。

 浩二はそれでも分かっていないのか「うーん」と首をかしげていた。

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9年前に思い付いていたネタ 山村 草 @SouYamamura

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