スライムとは。
立派な体躯と角という武器も手に入れたことで、颯真は自分から打って出ることにした。
フクロウ形態で上空から獲物を定め、近場に降りて分裂・リス化して獲物に近づき、物影で合体・猪化の合わせ技である。
角猪の突進力と角の威力はなかなかエグく、死角からの刺突攻撃はかなり有効だった。
丸3日ほどを費やして、颯真が仕留めた獲物は、およそ4種類で、狩った総数にすると15体ほど。
大型だと3m近い熊、中型では狼、野犬、鹿などである。
初めての狩りにしては、なかなかの成果といえるだろう。
反撃を受けそうなときもあったが、スライムの液状化が役に立った。
地面すれすれを攻撃できる獣は少なく、薄っぺらになると身体が透き通って、なんちゃって
使いこなすと味がある。やるな、スライム。
残念ながら、魔獣や魔物と呼称される生物は狩れなかった。
数としてはいるようなのだが、颯真が近づくと敏感に察知しているのか、すぐにいなくなってしまう。
逃げ去っているという表現が正しそうな感じなのが、いささか不可解ではあったが。
大型の熊の身体が手に入ったので、颯真はさっそく元々の目的であった大型擬態への検証を行なってみることにした。
結果から先に述べると、スライムの体積以上の生物への擬態は可能だった。
難なく行なえはしたのだが――1点だけ、他と違う現象があった。
(なんか、身体から抜けていっているような?)
脱力感というか、気だるさ。
体力的な疲れとは違う、精神的な疲労感がある。
ファンタジー的な考えで、消費するとしたら
どうも、体積の足りない分は、そういったもので補われているものらしい。
分裂して行なうとかなり顕著で、4分裂後に各々で熊に擬態したら、ごっそりとなにかが失われる感があり、一瞬気が遠くなるところだった。
他にもいろいろ検証してみたので、ここまででわかったスライムの生態をまとめてみた。
1.スライムは、固体化・軟体化・液状化の形状が自由自在。
2.スライムは捕食した生物の擬態を取れる。
3.擬態後は捕食した生物の特性を持つ(使える)。
4.スライム形態では最大4分裂できる。もっとできそうだが自我が薄れて危険。
5.分裂したそれぞれでも擬態できる。
6.スライムの体積より大きな生物への擬態はMPを消費する。
7.死んで時間が経過したものは捕食しても擬態できない。
8.身体が欠損している生物を捕食しても擬態できない。
こんなところか。
最後の7と8は、偶然検証できたものだ。
颯真が先日用意していた落とし穴――狩りを終えて戻ってみると、そのうち2つに獲物が落ちていた。
1つは打ち所が悪かったのか、穴の底で雌鹿が絶命していた。
死後1日以上は経過しているその雌鹿を捕食したが、擬態できなかったので、これが7。
もう1つには野犬と兎が仲良く落ちていた。
狩りの途中で追いつ追われつしている内に落ちたのだろう。
落ちたばかりか、野犬はとりあえずお食事中だったので、そのまままとめて頂いておいた。
すると、野犬には擬態できたが、身体を欠損していた兎はできなかった。で、これが8。
擬態という武器も得たし、最低限の知識も得た。
(森にも飽きてきたし、いよいよ本格的に異世界を堪能しますか!)
颯真がフクロウ形態で空を飛んでいるとき、遠くの景色に町らしき人工物の集合体が見えた。
徒歩ならばかなりの距離だろうが、飛んでいけばすぐだろう。
異世界の町並みとはどんなものか。そこで暮らす人々はどんな人か。
退屈だった元の世界での生活に飽き飽きしていた颯真の心は躍る。
颯真はフクロウの翼を大きく広げ、
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