アメゾンランキングで一位になる確率、ルネD60SS
天派(天野いわと)
第1話 アメゾンランキングで一位になる確率
アメゾンランキングで一位になる確率 天派六四
我が輩はシニアである。
「天派さん、入選作をアメゾンにアップしておきましたから」
デジタル書籍コンテストの編集者からメールが入ってきた。
「あの、どれくらい売れそうですかね」
「分かりません。でも、一冊売れるごとにランキグがドンと上がりますから、それで大体の売れ方は分かりますよ。逆にランキング表示されない場合は一冊も売れていないってことですけど……お楽しみに」
我が輩、アメゾンに自作がアップされるのは初めての経験である。
さっそくアメゾンにアクセスして自作のタイトルを入れた。
おおおおおおおおおおお! 載ってる! 感動である。
我が輩、嬉しくなって隣近所にアメゾンで買ってくれと宣伝した。
「アメゾンで買うけど、実物だけなのよね。ごめん」
行きつけの喫茶店の客にも買ってくれと頼み込んだ。
「アメゾンってなに?」
「私現金主義なので」
「私、本屋さんで実際に手にしてから買うので……」
マスターに頼み込んだ。
「ワシ、ガラケーやし…」
我が輩もシニアなら知人もシニアである。アマゾンなんかで、電子書籍を買う人
間なんてほんどいない。唯一、単身赴任で暇だから小説をよく読むという隣の同級生がお情けで買ってくれただけだ。
我が輩、即ランキングをチェックした。
いきなり百位台にアップ!
うおおおおおおおお!
自主映画サークルでもアピールした。また一冊売れた。
ランキング六百位台に落ちていたのがまた二ケタ台にアップ。
我が輩、シャンソンの仲間にもアピール。二人買ってくれた。
ランキング、また二ケタ台に復活。
コメントも入ってきてる。面白い
☆四つとか三つ。しかしコメントはそれ以後、ぷっつりと途絶えた。
我が輩、やらせで自分でコメントを入れた。
アメゾンから返事がきた。
「ご自分の作品のコメントは入れられません」
そりゃ、そうだ。
とまれ我が輩、一冊売れるごとにランキングが動くことは理解した。
それでランキングをメモしていくことにした。
それで、その日売れたかどうか分かるからだ。
我が輩、デジタル書籍コンテストの他の入選作の売れ行きが気になった。
で夜間飛行ってのをチェックした。
あっちゃああああ、結構ランキング上位で推移している!
漫画原作の同窓会でもアピールした。また一冊その場で売れた。
我が輩、嫉妬も含めて、夜間飛行ともうひとつの入選作のランキングも
毎日メモることにした。
こっちの方のランキングは大したことがない。
我が輩、ランキングの乱高下をメモりながら一位になる確率って
どんだけあるんだろ。と思った。
我が輩と同じジャンルの電子書籍が十万部を超えたってコメントも入り始
めた。
トレンドには乗っているから一万部くらいはいくかなと夢想しながらランキ
ングをチェックしてランキング一位を夢見る一年が過ぎた。
入賞賞金とともに売れた分の印税が記入された封書が郵送されてきた。
売れたのはたった十二冊。自主営業が六冊だから実質六冊だけ。
我が輩、ランキング一位になる夢、一万部売れる夢から目覚めた。
我が輩、一年間、ライバル作品とともに書き続けてきたランキング表をその場で破り捨てた。
了
アメゾンランキングで一位になる確率、ルネD60SS 天派(天野いわと) @tenpa64
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