第十九話
「やばい!どうしよう…」
「う~ん…これはかなり深刻な問題だね」
「二人とも言ってるだけで何にも考えてないでしょ!!!」
ショッピングモールから帰ってきて真っ先に思ったのが家の惨状。
イデアが家に来てから簡単に片づけはしたものの、まだまだあちらこちらが散らかってる状態だし、会長さんとエンゲリスさんに頼まれてイデアを見るからには、彼女が住む場所も確保しなっきゃなんない。
今までだらだら過ごしてきたツケも溜まっているので、大掃除ならぬ超大掃除をしなければならないのが、今の我が家の問題。
帰ってきてからその事実に気が付いて家族で片づけしてるんだけど、何処から手を付けたらいいのかわからず現実逃避をしてしまっていたところ、カミサンに怒られたのが最初の台詞。
ただでさえ片付け下手な我が家にイデアが来ちゃったから、今の俺らの部屋はカオスな事になってのよ。かろうじて綺麗さを保っている息子の部屋をそのままに、一時的にリビングに置いてるイデアの荷物をどうにかしないといかん!安心して新年を越すために、まずは自分の部屋を何とかしたくて整理してるんだけど、モノが多くてどうにもならないよ。
イデアは今、勇気の部屋で死んだように寝ている。
知らない場所にいきなり連れてこられ、緊張する場面も多かったからだろうね。
車に戻ると同時に意識を失うように寝ちゃったから、今は布団の住人になってもらってるよ。
「せめて一部屋どうにかなればいいんだけどね」
「無理やり押入れに入れちゃえばなんとかなるかなぁ…」
「こんな時、某猫型ロボットの異次元空間があったらいいんだけどなぁ。そんな都合の良いものこの世の中に…」
「「あっ!!!まほうのかばん!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」
手を動かしながらそんな事言ってたら思い出しちゃったんよ!俺らにはイデアの魔法のかばんがあるじゃないか!もしかしたらあれ使えるんじゃないか?!!
そう思ってイデアの枕元に置いてあったかばんを持ったんだけど、持った瞬間感覚的に”使える”ってわかったんだよね。実際にかばんを開けて手を突っ込んでみたら中身がわかったから入れるのもOKだと思う。
理屈はよくわからないけど、きっとかばんも使う人を選んでるのかも知れないな。
「なんか知らないけど、俺は使えるかもしれない」
「ん?あ、私も使えるかも?中身わかるよ!」
「あっ!俺も使えるかも!!えっ!!何このお金!!すっげええ!!!!」
そんな事を言いながらも、試しに近くにあった試しに近くにあった服を入れようとしたらかばんに入れる瞬間シュポってな感じの音がして目の前から服が消えたんだ。
「やべぇ!これ面白ぞ!!どんどん入れてけ!!!」
「わかった!!」
滅茶苦茶面白くなって勇気と一緒に片っ端からどんどんモノを投げ込んでいったんだけど、かばんはまだまだ余裕がありそう。本当に面白いようにモノが入ってくもんだから、最初は呆れた表情で様子を見ていたカミサンも一緒になってモノを放り込んで行ったんだ。
これを使わない手はない!
まるで某猫型ロボットの異次元ポケットのように、片っ端からどんどん品物を入れていたら、自分の部屋などはものの30分で綺麗さっぱり空っぽに。各自の部屋を周って本当に片っ端からモノを入れまくってたら…
「やばい!すっからかんだ!!」
「まるで家じゃないみたい!!」
「ホント…何もなさ過ぎて落ち着かないよ…」
一応かばんの中身を覗いて見たら、あら便利!
『マサキの品物』『ユキの品物』なんてファイル別に保管されてるの。
さらにファイルを開くと、いろいろなものが頭に浮かんでくるあたり、きっとこれ考えた人パソコン使ってる人なんだろうなって思って思わず笑ってしまったよ。
改めてすっからかんな部屋を見て、ふと思い出したのがここに来たばかりの事。
勇気がまだ小さくてハイハイからつかまり立ちをしはじめようって時、新しい家を見て驚いたり、板張りの廊下で思いっきりこけて頭をぶつけて大きなたんこぶを作ったりしたんだよなって話したら、カミサンも懐かしく思ったのか勇気を見て笑ってるの。そんな楽しい思い出があったように、イデアにも楽しい思い出を作ってほしいって思うんだけど、これって俺の押し付けかなぁ?
ま、まぁ。
とりあえずスペースは確保したから、まずはイデアの部屋を作ろう。
「イデアが寝てる場所、そのままイデアの部屋にしちゃおうかな?」
「えっ?そこ俺の部屋なんだけど…」
「そうなんだけど…今のイデアほっとけないからリビングの近くのお前の部屋が一番都合が良いんだけどどうかな?なるべく早く勇気の部屋も作るから譲ってくれないか?」
「う…うん、そういう事ならしかたないか!でも、なるべく早く俺の部屋作ってよね」
勇気と話しながら思ったんだけど、異世界からここに来たばかりのイデアって精神的に不安定だと思うから、リビングの近くにある勇気の部屋が一番いいんだよなぁ。自分の部屋を追い出されたようになっちゃってると思うけど、本当に勇気にはてくれよ!頼むよ!
そんな事を言いながら部屋を整えて行ったら、殺風景でつまらない部屋になっちゃったよorz。本当にセンスないなぁ俺。
まあ、これから色々なものに興味を持ってもらいたいし、自分色にこの部屋も変えてみてほしいな!って思っていたらイデアが起きて来たから、かばんの事とかいろいろ話そうとしたらさ周りを見渡して青ざめてるの。
「どったの?イデア??」
「わ、私…また牢屋に!!!!!!!!!!…ん?あ?へっ?マサキ様?ユキ様ユウさんもいる…ここはおうちですか?うわぁぁあぁあああああああああ!!!!!」
なんかいきなり挙動不審になって、近くにいたカミサンに抱き着いて大泣きしはじめちゃったよ。どうしよう。たぶんだけど、あまりに殺風景だから昔の事を思い出して怖くなっちゃったのかな?これで扉閉めて一人にしたらどうなるかわからないぞこれ。
そんな事があって慌てていろいろ買ってきた結果。
花柄のカーテン、明るめの緑のじゅうたん。造花や間接照明までなんとなく明るめのモノが多くなった気がする。
落ち着かないイデアをカミサンに任せて、勇気と二人で乙女チックな部屋をめざして飾り付け、扉も外して暖簾を付けて見た。扉を閉めるとイデアが怖がるんだけど、丸見えになっちゃうと着替えとか見えちゃうのはどうかな?って勇気の助言を受けての事。普段何にも考えてないように見えたけど、こういう発言が出来るくらい成長したんだなぁ。
「イデアさんが着替えるときとか困るでしょ。俺も気を付けるから父さんも気を付けような!」
「おおっ!おバカなだんすぃかと思ってた勇気がそこまで考えられるなんて俺は本当に感動したよ!」
「俺もそれぐらいは考えらえるよ!まったくもう!」
いつまでも子供だって思ってたけど、すっかり成長したんだなぁ~本当にごめんよ。
イデアに関してはこれからいろいろ学んでいけばいい。
いつかこの環境に慣れてきて、トラウマがなくなってきたら扉をつければいい。
いつまでここにいるかわからないけど、ここにいるまでの間に少しでもこの環境に慣れてくれればいいなぁ。
もしずっとここにいるとして。
何かの出会いがあって、大事な人を連れてきてくることがあるかもしれない。
その時は温かく見守ってあげたいなって、う~ん。イデアが来てからなんつーか。まるで自分の娘を持った気持ちになっちゃってる。本当に変だよなぁ。
まぁ、若い子を見てよこしまな気持ちを持つ寄りからはずっとましだと思うからいっかな?なんて思いながら、勇気と二人であーでもないこーでもないって作業してたら、外はすっかり暗くなってた。
だいたいこんなもんか?なんて勇気と話しながら、ずっと見れてなかったカミサンとイデアを見に行こうとしたら、男二人の腹からぐぅぅぅぅと豪快な音。集中して作業してたからわからなかったけど、なんだかんだお腹が空いてたんだな。
カミサンとイデアは何かを話していた見たいなんだけど、俺らの顔を見てほっとしたよう。イデアの目は真っ赤になってるんだけど、カミサンのおかげで笑顔が戻ってきたようで本当に安心したよ。
ただ、俺と勇気のお腹は限界一歩手前。
カミサンもイデアも何も食べてないからどうしようか?って思ってたら、カミサンがみんなで何かを作ってみようか?って提案してくれたんだ。いろいろ準備をしようとするカミサンを手伝おうとして台所に入ると、カミサンが小声で言うんだ。
「正直なんか食べに行きたいんだけど、イデアちゃんがやっと落ち着いたところだから家から出したくないしね。それになんか手作業してたほうが気がまぎれるからいいかなって思うんだけどどうかな?」
「んだな。じゃ、簡単に作れるのにすっか!」
そんな訳で作るのは、餃子をカレー。
見かけ?組み合わせ?
んなものは知らん!
とりあえず家族全員で、野菜の皮むきをしようとしたところ、イデアと優樹が妙に張り切っているので任せてみたら、勇気は不器用ながらもピーラーでじゃがいもと格闘していて、イデアを見るとキッチンナイフを器用に動かしシュルシュルシュルと色々な野菜の皮を一瞬にして向いている。
「マサさん、ユキさん、こんな感じでよろしいでしょうか」
「うんうんいい感じ☆じゃ今度はニンジン切ってもらえるかな?」
「勇気も手切らないように丁寧にやってくれればいいからね」
そう言えばイデアと話してた時、前に住んでたところで何してたか聞いたことあったけど、解体とかしてたんかな?本当に器用に包丁使ってるんよ。一口サイズで材料切ってって言ったらさ、ニンジン空中に放り投げてナイフを5、6回シュシュシュシュシュってやってるのよ。そして、( ゚д゚)ポカーンってなかんじで様子を見てた俺ら三人の目の前で、一口大で落ちて来る落ちてきた材料を器用にボールで受けるイデア。
「お前はどこの雑技団だ!」
「すいません、連れて行った貰った場所に移っていたテレビでこんなような料理術を見たものですから、つい…」
「イデアさん!それアニメの世界だけだから!」
なんて、顔を真っ赤にしながら耳を隠して照れている彼女とツッコむ勇気。
そう言えばイデアのこういうお茶目なところってあまり見えてなかったかも知れない。普段の生活の中でもっともっとイデアの素の部分が見れたらいいな。
だけどね、イデア。
ごめん、それイデアしか出来ないよ!勇気が真似するから止めなってって、うぉい!
勇気!お前じゃ絶対できないから包丁振り回すな止めろ!絶対に無理だって!俺でも出来ないからホントカンベンナ!
こんなちょっと変わってるけど、賑やかに作られる料理の風景も、きっと彼女にとって良い思い出になると信じてる。いつか彼女が本当に笑顔を取り戻せる日が来るといいなぁ。
コンビニ行ったら異世界女子が当たりました・・・俺どうしたらいいの? おさるなもんきち @osaruna3
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