第十話

で、


いざ出かけようとして支度しようとしたんだけど、俺、現実逃避しすぎて、とんでもない事を忘れてたよ!


「まぁくん!イデアちゃんの恰好寒すぎでしょ!年末近くでその恰好は引くよ!」

「父さん!母さん!尻尾と耳どうするの?!」

「ご主人様、私はこれからどうすればよろしいのでしょうか?」


どーすんのよ!これ!


ケモミミ尻尾付きで日本の常識もわからないイデアを、人が大勢いる中にいきなり連れて行くのは厳しいよなぁ。


さすがに今の恰好じゃ寒すぎるから俺の服でなんとかするにしても。


尻尾隠せるのか?

耳だってばれたら大変だよなぁ


考えて見たらずいぶん危険な冒険になるなぁ ぉぃ


「だけど、さすがにこのままずっと出ないわけにもいかないし、女性用のいろいろなものも用意しないといけないから仕方ないよなぁ」

「う~ん、イデアさん。何か服にこだわりあったりする?私の服じゃ入らないと思うから、旦那の服になっちゃうと思うけどいいかな?」

「ご主人様、奥様。私ごときにそのようなお気遣いを頂かなくても良いです。今着させていただいているもので十分でございます。寒さなど気にしません」

「「「いや!そこ気にして!!!」」」


もうね、決めた!俺らが勝手に決める!


相変わらず度を越した遠慮を見せるイデアを無視して、俺とカミサンで着せ替えごっこをしながらコーディネート。とりあえず俺のジーパンとハイネックのシャツ、そして革ジャン用意して着せてから帽子かぶったら、偶然、耳が隠れたからとりあえずこれで凌ごうって事にしたよ。


「でも・・・尻尾どうしよう・・・」

「あ、あの・・・尻尾でしたら・・・一日くらいでしたら隠す事が出来るのですが、それでもよろしいでしょうか?」

「OKOK!とりあえずそれでなんとかなるよね?良かったぁ」


話の中で尻尾が隠せることが分かったけど、いざとなったらちょっと大き目な俺の服で隠しちゃえばいいかな?何にせよ、このままずっと家に隠まっておくわけにもいかないからね。うまくいくかわからないけど何もしないよりかはましでしょ!


これで出かける準備は整ったけど、あとはイデアの常識の問題だけ。


一応、外出時に気を付けて欲しい事の注意をしたんだけど、付け焼刃だからどうかな?


ここ地球には亜人種はいない。

ヒューマン=人間しかいないから、獣耳や尻尾のある人はいない事。

剣や魔法でモンスターを倒すって事なんかないから、大きい建物があったり、人間以外の何かがいたとしても、たぶん作りものだから気にしないで良いという事。


これがハロウィンの時期だったら、むしろ尻尾耳出しまくって出かけてもなんとかなったかもしれないけど、今は年末の忙しい時期で別の意味でごったがえしてるから、目立った行動しちゃったら大変な目に遭いそうだからね。


で、俺がそんな注意事項を話してる間、カミサンがイデアに必要なもの書き出したものを持ってきて確認してるのよ。


とりあえず、イデアに必要なものは何着かの洋服や下着、そして日用品など。

息子の修学旅行のパンフレットがあるから、それらを参考にいろいろ買い込みたいと思ってるんだけど、必要最低限のものだったらコンビニにもありそうだな。


あ、コンビニと言えば、あの『コンビニ アルテミス』にも行かないと!


思い返してみたら、あの店構えやコンビニの店員さん、おかしいところは多かったから、絶対この事わかってたと思うんだよね?これからだったらじっくり話を聞くことが出来そうだから、そこら辺しっかり聞けるようにもしたいな。


とりあえず、今日行くところは。


・コンビニ アルテミス

・ショッピングモール


この二つ。


出来る事であれば、役所や警察にも相談したいとは思うんだけど、やっぱり本当の事は言えないし、このボロボロの恰好のまま行って、別の意味で疑われちゃうのも困るから後回し。う~ん、そういう公共の機関への説明はもう少し考えないといけないよね。とりあえず保留だな。


最後に


イデアのご主人様発言・・・これ本当にどうにかしたいのよ。


俺=ご主人様


カミサン=奥様


息子=ご子息様


俺らどこのお金持ちよ!そんなの人前で言われたらかなり恥ずかしいよ!俺。

そんな事をカミサンと息子に話して見たら、うんうんうなずいているから、これに関してはイデアに協力してもらわないといけないなと思ったんだ。


「イデア。一つお願いがあるんだけど」

「はい、ご主人様。なんなりと御用をお申し付けください」

「イデアちゃん、こっちからお願いするのは一つ。私たちの呼び方変えてくれないかな?」

「へっ? な、なんででしょうか? 奥様は奥様で、旦那様は旦那様ですよね?そして私は奴隷です。」

「「いや!違うから!!」」

「俺らはイッパンピーポー。どこぞのお偉いさん方とは似ても似つかないそこらへんにいる一般人なんよ!イデアの事はほっとけなくて助けただけだから奴隷なんて思ってないしさ、さっきも言ったけど、この世界には奴隷なんて制度はないから、もっと砕けた感じで言ってほしいのよ」


・・・・


・・


あ、イデアの眉間にしわが寄ってるよ。


すんごい困ってるのはわかるんだけど、困った顔も結構可愛いなぁ・・・じゃない!!!こんなんで困られてもこっちが困るんじゃい!


「イデア!俺は「マサキさん」、カミサンは「ユキさん」、息子は「ゆうくん」でどうだ!、いや!これで決定じゃ!」

「そ、そんな恐れ多「「だが断る!!!!」」」


そ、そんなやり取りがあってね、なんとか俺らを名前で呼んでくれるようになったんだけどね。


「ご、いやマサキさま・・・いや、マサキさん・・・」


なんてまだ呼ぶたびに眉間にしわが出来てるのよ。意外とイデア頑固なところがあるのかもしれないな。これ。



☆ ☆ ☆



で、いざ出かけようと思ってうちの軽自動車を動かそうとしたら、イデアがきょとんとしてるのよ。


「なんですか?この黒い四角い塊は?」

「あ、そっか、車もわかんないんだよね?」

「う~ん、鉄で出来た馬車見たいなもんかな?あんまり深く考えないでゆっくり座ってよ」

「いえ、ごしゅ・・・いえ、まさき様 さん・・・馬車でございましたら、私は脇で走って追いかけるので、気になさらないでお乗りください」

「「「いやいや、追いつかないから!」」」


う~ん・・・この流れもそろそろ疲れたな。

そういえば、いろいろあってそこらへんの常識も教えてなかったなぁと思ったんだけど、いろいろやってるうちにお昼近くになっちゃったし、まぁ~そこらへんの常識は実践で学んでもらおう。時間がないから次いこ次!なんか忘れてる気もしないでもないけど、ま、なんとかなるべ!


-------------------------


まずは、『コンビニ アルテミス』へ


夜中に発見したとはいえ、いつも通ってる道だからわかるよなぁ~って思ってさ、職場へ行く道を通ったり、ちょっと道を外れてみたけど、それらしい建物は見つけられなかったんだよね。


唯一あったコンビニも、某有名コンビニエンスストアの支店だったし、いつもだったら俺疲れてたのかな?って思って終わりにしたのかも知れないけど、今はあそこで手にしたフィギュアの容器もあるし、そこから出て来たイデアもいる。


俺自身、とてもあれが夢だとは思えず、なんとか原因を究明したいとは思うんだけど、さっそく最初から躓いたな。


ま、今回はそれがメインじゃないからいいけどね。


そんな事を思いながら、ふと、フィギュアの入れ物を見てみたら、商品管理のバーコードもないし、商品の製造元なんかも一切書いてないことに気が付いたんだ。


う~ん


見れば見るほど、考えれば考えるほどおかしい事ばかり。


ま、まぁ~これ以上考えても仕方がないからさ、そろそろイデアの身の回りのもの揃えに行くか~



目の前の事からコツコツ片付けたほうがきっといいはず。その中で気が付くこともあるだろうから、出来る事からやっていくか~

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る