コンビニ行ったら異世界女子が当たりました・・・俺どうしたらいいの?
おさるなもんきち
第一話
「あーきっつ。長い通勤時間、地味にダメージくるわー」
そんな事を言いながら、車を走らせ家路を急ぐ自分はただのサボリーマン44歳。
なんの取り柄もなく、出世欲もないまま同じ仕事を続けていたら、徐々に貧乏くじを引かされるようになり、仕事は誰もやりたがらない夜勤固定に。
お偉いさん方が考えた現場軽視の施策のおかげで頭下げまくり。
ストレスから髪はどんどん抜けていく毎日。
昔流れていたコマーシャルで「抜けてわかる、髪は長い友」なんて台詞を思いだし、ついつい自虐的になりながら家を職場を往復する毎日を送ってる。
今の職場に配属されてからはや9年。
通勤は車を飛ばして約2時間。
長時間運転するのは慣れたつもりだけど、途中どうしても腹が減る。
間食は良くないって思いながら我慢してたんだけど、どうしても誘惑に勝てなくて、気がつけば、気になるコンビニに入っちゃう。
最近のコンビニっていろいろなモノがあって面白いよね?
ただ品物が並んでるだけじゃなくて、各社オリジナルの商品があったり、購入特典でいろいろなモノがもらえたり。そんな様子を見るのも好きで、ついつい毎日いろいろなコンビニに寄っちゃうんだ。
『買い食いはほどほどにね』と優しく言ってくれた産業医のお姉さんに申し訳ないんだけど、ぽっこり出てきた脂肪リングを見ないふりして、今日もコンビニへふらふら寄ってしまう意思の弱さが恨めしいよ。
今日は何処に行こうかな?
たまには違うルートを通ってみて・・・って、
ん?
あれっ?
えっと、あんな所にコンビニあったかな?
いつも通ってる田んぼ道だった気がしたんだけど、どこかで道間違えたかな?
ん?『コンビニ アルテミス』?
地元のコンビニ含めて結構知ってたつもりだったけど、初めて聞く名前だな?
興味あるけど、コンビニって書きながらムフフな商売のお店だったらショックだなぁ~って思いながらも、やっぱり好奇心に勝てず、気が付けばコンビニの駐車場に車を止めてた。
田んぼのど真ん中にありながら、駐車場は少なめな5台分。
外装は、山小屋をイメージしてるような木目調を基調をしたデザイン。
一応外側から透明ガラスで見えるようになってて、覗いたら、昔の喫茶店のような良い意味で古さがある雰囲気。何処かの観光地にあるお土産屋さんをコンビニ風にしたらこんな感じなのかな?
意を決して中に入ると、木の棚に商品がきちんと置かれているのがなんだか一周回って新鮮で面白い。店員さんは品出し中なのかな?ちょっとここからは見えないな。きっといろいろ忙しんだろうと思いながら店内をぐるっと回ると、ところどころに「山賊」という文字を見る。
そういえば、以前に何かに特化した商品を置いたコンビニがあるって聞いたことがあるから、きっとそれらを真似たりしてるのかな?
3種の具が混ざってる山賊おにぎり、サンドイッチ、ハンバーガー。
三種の具材や麺が入っている山賊そば、うどん、ラーメン・・・
山賊愛用タオル、くつした、下着 etc
う~ん・・・山賊って犯罪者だよね?お店の売りにしちゃっていいのかなぁ?
・・・なんて思っていたら、ここにもあるのかぁ『有料くじ引き』
気が付いたら色々なコンビニで行われるようになっていた有料のくじ引き。
可愛いキャラクターの人形やぬいぐるみ、キャラクターにちなんだ文具類やタオルなど、よくもまぁいろいろ考えるもんだなぁ~って思いながら、色々な品物が出ているのを見てたんだけど、こういう知らないコンビニにもあるんだね。
いつの間にか置いてあるのが当たり前になってきたけど、やっぱりみんな当たりくじとか興味持っちゃうのかな?俺もついつい見ちゃうんだよね。キャラクターグッツに興味がない俺でも見ちゃうんだから、好きな人はついついひとつまた一つって購入しちゃうんだろうな。商売うまいよね。ホント。
えっと、このコンビニは「異世界美少女コレクション」かぁ。
どうもそう言うの疎くてわかんないんだけど、きっとそういうアニメとか漫画があるんだろうね? いやぁ、俺、美少女フィギュアとか全く興味がないから好きな人がいたらごめんね。
でも、なんだろう?
なんか惹かれるなぁこれ。
ナニナニ?
「幻想世界で活躍?する 美少女コレクション第一弾!」
「集めて楽しい世界観付き背景」
「伝説の武器や魔導書など各種あり、オリジナルの世界観を演出してみませんか?」
「オープン記念価格600円のところ 今なら一回300円!」
今までの山賊グッツが霞むくらい、とっても派手に飾り付けてるから、よほど推してるんだろな。いろんなコンビニ見て来たけど店がくじ引き推すって見ないよな。
よっぽど異世界うんたら~のアニメと繋がりがあるのか?ビジネス的な何かがあるのか知らないけど、なんだかすげぇなぁ。
ますます興味が出てどんなのかな?ってレジの後ろの実物見たら、結構可愛らしくて、こんなおっさんでも買っちゃおうかなって気になってきたよ。
一等二等のフィギュアは、普通の頭身の美少女キャラクター。これは箱も大きくてセクシーな衣装の奴だから俺は恥ずかしいな。当てるんだったら三等の二頭身キャラが良いよ。手のひらサイズでデフォルメされた可愛らしい感じのやつ。家の机に飾っておくのに丁度いいかも?
元ネタはわからないけどちょっと買ってみようかな?
えっと、くじ3枚。
山賊おにぎりとお茶。
カミサンと息子にミルクティーっと、こんな感じでいいかな?
えっと、「すいません、お願いします~」
バックヤードに向かって声をかけてみたんだけどなかなか来ない。他のお客さんもいないから店内回ってみたけどいないなぁ。品出しとか忙しいんかな?どうしようかな?
おっ、きたき・・・
「あ、すいません、お待たせいたしました。いらせられませ~ コンビニアルテミスへようこそ~♪」
・・・
えっと、
ここコンビニですよね、きっと。
な、なんで目の前にメイド服のおねいさんがいるんですか!
一頃前にメイド喫茶とか、メイド居酒屋なんて流行った時期は知ってるけど、メイドコンビニなんて俺はじめて見たよ!昔ながらの黒を基調とした慎ましいドレスに、白のエプロン。誰が見てもTHEメイドって言うような制服?だね。
それを着ている目の前の方は、金髪ロングヘアーで鼻は高くハッキリした顔立ちなので、その美しさが余計に引き立ってるんだよね。それに身長170半ばの自分とあまりかわりない背でスタイルもよく、目の前にある二つの山がしっかり主張してるもんですから、ついつい引き込まれる様に見てしまったら、何か不思議そうにこっちを見たんで、慌ててお会計をお願いしたよ。
レジ打ちしてたお姉さんに見とれてついついくじを頼むのを忘れてた事に気が付いて、慌てて追加でくじ引きをお願いしたらおねいさんの表情が一変。一瞬目を輝かせたかと思ったら
「し、少々お待ちくださいませ!!!」
って、慌ててバックヤードに引っ込んだんだ。若い店員さんだったからくじ引きなんてわかんないんだろうな?こんなおっさんが買うなんて想像もしてなかっただろうから慌てちゃったんかな?なんだか悪いことしたなぁなんて思っていたら、ハアハア言いながら全力ダッシュで戻ってくるのよ。
「お客様ありがとうございます!店長イチオシ商品なんで本当に嬉しいです!是非とも一等当てて下さいね☆」
なんだかさっきの1.5倍くらいの笑顔で俺を見るんよ!
実は三等の可愛らしい二頭身キャラじゃなっきゃ嫌だなぁって思ってたんだけど、とても言えるような空気じゃなくて、なんとなく一等二等は勘弁勘弁!って願いながらくじ引いたらね。
「残念・・・三等の二頭身キャラ ひとつ」
「残念・・・五等、キャラクター付属品 ひとつ」
「ぐぬぬぬぬ・・・残念です。五等、キャラクター付属品 ひとつです・・・残念・・・」
おっ、思った通りの組み合わせ☆
やった!とばかりに笑顔を見せたら、何故か悔しそうにしてる店員さんがいるんよ。俺、何か悪いことしましたか?景品出すのにため息つかないで下さいよ。「追加でもう一回引いてみませんか?」って言われてもお小遣い足りないから無理っすよ!勢いあまってその二つのボリュームあるもの俺に押し付けないでくださいよ!
そんな押しが怖くて、早々に商品を受け取って立ち去ろうとした俺に「今度は絶対一等当てて下さいね!」「早くしないと売り切れちゃいますよ!!!」なんて必死に言う店員さんの笑顔が必死過ぎて思わず引いちゃったよ。あのくじノルマ制だったんか?だったら可哀そうな事したなぁって思いながら家に帰る俺。
ついつい寄り道しちゃったけど、感覚的にちょっと遅くなった気がする。
早く家に帰らないとなぁ。
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