インスタント・バック

@stdnt

第1話

正午の鐘が鳴っていた。

わりばしを割って、カップ麺にお湯を注いだ正にその時、携帯が鳴った。


着信は自分の番号から。不信に思って出ると、せっぱつまった男の声がした。


「逃げろ!津波がくるぞ!」


声の背後には、ただならぬ騒音がしていたが、こちらは静かなものだ。


「今から3分後なんだ!大地震なんだ!」


要領を得ない。新手の詐欺か。


「大災害になるぞ!空間だけじゃない、時空がゆがんでるんだよ!

だから3分間だけ猶予ができたんだ!」


電話は一方的に切れた。男はもっとしゃべっていたようだが、

内容は要領を得ず、覚えていなかった。3分ほどはしゃべっていたろうか。


気をとりなおしてわりばしを割る。さっき割ったような気もしたが。

正午の鐘が鳴っていた。


わりばしをカップ麺に突き刺すと、できているはずの麺はまだカチカチだった。


箸先から伝わった違和感は全身に広がり、

さっきの電話がゆっくりとフラッシュバックした。

その間、約3分。


外では地鳴りが始まっている!

私は携帯の着信履歴に「リダイヤル」すると、外に飛び出した。


「逃げろ!津波がくるぞ!」

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