第36話 帰るべき場所
「オラオラオラァ!」
クレア殿はモンスターを少しずつ、だが確実に押していた。やはり筋力が同じでも格闘センスや技術の差が出てくるようですネ。
「クッ……」
――ドッ!
モンスターの腹に一発の拳が突き刺さる。
「へっ、どうしたよ。口ほどにもねぇぜ?」
クラレ殿は息も乱さず言う。
「……確かにこの姿でお前に勝つのは難しいかもしれんな……だがあっちの奴らはどうかなっ……!」
ニヤリと笑ったモンスターは突如レア殿の方へ接近する。
「仲間の力で死ねぇ!」
急な接近とあまりのスピードに、私は対応できなかった。振り上げられる拳。近づいてゆく死の匂いに、その動きがスローモーションに見えた。
体が動かない。……何が耳長族でショウ。いくら魔力が高かろうと、いくら身体能力が高かろうと……今。今この時動かなければ何の意味も無いのに。いつから私はこんなに弱くなってしまったのか。……それとも、彼がいないとこんなにも無力なのだろうか。
「……レンッ!!」
やっとの思いで腰のナイフを引き抜こうとしたその時。私と同じ人物の事を考えていたのだろうか、レア殿の、彼を呼ぶ声と共に彼女の太もも辺りがぼんやり輝いたかと思うと、レア殿の目の前に眩い光が発生し魔法陣が浮かび上がった。
――ブワッ
「な、何だ……!?」
私達も、モンスターも何が起こったか分からないようだ。やがて光が収まって……
――ドスン!
「いつつつ……何処かに送られる時はこればっかりだな」
聞こえてきた声は、私が……私達が一番聞きたかった声そのものだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます