心のボール

勝利だギューちゃん

第1話

僕には、友達がいない。

いわゆる、ぼっち・・・


でも、それを寂しいと思った事はない。

ただ、ふざけあうだけの友達ならいないほうがいい。

そう、思っている。


なので、友達は作らない。

強がりかもしれない。

でも、それでもよかった。


ある人と出会うまでは・・・


その人はある日突然、僕の前に現れた。

性別は、女性・・・

歳は、僕と同じくらいなので、10代半ば・・・


どこのだれかは知らない。

連絡先も知らない。

しかし、いつも前触れもなく現れる。


しかも、決まって・・・


「相変わらず、生気がないね」

憎まれ口から、入る。

「悪かったな」

「んふ、反論出来るなんて、少し進歩だね」

「進歩?」

「うん、前の君なら、泣いてたもん」

いたずらぽく笑う。

でも、なぜだか、心地よい。


「ところで・・・」

「何?」

「君は、一体・・・」

「まだ、わからない?」

「うん」

前触れもなく現れて、話しをして、すぐに去っていく。


わからない・・・


「ねえ、私がいつ、君の前の現れるか、わかるよね」

「・・・うん・・・」

「言ってみて」

それを、僕の口から、言わせるのか・・・


「ねえ、早く・・・」

「気持ちが、ネガになった時」

「うん、正解」


そう、いつも気持ちが暗くなった時に、現れる。


「ねえ、人間には、少なからず、+と-の面があるの」

「前に、言ってたね」

「うん、その中には、これがあってね」

ボール?


「うん、このボールは君自身」

「僕自身?」

「うん、君の考え方次第で、どっちにも転がる」

「うん」

「このボールは、君の中の-部分に今はあるわ」

どういう事だろう・・・


「でも、最近はこのボールは、君の中の+のところにあるわ」

「えっ」

「気がついてないけど、これは君は前向きになってきてるってこと」

「前向きに?」

自分では、わからない。


「私はね、君の中の-の中にいる、+の存在」

「+の?」

「うん、君が-になると、+のほうへ、呼び寄せる・・・

あっ、これは、正しい表現じゃないね」

「うん・・・」

つまりは・・・


「私が消えるのは、君のこのボールが+に行った時だよ」

「えっ?」

「だから、正しくは私が消えるんではなく、君が去っていくんだ・・・」

「僕が?」

「うん、いい意味でね」

つまり、彼女が現れるのではなく、僕が彼女の前に現れるという事か・・・


「そういうこと」

「うん」

「じゃあ、君のボールは、+の世界に投げておくね。」


彼女がボールを投げた。


彼女が消えた。

いや、僕が去ったのか・・・


「また、辛い時は来てね」

「えっ?」

「君が甘える事の出来る場所は用意しておくから、君は前を向いて」

「前を」

「君が振り返った時、いつか私と語り合える。そう信じてる」


向こうから、声がした・・・


ふざけあうだけでもいい、友達を作っておくのもいいかもしれない。


明日、声をかけてみよう・・・

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

心のボール 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る