「23頁目 魔法の鍵」
×月◇日 コーミズ村
キングレオ地方の中央に位置するこのコーミズ村に辿り着いたのは夜更けだった。道中の魔物も夜になると出現率も高くなって、みんな疲労困憊。
とりあえず宿を取って今日は休むことに。
×月●日 コーミズ村
朝から村で聞き込み。ここはマーニャとミネアの故郷で、村の人は彼女達の顔を見ると嬉ししそうに話しかけてくる。
父、エドガンさんのお墓参りをして、村の人に話を聞いて回ると、やっぱりそのエドガンさんが魔法の鍵を持っていたんだって。
ここから東の森の奥にある洞窟にエドガンさんの秘密の研究所があって、そこに魔法の鍵は残されているんじゃないかって噂は前からあったらしい。
ミネアとマーニャに聞けば、確かに幼い頃に父親に連れられてその研究室に入ったこともあるという。これから道具屋で準備をして、その洞窟に行こうと思う。
・メモ
この村の宿屋はマーニャかミネアを連れて行くとタダで泊めてくれる!
☆
洞窟で魔法の鍵を見つけたよ!
洞窟は魔物がウヨウヨいたけど、準備も万端だったから蹴散らしながら進んだ。
それに今までの洞窟と違ってここの洞窟は馬車を連れて入れるほどに広かったから、メンバーを入れ替えながら盤石の体制で進むことができたんだ。
部屋ごと上下階に移動できる仕組みがあったりして驚いた。古代文明の遺産らしいってマーニャが言っていたけど、彼女も詳しいことはわからないんだって。
奥へ奥へと進むと二人は幼い頃から何度も来ている父親の秘密の研究室があった。主人を失って時が止まったようなその部屋で、わたし達は魔法の鍵を手に入れたんだ。
これでキングレオ城に忍び込むことができる。
「早くライアンさんを助け出そう」
と決意を持って、研究室を後にした。
×月※日 ハバリア
……とか、なんとか昨日の日記で書いたのに、また、死んじゃったよ! これで三度目。
もう絶対に死なないって初めて死んだ時に思ったのに!(いや、初めて死んだとか自分で書いてても、わけわかんないこと言ってるよね)
それはモンバーバラ周辺での出来事だった。
※モンバーバラってのはマーニャが踊り子として活躍していた街で、コーミズ村の南にある。キングレオのお城を支配する魔物はとても強いから、少し戦いの経験を積もうという話になって、足を伸ばしていたのだ。……きっとライアンさんなら数日くらい持ち堪えられるだろうという予感があった。
道中、突如襲いかかってきたのは、『死霊使い』って不気味な人型の魔物と、『ドラゴンポピー』っていう小龍の群れ。
こちらが戦闘態勢に入る前に攻撃を仕掛けてきたんだ。
慌てて立ち向かおうとしたんだけど、『死霊使い』が初っ端から魔法を唱えてきたの。目の前が不気味な紫色に光ったと思ったら、マーニャが叫び声も上げずにガクンと倒れた。
ザキってのは死の魔法なんだって。その魔法を受けてしまうと、どんなに元気で体力が有り余っていようが、一瞬で死んでしまうっていうそれは恐ろしい魔法なんだ。
姉の死に怯んだミネアにドラゴンポピーが連続で攻撃を仕掛けた。ミネアは鉄の盾で攻撃をいなそうと試みるも、三体ものドラゴンポピーの集中攻撃になすすべもなく命を落としてしまった。
たったの1
突如の襲撃で馬車の中の仲間が飛び出す暇もない。
戦場には体力自慢のアリーナとわたしが残る。
でも、死霊使いのザキは体力なんて関係ないの。絶対に効くって魔法じゃないけど、効いたら即死。世にこんな恐ろしい魔法があるなんて知らなかった。
体制を立て直して、アリーナと連携して死霊使いに攻撃を仕掛けた。
ニヤニヤ笑う薄気味悪い死霊の使いに、わたしが破邪の剣で斬りかかろうとした次の瞬間。死霊使いがわたしの方をジロリと見つめ、なにやらブツブツと言葉を吐いた。
まずいっ、目を逸らさなきゃって思ったんだけど、その瞬間、目の前が紫色に光った。と思ったら、視界がぐにゃりと歪んで……。
他の仲間が馬車から飛び出して戦ってくれたおかげで、なんとか魔物の群れは撃退したけれど、わたしは三度目の死を迎えてしまったのだった。
生き残ったメンバーはトルネコさん、アリーナ姫、ブライさん、クリフトさん。
まさか旅の初期メンバー三人が一度に死んでしまうなんて、考えてみればこの旅が始まって以来の大事件だった。
本当に、死ぬのは怖い。思い出すだけで体が寒くなって震えてしまう。
四人は急いでババリアの教会にわたし達の棺桶を運び込んで、神父様にお布施を払って復活させてもらったんだけど、マーニャが420ゴールド、わたしとミネアは330ゴールドもかかってしまった。……生き返ることができたんだから、文句は言っちゃいけないけど、痛い出費だった。
そこで、色々と作戦会議をする。
結果、通常戦闘のメンバーの刷新をすることになった。
今までは、わたし、アリーナ、ミネア、マーニャの四人が戦闘を担当していたけれど、ボス級の相手と戦う場合と、大陸を移動中に出会う魔物、所謂ザコ敵に対しての戦闘ではメンバーを変えた方が効率がいいのではないかと、提案してメンバーの変更を決めた。
トルネコ、アリーナ、クリフト、マーニャを基本メンバーにすることに決定した。
トルネコさんは仲間の中では意外と一番戦闘の経験を積んでいて、戦闘中にいろんな特技を披露してくれて戦いを有利にしてくれることが多いし、アリーナは武術大会の優勝者だけあって攻撃力、体力ともにピカイチだし、クリフトは「姫さまを回復させるのは私の役目ですっ!」なんて立候補して張り切っちゃうし(余談だけど、その時、後ろにいたミネアがボソッと「じゃあ私はいらないってことですね」なんて言うから空気が冷えきって大変だったけど)
それと、どうせマーニャは馬車にいてもうるさいだけだし、なら魔法をガンガン使って敵を薙ぎ払ってもらおう、となった。
そんなこんなで、わたしは重要なボス的な魔物との戦い以外は馬車待機となった。パーティのリーダーである勇者が未知の魔物と出会い頭に強力な攻撃を受けて死亡する、なんてことは避けねばなるまい。とみんなの意見も一致してこのメンバーに決定した。
いやー、正直にいうと助かった、戦闘は面倒なのでわたしの提案が通ってよかったなって思ってる。
さて、そんな訳で、ハバリアの宿で一泊。また明日から頑張っていこうと思う。
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