「13頁目 家族」
○月■日 エンドールの宿
わたしは今、エンドールにいる。急いでパテギアを取らないといけないんだけど、色々あったの。
愚痴っぽくなっちゃうんだけど、たまにはいいよね。シンシアはいつも微笑んでわたしの話を聞いてくれたから、甘えちゃうんだ。
そもそもが、旅を始めてずいぶん経って、手持ちの荷物が増えすぎたのが原因だったの。馬車を手に入れたりはしたけれど、それでも荷物が多くなりすぎて、馬車の中も乱雑になってきちゃって。消耗品の類なら、必要な分しか買わないってことでなんとかなるんだけど、不必要ではあるけれど、とても売り払ったりはできないような品ってあるじゃん。
ミネアは「じょうせんけん」とか「かやくつぼ」とかってよくわからない物を大事に持っているし、いろんなところで手に入れた「ちいさなメダル」なんかが馬車に転がってて何に使うのかわからないけど、道具屋で売ったりできないし、踏むと痛いしで、一度整理しようよ! って話になったんだ。(ホフマンのバカに到っては道具を一つも持ってくれないの。どういう神経してんの?)
すると、トルネコさんが「エンドールに道具やお金を預かってくれる店があることにあるんですが……」と教えてくれたので、キメラの翼を使ってエンドールへ行くことになったんだ。
キメラの翼でミントスからエンドールへ瞬間移動。
エンドールには「あずかりじょ」って店が教会の正面にあってね。そこでお金とか不要な道具を預かってくれたんだ。
しかも!
そこはなんと、トルネコさんの店だったんだ。
トルネコさんは家族がいないわたしやジプシーの姉妹に気を使って言えなかったみたいなんだけど、店員さんの綺麗な女性はトルネコさんの奥さんだったの!
旦那さんが旅に出ちゃうなんて寂しいだろうけど、奥さんは「トルネコさんが夢を叶えて帰ってくるのを待ってる」なーんて素敵なことを言うから、一同、しんみりしちゃった。
いつかはわたしも素敵な人ができて結婚なんかを意識しちゃうのかなー。敵討ちの旅の途中だってのに、ちょっとそんなことを考えちゃった。それはマーニャも同じだったみたい。早く彼氏が欲しいーなんて悔しがってた。
旅をすれば素敵な男性と出会えるかもってマーニャは思ってたみたいだけど、仲間になった男性は、宿屋のなよなよ金髪ドラ息子ホフマンと、腰の曲がった陰気な小言おじいちゃんブライさんと、妻帯者の太っちょトルネコさん。
「……全然恋愛対象がいないじゃない!」ってマーニャが吼えてた。ドラゴンになっちゃいそうな荒れようだった。
ともかく、荷物の整理も済んだので急いでミントスに戻って、パテギアの探索を開始しようとしたのだけど、
「せっかくトルネコさんも実家に寄ったのだからエンドールで一泊しましょうよ」
と、マーニャが言った。
トルネコさんは「私のことは気にしないでください」って固辞したんだけど、ブライさんも「クリフトは一日二日で死ぬようなヤワな男ではないじゃろ。家族を大事にしなされ」と意外や意外、優しく微笑んで言ってくれたので、そのお言葉に甘えて、エンドールの宿に泊まることにしたんだ。
トルネコさんは申し訳なさそうにしながらも、ご自宅に戻って一泊。一人息子も大喜びだったみたい。
マーニャもたまには良いこと言うなぁって感心してたんだけど……。彼女ったら、単にカジノへ行きたかっただけみたい。
夕食もさっさと済ませてこそこそカジノに行っちゃったの。
もう、本当に姉さんったら……ってミネアが愚痴モードに入ったから、二人で酒場でマーニャの愚痴を言い合いした。
おまけ。
マーニャがカジノでコインを1000枚も増やす。(怒るに怒れなくなっちゃった)
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