#240:野卑滑稽な(あるいは、殺戮のベルを鳴らすのはあなーたー)
「ええと、では最後に質問には答えたということで、威力は『小』に抑えることとします」
気を取り直して僕がつつがなく進行をしようとしたわけだけど、場にいた全員が、えっ? という顔でこちらを見てきた。え? どうされたんですか皆さん?
「え? いや、え? こ、この流れだよ、ムロトくん、もうここで対局は終結でいいんじゃ……キミらの勝ちだよぉ?」
ミズマイが茫然と怪訝が合わさったような顔でそう言いくるめて来ようとするけど、そうはいくか。
「はあ、勝ちは勝ちですけど、それは分かっていますけど、何というかこう、シメが無いと締まらないじゃあないですか」
だよね? やっぱ、欲しいよね、シメ。
と、ミズマイが今までもこうは狼狽しなかったろう様子で、慌てて僕に反論をしてくる。何だっていうんだ。
「い、いやいや~? そう、かなあ? いや、そうじゃないと思うけど……え~と、え? 本当にやろうとしてるの? え?」
しつこいな。さっさと撃ち込んで黙らせるか。
ムロ「ですから!! あなたの『華麗なる構成』とやらを見習って、初志を貫徹させようっていう話じゃないですか!! 何をいまさらわけのわからないことを言ってるんだ!!」
ミズ「そ、そこ~? そこ根に持ってたのぉ? ムロトくんムロトくん? ワタシがそこはいけなかったよ。謝罪する。だからいま一度よく考えよう? 家族が和解した、感動があった、それでいいじゃない? その後の電撃浣腸は蛇足っていうか、それ通り越して、もはや意味不明だから!!」
ムロ「……わからないヒトだな、あなたも。じゃあそれ以外にどうやってこの場をシメようってんです? 様式美に彩られ、オバヒの叫び声と共に完結する。それこそがこの『溜王戦』にふさわしい、『華麗なる構成』ってもんじゃあ!! ないのかぁ!!」
ミズ「よ、よぉ~し、わかったわかった。『華麗なる構成』、それはワタシの完全なる失言だった。撤回するよ。だから、もう一度よく考えてみてくれ。その様式美とやらに必ずしも乗っかる必要はないんじゃないかと、ワタシはそう思うよ? というか、ここでその流れは無いと言い切れる、ね、ねえ皆さん?」
ムロ「だーかーらー、全てをぶち壊すって宣言しましたよね? ダメ人間コンテストを象徴するものは何ですか? 尻への電撃でしょうが!! そして元老を象徴するあなたという存在っ!!
ミズ「あ、あー、そうかー、相当頭に来てるんだー。何言っても無駄かー、とにかくキミは何が何でも、僕の哀れな肛門に、あの鋼鉄指弾を撃ち込みたいんだよね……私怨だー、これ私怨以外の何物でもないわー」
ムロ「小声でどうしました? 覚悟が出来たら行きますよ? 大丈夫、『小』って言いましたよね? 僕は約束は守る男です。電流を絞って、気を失わない程度に調節していますから!!」
ミズ「大丈夫じゃなはぁぁぁぁぁい!! せめて気は失わさせてへぇぇぇぇぇ!!」
「トウドウさん、行っちゃってください」
僕の行けの合図に、丸男も少し戸惑ったかのような素振りを一瞬見せたものの、すぐに気を取り直し、リング上で充分な間合いを取ってから、阿修羅像くんの、ぴんと立てた人差し指をミズマイの菊門にロックしたまま、電動ローラースケートの超加速の力も加えて、突っ込んでいった。最後だ。全ての思いを乗せて昇華するんだ。
「っ飛べぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
「あ、ああ、お、お、オぉぉぉおぉぉぉぉ、バぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁ、ひぃぃぃぃぃぁぁぁぁぁあぁぁっ!!」
球場内に、僕とミズマイの叫びだけが響き渡る。
終わった。全ての戦いが。
僕は、僕を見て一様にガタガタ震え出す面々を見ながらも、ようやくここに完結したことを、感慨深く、感じるのであった。
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