#200:未確認な(あるいは、世界の変貌)

 仕掛けのチャンスは一瞬……うまくいくかどうかは微妙……そんな追い込まれ感満載で、残り時間は2分と30秒くらい……もうやるしかねっす!!


「……はぁぁぁぁぁーっ!!」


 突如僕に去来した熱血が、雄叫びと共に行動へと走らせたわけで。気合いを込めて、真っ赤に燃える「必」ボタンを右拳で殴りつけるように押し込む。


「!!」


 瞬間、僕の機体は通常のロボティックの約3倍のスピードで、ミロちゃん機へと突進を始めた。体にかかる凄まじいGに耐えながら、僕は正面へ迫る黒い機体だけを見据えていた。しかし、


「……」


 対するミロちゃんも必殺技を併せてきた!? 尋常じゃない速度で互いの機体が肉薄する。と思う間もなく、凄まじい衝撃が。


「ぐっ……!!」


 その衝突は、お互いの機体をノックバックさせるほど。体勢を……立て直さないと!! 僕はアクセルを踏み込んだまま、ミロちゃん機に向けてその機体を再びぶつけにかかる。


「!!」


 確かな衝撃。そしてミロちゃんの応対が一瞬遅れた。ここしかない!!


「おおおおおおおおっ!!」


 気合いを込めてロボの両腕を伸ばす。相手の機体に触れさせるのではなく、首根っこを捕らえにいく。


「うううううううううっ!!」


 瞬間、響き渡るミロちゃんの苦悶の声。跳ね上がるかのように腰を浮かせたミロちゃんの機体は、弾かれるようにして後方へと吹っ飛び始める。けど、まだこれからだっ!!


「……」


 僕はアクセル全開で追撃にかかる。僕のロボの拳がボディに触れたままだから、ミロちゃん機には「10,000」ボルティックの電流は流れっぱなしだろう。腰を付けようにも付けられないはずだっ!! そして腰を付けられないままだと!! 後方へと凄まじい勢いで吹っ飛んでいくばかりっ!! つまり八方塞がり。流石に詰んだはずだ!! とそう思った瞬間だった。


「……」


 ミロちゃん機のノックバックが急激に停止した。と思うや否や、間髪入れず、その拳が僕のロボボディに押し付けられる。


「がああああああっ!!」


 完全に意識の外だった。途端に流れる、未体験の威力の電撃を尻に食らい、僕の機体はあえなくその腕を放してしまい、後方へと逆にノックバックを食らう恰好になってしまった。このままじゃ逆に落下してしまう!! 慌てて尻を下ろし、必死に凄まじい勢いの後退を止めるけど。


「……」


 でも解せない。こんな威力の電撃を食らうと分かっていても、座席に腰を下ろし、さらに反撃をしてくるとは。先ほどまでのミロちゃんにそこまでの気力があっただろうか。僕が感じた通り、「やる時はやる」という、そんな気構えを持っているのだろうか。5mくらいの間合いで、僕とミロちゃんは再び沈黙の対峙となる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る