#191:不公平な(あるいは、クワイ側人)

 

「……」


 総合的に不気味なんだけど、何故か愛嬌やら愉快さを感じさせる面もある不思議な顔をした元老院、ギヨ=ヨのDEPが始まる。どう来る、と身構える間も無かった。


「ハゲ♪」


 ど直球の名詞が軽やかなマーチのような節に乗ってギヨ=ヨの口から放たれた瞬間、その両手は寂しい頭部を覆う一九分けの頭髪の全てを引っこ抜くようにして上にぽこり、と外したわけで。何だってぇぇぇぇぇっ!?


「カツラ♪」


 そしてギヨ=ヨはそのまま歌いながら、その脱着可能な頭髪を模した物体を再び自らの頭に装着し直す。


「いっぱんじ~んっ♪」


 そしてそのまま元気よく腕を振って歩き出そうとする仕草で締めくくった。これどうなの。


 興が乗ってきたのか、ギヨ=ヨはその「ハゲ+カツラ=一般人」という普通絶対怒られること必至の替え歌 (また替え歌か!!)を、振り付けもこなしながら繰り返し披露している。


 その邪気の無い笑顔で繰り出される歌ネタに、会場からも少しづつ笑い声が聞こえてきたり、同じような振りをマネし始める観客の姿が……ううう、これは、これは良い評価に傾いてしまうかもしれない……!!


 <2:ギヨ=ヨ:82,378pt>


 出た!! 80,000オーバーの評点!! 自らの体を張ったそのネタ(何でわざわざその形状の物を被っているの?)が、評価者の心を揺さぶったのか、そこは分からないけど、ダメさを撃ち放って共有するというDEPの本質に近いものであったのは確かだ。やられた……そういうのもあるのか。


「ギヨ=ヨ機、エネルギー充填率82%!!」


 僕から向かって右斜め前方に位置する、黒い三角型のロボ。ディスプレイ上のその「▲」の表示の横に、またもや白い長方形のエネルギー表示が電子音と共に現れる。


 まずい。相手チームの前線を張るキサ=オー機 (●)とギヨ=ヨ機 (▲)の双方がエネルギー万全状態だ。苦戦は否めない中、次の着手順は丸男。珍しく気合いを見せてたんだ、やってくれると……信じている……っ!! がっ……!!


「デブ♪」


 自らの腹の脂肪を両手で掴みーの、


「脂肪♪」


 それを揉みもみして絞り出すポーズをしーの、


「いっぱんじ~んっ♪」


 腕を振って歩き出そうとしーのと、何の捻りも無くパクったネタを繰り出した。いや、それは無いて。そして「デブ-脂肪=一般人」という公式も、たぶん怒られるて。


 <3:トウドウ:12,010pt>


 ……まあそうなるよね。小声で「オ、オバーヒ」という悲鳴が、装備したインカムから漏れ聞こえてくるけど、これは明らかなるピンチだ。このままだと、こちらは何ひとつ身動きできずに一方的にボコられる可能性も否定できない!! 事態は、次のアオナギに賭けるしかない状況にまで追い込まれているわけで。

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