#190:無頓着な(あるいは、光る数だけ)
「キサ=オー機、エネルギー充填率75%!!」
実況猫型ロボット、猫田さんが着ぐるみの短い手足を懸命に動かしつつ、ただいまの評点をロボティックパワーに変換したことを告げる。
僕のマシンの操縦席正面のモニターにも、将棋盤風に区切られた5×5の枡目の左隅あたりに、キサ=オーの乗った黒い大型丸ロボットを示す「●」が表示されていたけど、その記号に付随するかのように白い平べったい長方形が縦に電子的な音を発しながら積みあがっていく。
その数……15? つまりその白長方形がエネルギー5%を示す「1目盛」何だろう、ということをもはや僕は瞬時に把握することが出来るようになっている。これもこれまでの対局を戦い抜いてきた賜物なわけです。
「……さて。各対局者は、『戦闘フェイズ』において、基本はエネルギー1%を使用して、1秒間、ロボティックを移動させることが出来ます。また、攻撃・防御を行うために右手・左手を動かすには、それぞれ5%/秒、エネルギーを消費します。これはもうかなり戦略性高いですよねっ!?」
猫田さんの説明が続くが、運営側もこれどう転ぶか分かってないんじゃ……と不安にさせる煽り方だ。
「必殺技もあるんですよっ!! エネルギーを20%消費しますけど、丸型の『ロケティック・パンチ』は離れたところの敵を攻撃できますし、三角の『ガーディアニック・シールド』はどんな攻撃でも防げますし、四角の『ダッシング・ブースト』は離れた距離を一気に詰められますし……」
意気込んでそう説明する猫田さんだけど、その必死さがかえって空回り感を呼んでいるような……そんな微妙な空気が球場を覆い始める。大体においてそういう要素が生かされないことはこれまでで痛いほど分かっているしね……ともかくDEPを多く得た対局者が、より多くの行動が出来そうなことはわかった。あとはその攻撃とやらがいかなるものなのかということだけ。相変わらず嫌な予感しかしないけど。
「……攻撃の仕方は単純です!! 自らのロボティックの腕を操作し、相手のボディに当てるだけ!! 当ててる時間だけ、相手の臀部に『10,000ボルティック』級の電気が撃ち込まれると、そういうわけです」
猫田さんは言うけど、そういうわけですじゃないよ、10,000って相当やーん。
「……衝撃に耐えきれず座席面より臀部が離れますと!! ロボティックの車輪は急速に逆回転を始めます!! つまり後ろへ後ろへと加速をつけてバックするわけです。それが何を示すかは……皆様にはお分かりのことと思います」
もったい付けていうけど、つまり、この対局場ぐるりを巡る水路のようなプールに落っこちるって、そういうことでしょ?
「周囲の『ソルティック・モート』に落下した時点で、そのロボティックは戦闘不能とさせていただきます!! ……そろそろ分かってきましたね? 戦略的駆け引きが光るこの遊戯の醍醐味が!!」
うーん、どう、かな? 緻密な戦略があるのか、それとも例のエネルギーを溜めて物理で殴るのが最適解になるのか、とにかく、DEPだ。
<2nd:ギヨ=ヨ:着手>
二番手はまたも相手チーム。眼鏡の一九分け、ギヨ=ヨは、ロボティックの胸部に開いた覗き窓状の隙間から、満面の笑みを見せながら、体を揺らしてリズムを取り始めている。
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