#183:不可解な(あるいは、いいえ私は褐色の恋人女神)
何となく釈然としない、そんなもやもや感。対戦相手のはったりすら覇気すら感じないその佇まいに、僕は正直戸惑っていた。
こいつらが元老院? そしてキサ=オーと紹介を受けた方、ぽわぽわした頭頂部にほんのわずかに残された頭髪を風になびかせているけど、A級八段ってことは、倚界のトップクラスってわけで、相当な使い手と見て相違ない。なのにその強さの片鱗的なものさえ1mmも感じないのは何でだろう。いや、ということはかえって凄いということなんだろうか?
「……」
ちらりと後ろを振り返る。そこにぼんやりと突っ立っていたのは、いつものメイド服姿と、つんつるてんの学校指定ジャージ姿のおっさん二人だったわけだけど、改めて考えるとこの二人もかなりの手練れだ。アオナギの言う通り、外見で判断してはいけないんだろう。ましてや今や溜王戦の決勝トーナメントだろ? 油断できない相手しかいないはずだ。無理にでも気合いを入れて臨むしかないっ。ひとり自分を奮い立たせている僕だったが、
「最後のおひとりっ!!」
猫田さんによる紹介を合図に、相手チームの最後の一人が壇上に上がってくる。
「……倚界の最終兵器っ、元老最年少、ラ=バハキ=アこと、
いつになく気合いのこもったその煽りと共に出てきたのは、可憐な少女らしさをその華奢で小さな体に宿した感じの、中学生くらいの可愛らしい女の子だった。あれ? 溜王って年齢制限ないんだっけ? ショートボブの黒髪に、おどおどとした顔つきが初々しい。この子もダメ関連の人なの? にわかには信じがたい、けど、まあ何でもありはありだよね。と僕が思う矢先、
「……元老特例にて、弱冠14歳での参戦となります」
何だその元老特例って。またいつもの有無言わせない系のゴリ押しだろ。反論してもしょうがないことはもはや分かりすぎるほど分かってはいるんだけど……っ!! どうしてもその汚いやり口に異論を挟み込みたくなる衝動が止められない……っ!!(止めるけど)
でも正直、そのミロちゃんと呼ばれた少女がどれほどの実力者かはまだ未知数なわけで。「五段」っていうのは、タメイド以上、丸男未満ってこと?
「さて気になる今回のルールは……?」
ぴっ、と着ぐるみのまん丸の手を一生懸命伸ばし、猫田さんがスコアボード下のオーロラビジョン的な画面を指し示す。
「……少年、あの歳で五段は規格外だ。俺らはどうやら、最悪の相手をあてがわれたらしい。……こいつは苦戦必至だぜ。せめてルールでアドバンテージを掴めれば、だが……」
アオナギの苦々しい顔に、追い打ちをかけるようにバックスタンドの大画面に表示されたのは、
<
おい!! 同じ轍!!
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