#155:傾斜な(あるいは、拘束エイヤーワイヤー)
「……言い忘れましたが、攻撃側の『攻撃値』引くことの被攻撃側の『防御値』が、クラッシュポイントとなります。その数値の分だけ、相手のプロテクターにダメージを与えることが出来るというわけですね。まあ、その辺の諸々のことは対局が始まってからも随時説明させていただきますから、ご心配なくっ」
いや、その後出し的な展開が怖いんですけど。まあ言ったところで何にもならないことは何度も何度も思い知らされているので何も言わないけど。とにかくやるしかない。要はDEPで相手を上回れば絶対負けないってことだ。
「それではいよいよっ!! 決勝第5試合っ!! 開始しますっ!! 両チーム対局者、『クーロンズ・アイズ・ナインス・ドラグナー』騎乗願いますっ!!」
リアちゃんの進行に促され、僕らは六角形を形作るそれぞれの足場の最後方にて威圧感を放つ、身長とほぼ同じ程度の龍の像の前に立たされた。
「……」
黒服が無言で、鎖かたびらのようなメッシュ状のベストのようなものを着せてくる。そしてそこに絡ませるようにして、鎧のようなプロテクターを固定しているようだ。金属っぽい質感だが、それほど重くはない。
掌を開いたくらいの大きさの「九角形」(!)の銀色のプレートは、みぞおちあたりの物に「一」、以下、右胸「二」、左胸「三」、右肩「四」、左肩「五」、と墨痕鮮やかに記されている。
よく見るとデジタルの簡易的な電光表示板がそれぞれに付属されていて、今はどれも「1000」と無機質なオレンジの文字でかすかに明滅している。
これがクラッシュポイントとやらで、ゼロになったら先ほどの太男のように、衝撃を喰らいーの、体を支えるものを失いーので、酢酸地獄への道を一歩踏み出してしまうのだろう。
「……何か、これかっこええ……」
僕の左前方で丸男が思わず何か呟いたようだが、黙殺することとする。ちなみに全員の位置関係だが、僕を6時方向として時計周りに、丸男、ミリィ(銀)、葉風院、タリィ(金)、アオナギという、チームごとに別れた布陣を取っているのは前戦と同じ。
「……」
そうこうする内に、背中側にも同じようなプレートがつけられ、そこからワイヤーが後方に向かって伸ばされていく。そしてそのワイヤーの先が、龍の像の身体に開けられた穴のそれぞれに挿入されていった。
一瞬、くっと身体が後ろに引っ張られる感覚を覚える。しっかり固定されたのだろう。後は足場に平行に敷かれた「レール」に取り付けられた四角い装置につま先をぐっ、と入れて固定、さらにワイヤーの先に持ち手がついた物を両手それぞれに握って態勢は整ったと。今は胴体・足共に固定されているので、手には全く力を加えなくても問題はなさそうだ。
「それでは上げますっ!!」
準備を終えたらしき黒服たちが足場から去り、重い機械音と共に、6つの足場はじりじりとその角度を上げていく。高所恐怖症らしい丸男は、おうっおうっというような声を上げているが、斜度30度って結構な断崖じゃないか。そこに強制的に立たせられているだけに余計にそれを感じてしまう。
ワイヤーとかが外れたら中心のプールにそのまま落下していってしまいそうな……僕は慌てて手にしていた把手を握り締める。
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