有栖川すみれの任務(前編)

南雲 千歳(なぐも ちとせ)

序章

序章

 これは、誰にとってもそうだったりするが、『人生』と言う名の長い長い道のりをひたすらに歩き続けていると、途中、その後の行く末を大きく左右するような、強い影響力を持った出来事に遭遇する事がある。


 それは、ひとつの転換点てんかんてん──。

 所謂いわゆる、ターニング・ポイントと言うやつだ。


 かく言うこの俺、成海なるみ隆一りゅういちも、若かりし頃、過去にそんな転換点ターニング・ポイントを迎えた事がある。

 その出来事は、高校も三年生に上がったばかりの、ある年の春先に起きた。

 そう、あの毎日のようにただ学校に行って帰って、休日や放課後に友達と遊ぶだけの単調な生活を繰り返し、気が付いてみれば高校に入学してから丸二年もの時間をだらだらと消費して仕舞っていた事に付いて若干の後悔を覚えていた時の事である。

 そんな学年が変わって新しい学期が始まった辺りの日々を、二年生が終わった時と同様、もはや入学当初の新鮮な気持ちなどまるで無く、退屈でものげに過ごしていたおり──。

 俺は人生で最高・最大級の転換点ターニング・ポイントを迎える切っ掛けである摩訶不思議な事件が起こった、あの金曜日の朝を迎える事になった。

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