ひなぎくさん、巨乳です
いすみ 静江
ひなぎくさん、巨乳です
ああ、広縁からみるススキもいいものだと思っていた。
しかし、夜風が吹き込んできたので、戸をそっと閉める。
パパは、
俺のことだが、つまりはその、女の子が好きだ。
俺と結婚してくれた元妻がいた。
既に二人の大きな子どもを連れていた。
しかし、その後、長男と双子の女の子をもうけてくれた。
その妻は、別な人生を求めて去っていったがな。
俺にとって、新しい伴侶ができた。
旧姓
俺との間に実子はいないが、素敵なママになってくれた。
もう、頭が上がらないどころか、一緒にも眠れない。
ひなぎくさんは、俺と温泉郷に、沢山部屋のある古民家で、五人の子ども達と暮らしてくれている。
彼女は、体調を崩したが、持ち前の明るさで黒樹家になくてはならない存在となった。
だが、一緒のお布団におねんねができないのだ。
何故だ?
彼女は、元Eカップ湯けむり美人と呼ばれたものだが――あ、俺だけか?
今は洗濯物を見て知っている。
――Iカップ湯けむりカポーン振り向いたら子どもに見せられないパパになっちゃうなーんて素敵なママになっている!
俺の部屋もある。
ひなぎくさんの部屋もある。
彼女が体を休めるときは、出窓に花を飾った自身のベッドルームでゆっくりとしている。
ああ、邪魔はしないよ。
俺からは、一切邪魔はしない。
ただ、子ども達の各部屋をぐるりと回ってこないと俺達の部屋は遠い。
その部屋から、愛らしい足音が聞こえるんだ。
広縁から、俺の部屋の前で止まる。
お盆を置き、身だしなみを整える衣擦れの音まで聞こえる。
「あなた……」
ひいいい!
きた。
ススキのお化けではない。
「あたたかい、カフェオレお砂糖マックスでもいかがですか?」
「おおおお。ひなぎくさん。ママちゃんちゃん」
すっと戸を引き、礼をして入る。
俺の文机にことりとカフェオレお砂糖マックスを置く。
「あなた、よく眠れますよ」
「それは、いいね。わはは」
俺の甚平がずりこけた。
「俺は、このところよく寝付けないんだ」
ひなぎくさんは、どうやら不思議な魅力の持ち主で、誰もが心を開いてしまうのだよ。
「はやく、うまいこと目を覚ましたい」
「私が、最高の目覚めを差し上げたいです」
とっと、隣に肩をあててくる。
Iカップが揺れて俺の肘を刺激する。
「ひなぎくさん? ママちゃんちゃん? いやいや、待った待った」
このところ、ひなぎくさんとは、俺の部屋で一緒におねんねしていない。
ぶちぶち言われても仕方がないよな。
そう思っているところへ、甘いアプローチだ。
Iカップが。
Iカップが男ってヤツを目覚めさせる!
最高の目覚めって、朝まで待たなくてもいいだろう?
いや、特別なことはしないが……。
ああ、この香り。
ちょっとふんわりする優しい感じ。
病弱だったけれども、長い髪を一人で洗えるようになったんだよな。
ひなぎくさんから、うちの温泉の香りがする。
何かな。
俺、今日も仕事で疲れた感じはする。
どうも、うとうととしてきた。
「あなた……。お布団敷きますね」
押し入れに行こうとするひなぎくさんの手をとった。
「……いい。そのままでいてくれ」
俺は恥ずかしくも懇願してしまった。
だから、この顔は誰にも見せられない。
座ったままひなぎくさんの肩に身をゆだねた。
「いつも大切に思っているから――」
すうっと息をしている間に、俺は、うたた寝をしていたようだ。
「ん、んんー」
今、何時だろう?
気が付けば、周りが賑やかだ。
ん?
俺は、うたた寝を朝までしたのか?
文机の前で、ぽいんぽいんのひなぎくさんと、支え合うようにしていた。
なにやら、気分がよい。
カチャカチャと食器の音が聞こえる。
朝シャン好きの娘たちが慌ててドライヤーを使っているのも聞こえる。
おい、長男よ。
朝から、ギターを弾くなよ。
「何だって? Iカップひなぎくさん!」
最高の目覚めって、何だか分からないけれども――。
ひなぎくさんママちゃんちゃんと子ども達に挨拶ができたらいいなと思う。
「おはよう、ひなぎくさん」
「皆、おはよう!」
Fin.
ひなぎくさん、巨乳です いすみ 静江 @uhi_cna
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