瓦解へ

 近藤の使いに伴われて永倉、斎藤、伊東の三人が帰営したのは、角屋にこもってから四日目のことだった。

 近藤、土方は伊東に対して「あまり勝手をされては困る」と釘を刺し、そののち斎藤と永倉のみを副長室へと呼び出した。


「幹部のお前らがなにをやってるんだッ」


 と、土方は目の色を変えて怒鳴る。

 表向きは連泊許可を取らなかったことに対しての叱責であった。

「すみません」

「────」

 頭を下げる永倉の横で、斎藤はなにも言わぬままじっとりと土方を見つめている。下手をしたら切腹か、と永倉が頭を痛めていると、意外にも説教はすぐに終わった。

「永倉くんは蔵で謹慎だ。斎藤はもう少しここに残れ」

「…………」

「え」

(それだけ?)

 という顔をした永倉に「早く行け」と土方は怒った声色のまま言った。

 長居は無用、と永倉は足早に退出する。

 いったいどういうことだろう。伊東が絡んでいたから免責になったとでもいうのか──と考えていると、心配そうな顔の中村金吾が迎えに来た。

「永倉先生、大丈夫ですか」

「おう中村くん。蔵で謹慎だとよ。温情を賜ったぜ」

「良かった。永倉先生までもが切腹なんてなったら、それこそ隊士一同黙っちゃねえですわ」

「はっははは。ま、今回は俺も悪かったからな。しかし折檻で蔵に閉じ込められるのは若いころ以来だぜ」

 と、笑いながら蔵へ向かう。

 その足が止まった。

「なんだぁ?」

 蔵前にはヤンキー座り(当然、この当時にそんな呼び方はない)をした綾乃と葵がいるではないか。女のくせにまた下品な座り方をしていやがる、と永倉は眉を下げた。

「どうしたこんなところでそんな格好で──」

「蔵で謹慎だって?」

「なんでもう知ってるんだよ」

「蔵の番をしてあげる。さ、入って」

「なんだか緊張感がねえなあ──」

 永倉はにがっぽく笑って、すごすごと蔵のなかに身を置く。冬真っ只中の蔵中は現代で言えばまるで冷蔵庫のよう。しかし永倉は文句ひとつ垂れることなく、じっと我慢をして胡座をかいた。

「あとであったかいお汁持ってきてあげるね」

「欲しいものあったら言って!」

 こそこそ、と小窓から聞こえた女たちの言葉に「緊張感がねえんだよなあ」と、永倉はふたたびつぶやいた。


 一方、永倉が出ていく姿を見届けてから、土方はぶっきらぼうに「どうだった」と聞いた。

 正月、斎藤から「伊東に声をかけられた」という話を聞いていた。それを受けて土方は斎藤に対し、伊東の心意を探れと任務を与えていたのである。

「あんたの読み通り、既に手を回してきていた」

「誰だ」

「藤堂──」

 斎藤の一言に土方は小さく呻く。

 しかし自分に納得させるように何度も頷いた。

「平助は同門だ、当然か」

「藤堂が来るのだから永倉も当然来るだろう、というようなことを伊東は言っていた」

「永倉は」

「……近藤先生について来た。先生やアンタに志がある限り新選組から脱退するようなことは断じてない、と」

「そうか」

 土方は、身内には家族同然の愛を注ぐ。

 その注ぎ方は決して分かりやすいとは言い難いけれど、斎藤には見えている。

 現代では鬼と呼ばれる彼だが、実際はとんでもない。新選組が大好きなのだ。現代の言葉を借りるならおそらく趣味なのだと思う。

「……お前も一日くらい、蔵に入っとけ。伊東が怪しむかもしれねえからな。幸い永倉もいるんだ、退屈しねえだろ」

「フ、」

「なんだよ」

「いや、──承知」

 かわいい人だ。

 斎藤は、細く笑って蔵へと向かった。

 ──。

 ────。

 蔵前には、先ほどと変わらずヤンキー座りをしたふたりがいる。

 眉をひそめて斎藤は近付いた。

「なにをしている」

「あっハジメちゃんも謹慎?」

「いいよ、どうぞ」

「…………」

 なぜふたりが蔵の門番をしているのか。

 土方が見たら確実に怒る案件である。

 なかを覗くと、すでに永倉が入っていた。蔵の戸を開けて斎藤は「よう」と手をあげる。

「なんだお前も謹慎か。土方さんはお前には甘いから、免除かと思っていたぜ」

「俺は任務だった。伊東の話は断ろうと思っていたが副長に言われて」

「えッ、じゃあなんで謹慎してんだ」

「ん」

 斎藤は一瞬口をつぐむ。

 それから、あんたが、と笑いをこらえながら呟いた。

「ひとりじゃつまらんだろうから、と副長が差し向けた」

「…………」

 内緒だぜ、といたずらっ子のような含み笑いをして、斎藤が指を口に当てておちゃらける。

 永倉はボリボリと頭をかいて、

「……緊張感がねえんだよ、だからさァ」

 と三度つぶやいて、嬉しそうに笑った。


 ※

 永倉謹慎三日目。

 蔵へ食事を運んだあと、綾乃は副長室へと向かった。

 西本願寺に移ってからなかなか土方の部屋に入る機会がなくつまらないので、近頃は些細な理由をつけて部屋を訪れている。

「三橋です、失礼しまァす」

 中から唸り声のような返事が聞こえたのを確認して、綾乃は襖を開けた。

 珍しくぐたりと横になる土方を見下ろす。

 五秒ほど見つめあって、言った。

「来ちゃった!」

「用件を言え、用件を」

「永倉さんにご飯持っていってきました」

「ああ──ご苦労」

 珍しく、土方がねぎらった。いつもならばそんなくだらんことでいちいち来るな、と言われそうなものだが。

 綾乃は中に入って襖を閉め、ぺたりと腰を下ろす。

「──ご飯持っていくのも片付けるのも、ひとりだけ蔵じゃあ効率が悪いんです。はやく謹慎解いてあげてくださいよ」

「……うん、そろそろいいか」

 またも素直にうなずく。そろそろ不気味だ。

 体調でも悪いのか、と綾乃は膝を詰めて顔を覗いた。

「肩でも揉みましょうか。上手いんですよ、わたし」

「……肩はいいから、膝を貸してくれ」

「膝」

 綾乃は確認するようにつぶやく。

 うん、と唸って土方は彼女の膝に頭を乗せた。

「!」

 ひざまくら。

 綾乃はカッと目を見開いて土方の側頭部を凝視する。

 その衝撃たるや、平成から再びこちらの世に戻ってきた際に屯所で豚が飼育されていることを知ったとき以上のものだ。

「ひ、膝枕って寝づらくないですか」

「寝づらいよ」

「ですよね」

「でも、悪くねェ」

 ごろりと上を向き、綾乃を見た。

 綾乃は額が赤くなる。そして両手を使って土方の目を隠す。

「ちょっと、そんなに見ないで」

「なぜ」

「照れるから」

「いいよ、照れろよ」

「勘違いするの!」

「すりゃあいいだろ」

 と、土方は笑って綾乃の手を取る。その目がいつもと違ってどこか甘い。

 綾乃は腹が立った。

「──土方さんって、ご近所の娘さんになんて言われているかご存知ですか」

「なんて?」

「歩くセックスシンボル」※ウソ

「なんだそれ」

「目が合ったら孕むって」※ホント

「はらむ?」

「子どもを」

「ばかたれ、目が合うだけでガキが出来るか」

「そのくらい腰にクるって意味ですよ」

 その視線を、あろうことか膝上から独り占めしているのだから、綾乃はもうたまらない。

 この顔も、髪も、手も、体躯も──心も、すべて自分のものだったなら、余すところなく口付けを落としてやるのに。

 などと高校生男子のようなことを悶々と考えて、綾乃は渋面をつくる。

 まるで据え膳だ。

「お前もキてんのか」

「は?」

「腰に」

「…………」

「沈黙は肯定だぜ」

「いやな男!」

「はっはっは!」

 膝の上でひとしきり笑ってから、土方は身体を起こした。

「…………」

「…………」

 突然の沈黙ののち、ぽつりとつぶやく。

「──三橋」

「はい」

「お前は行かないよな」

「どこに?」

「新選組じゃない、どっか」

「…………」

 正座する足がひやりと冷えた。外で雪が降りはじめたようだ。土方の背中が異様に心細く見えるのも、この寒さのせいなのだろうか。

(いや、ちがう)

 綾乃の胸がうずいた。

 いつでも冷静沈着な彼だって、心のなかには不安がある。いつか、これまで築き上げたものが瓦解してしまうのではという恐怖も、おそらくは。

 彼の荷物はひとりで背負うにはあまりにも大きすぎる。

 綾乃は、だから明るく笑った。

「そこに土方さんがいるならね!」

「なんだそれ」

「ほら、わたしがいたいのって新選組じゃなくて、土方さんのそばだし」

 わかるでしょ、と顔を覗き込めば土方は耳を赤く染めて「なんだよそれ」と顔を背ける。

 予想外にウブな反応を見て、綾乃はため息をついた。

「あのね、何度も言うようだけど──わたし土方さんのこと好きなんですよ。知ってるたァおもうけど」

「…………」

「いい加減に分かってください」

 とすこし怒ったようにつぶやいて「とにかく」と立ち上がる。

「雪も降ってきたし、永倉さんのことはやく蔵から出してくださいよ」

 言い捨てて、早々に退出した。

 襖を閉めて自室への廊下を歩く。足先から底冷えする寒さが迫ってきて、蔵中の永倉を案じた。

「…………」

 大部屋に積まれた夜着を数枚手にとって、綾乃は蔵へと走った。

 蔵前で番をしていた隊士、阿部十郎に声をかけてそっと中を覗くと、永倉は胡座をかいて目を閉じていた。

 あまりにも動かないので凍死したか、と綾乃が中へはいる。夜着を一枚肩にかけて揺すった。

「新八さーん?」

「んぉ」

 びく、と肩を揺らして永倉は目を開けた。

 どうやら眠っていただけのようである。

 ホッと息を吐いて、綾乃はどっさりと夜着を渡す。

「夜着、三枚持ってきたからこれ敷いて」

「おお──おまえって、ホント、俺のこと大好きだよなあ」

 からからと笑う永倉に、綾乃は眉を下げた。

「どうして……新八さんみたいにそうでもない人にはたやすく受け止めてもらえるのに、土方さんには伝わらないの」

「そうでもないってなんだ」

「しんどいよォ!」

「俺の方が寒くてしんどいよ──今度はどうした」

「なんでもないです──」

 なんなんだよ、とわめく永倉を横目に、綾乃は深く重いため息をつく。 

(……しんどい)

 心のなかで思う。

 己の好意を伝えるのは大変に気力を使うものだと最近知った。だから、一思いにフッてさえくれれば諦めもつくというものだ。

 なのに思わせぶりな態度をとられては、いつまで経っても期待してしまう。

 ──これでいいじゃない。

 ──なんの返事がもらえなくてもさ。

(いいや、寂しい)

 ──生きている時代が違うのだから。

 ──そばにいられるだけで幸せだよ。

(でも、寂しい。……────)

 綺麗事を吐く己の心に蓋をして、綾乃は蔵から足早に自室へと戻り、ひとり声を抑えて泣いてみた。

 永倉の謹慎が解けたのは、その翌日のことだった。


 一月七日。

 沖田、永倉、斎藤の三人は、永倉のおよそ三日間に渡る謹慎が解けたお祝いとして、夜の町に繰り出した。

 四条橋畔のところにあるしっぽりとした居酒屋で、沖田は杯をかかげる。

「永倉さんの謹慎解禁祝い!」

 かち、と猪口をぶつけた。

 ぐいと飲み干して、永倉はくう、と唸る。

「なんだかんだ優しいこと言って、きっちり三日間謹慎させるんだもん、あの人そういうところちゃっかりしてるよな」

「……まあ、飲めよ」

 くすくすと肩を揺らしながら斎藤が酒を注ぐ。

「っはー、うめえ」

「このあと橋のところ行きましょ。風当たると気持ちいいから!」

「いいな」

「さっみぃけどな!」

 昨夜の雪がうっすらと積もっている。

 仏頂面の親父が、鼻頭を赤くしてつまみを盛る。そのようすを、熱燗をちびちびと嗜む沖田がぼんやり見ていると、ふたりが角屋で聞いてきた伊東の思惑をぽつりと話しはじめた。

「この三日間、ずーっとその話さ」

 えっ、と沖田は目を見開いた。

「伊東さんは分隊でもつくるおつもりなんですか」

「どうだかな──新選組を乗っとる気はなさそうだが」

「それでもうちから引き抜いていこうとしているんなら同じことですよ」

 まあな、と永倉は頷き、ちらりと斎藤を見る。

「以前近藤さんに対して批判の建白書を出したことがあったろう。それの面子を意識したんじゃねえかな」

「ああ、永倉さんと斎藤くんなら乗ってくれるかもって?」

「……俺が伊東について行くときは、殺すときだ。ありえん」

「分かってる、分かってるよ。斎藤くん」

 クスクス笑う沖田は、ちろっと酒をなめて杯を置く。

 元々あまり好きではない。

 すぐに酔うのだ。

「しかし問題は平助くんだよ。平助くんは本当にもう決めちゃったんだろうか」

「平助は──そうだろうな。北辰一刀流の同門だ。それに、山南さんをこの組に殺されたようなもんだから。そりゃあ揺れるさ」

「…………試衛館あがりは、ずっとおなじだって思ってたのに、なァ」

 沖田はうつろな目で呟く。

 しかし答えたのは意外にも斎藤だった。

「そう言うな。藤堂が、──自分で決めたことだ」


 それからは、早かった。

 同月十八日辺りから伊東が九州出張。

 又聞きによれば、出張中に多くの倒幕攘夷派浪士と面談をしたそうだ。

「感じ悪ゥ」

 なにそれ、と葵はつぶやく。

「つまり方々廻って、新選組から分離するから応援してねって言っていったわけ?」

「協力者を仰ぎたかったんじゃねーの。何かしらの大義名分がないと、この組から分離なんて出来るわけないし」

「それでなんだって伊東さんが孝明天皇御陵守護を任命されるわけ。この間の孝明天皇の埋葬守護だって、伊東さんは出張でいなかったくせに!」

 というのは、一月二十八日に幕府歩兵隊や桑名の兵隊に混じり、新選組も御車の警備にあたったのである。

 綾乃はほんとね、と下唇を噛んだ。

「九州出張についていけばよかった──」

「でも私たち、伊東さんに信用されてない」

「まあね。事実こっちだって信用してないんだから、当たり前っちゃあ当たり前よ」

「それもそうだ」

 葵はくすくすと笑った。

 それから、伊東一行が九州からようやく帰京した三月。

 近藤、土方両君に早々、天皇墓陵を守るという大義を任命された旨を話し、新選組から分隊することを伝えた。

 近藤も土方も分かっていたことだ。

 もはや致し方なし、とそれを了承。

 三月二十日。

 伊東を含めた十三名が『御陵衛士ごりょうえじ』と拝命した名を掲げて、新選組から本格的に分離することとなったのである。


「お世話になりました」

 牛込の試衛館からともにやってきた同志、藤堂平助は、ついに考えを変えることはなかった。

 伊東についてゆくという。

 多くの隊士と挨拶をしても揺るがなかった強い瞳だが、屯所の柱に寄りかかりむっすりと黙り込む原田を見たときには、さすがの藤堂も視線をおとした。

「…………」

 いろいろな感情が混ざったのだろう。察した原田は、彼の肩にポンと手を乗せた。

「お互い頑張ろうぜ。いろいろ一段落ついた節にゃあよ、またみんなで飲みに行こうじゃねえか。なっ」

「……ああ!」

 原田の笑顔は、すこしだけひきつっていたが、それでも藤堂はうれしかったようだ。

 力強くうなずいた。

「藤堂くん」

 ふいに。

 優しい声が頭上から降ってきた。藤堂は小さな身体をくるりと回す。

 近藤だった。

 その後ろには土方もいる。

 伊東との挨拶が終わったようだ。

 多少の後ろめたさがあるのか、藤堂の顔がわずかにひきつる。

「近藤さん、土方さん。今まで──お世話になりました」

「お前ならどこだってやっていけると、俺は信じているぞ」

「……近藤さん」

「達者でな」

 近藤は、寂しそうに笑う。土方は表情こそなかったけれど、すれ違いざまに肩を叩き「風邪ひくなよ」と呟いた。


 問題はこちらである。

「うそだろおい、斎藤てめえ裏切り者!」

「…………」

「お前、お前は絶対行かねえって言ってたじゃねえか。なんだよ、心変わりかッ」

「永倉さん」

「…………」

 悔しげにうつむく永倉に、斎藤は周囲を見てからポンと肩をたたく。

「──俺の身がどこにあろうと、心は常にここにある」

「は?」

「これも一種の、隊務だ」

 斎藤一あるところ、土方の影あり。

 伊東の本心、そして御陵衛士の活動について調べろ──と土方から指示を受け、斎藤は伊東に対し、あたかも正月時の話で心が動いたかのような演技を見せた。

 元々無口な男だ。

 伊東は疑いもせずに喜んで受け入れたのである。

 その経緯を説明すると、永倉はホッとした顔で何度も頷く。

「そうか──良かった……平助もお前も行くって聞いてよ。俺はこれから先、誰を頼りにすりゃいいんだと心配でさァ」

 と言った永倉の後ろから、原田が満面の笑みで自分の胸を叩く。

「おい新八っつぁん。水くせえな、俺がいるじゃねえか!」

「…………」

 永倉は、原田を一瞥してから、なにも見なかったかのようにため息をついて、にっかと笑った。

「ま、そういうことなら安心だ。張り切って行ってこい、斎藤」

「あれ、無視?」

 斎藤はフ、と笑う。

 こうして、御陵衛士は新選組から分離した。


 御陵衛士がしばらく歩みを進めた先。

 屯所で見かけぬと思っていた沖田が、野良犬と戯れながら待っていた。

「やあ、皆さん行ってしまわれるんですね。お互い大義を果たしましょうね」

 ──なんて歯の浮く台詞だ。

 沖田は自分の言葉に背筋を寒くした。しかし伊東はからりと笑ってうなずく。

「沖田くん。君はこちらに欲しかったのですがね、残念だ」

「それは光栄だなぁ。頑張りましょう、お互いに」

 と、笑顔を向ける。

 しかし最後尾についた斎藤は見た。

「…………」

 伊東やその一派を見送ったのち、じっとりとその後ろ姿を睨み付ける沖田の姿。やがて斎藤とのすれ違い様、

「たのむよはじめくん」

 と、低く唸った彼の声。

 なぜ知っている、と思わず振り向いたが、彼はすでに身体を揺らして歩きながら、後ろ手を振っていた。


 ※

 少し戻った慶応二年九月中旬頃。

 高杉晋作が、喀血したという。

 その報せを受けた伊藤俊輔はいの一番に駆けつけた。

「高杉さん!」

「なるたけ早よう復帰する、待っとれ」

「これ以上無理したら聞多が怒ります──」

「聞多なぞ怖ないわ」

「とばっちり受けるのは俺ですけん!」

 伊藤は深い溜め息をつく。

「……あなたがおらんと長州は駄目だ。みぃんな頭固いですけん」

「それに気付いた俊輔がいらぁ、大丈夫」

 普段ならば絶対に聞けない高杉の誉め言葉に、伊藤はすでに泣きそうだ。

 高杉は床に伏せたまま、伊藤から天井へ視線を移す。

「死は求めて赴くものではなく結果として到達するもの──松陰先生はそう仰っていた」

 高杉晋作生涯の師、吉田松陰。

 聡明な男であったがゆえ、その影響力を怖がった幕府老中井伊直弼らによって処刑された松陰が高杉に説いたもの。

 それは、“死ぬことが大切なのではなく、大義を実行することが先立つべきで、そのときは死に至ることもあろうし、また死を避ける場合だってありうる”というものだった。

 師の言葉が、高杉の胸にはずっと残っている。

「今の若者はみんな死にたがりじゃけん、松陰先生の言葉は──胸に沁みる」

 ──もう少し。

 待ってくれ、少しだけ。

 心中で。

 高杉は日ごとに朽ちゆく自身の身体に願った。


 慶応三年に戻る。

 四月十四日の正午過ぎのことだ。

「…………」

 西本願寺の敷地内に、綾乃と葵の姿が見当たらない。土方が検討のつくところをひととおり探すものの一向に見つからないのである。

「尾形くん、見つけたか」

「いえ──しかしここまでおらんということは、やはりどこか出掛けておられるのでは」

「そんなはずはねえ。徳田の方はわからんが少なくともあっちの方は、いなきゃおかしい」

 探す理由は、特にたいした用事ではない。が、綾乃とはささいな約束があったのである。土方は、彼女が自分との約束を反古にすることは決してないという確証のない自信があった。

「あとは──朝から見ていないのだとすれば、まだ寝ている……とか」

「あいつは朝寝坊はしない」

「しかし万が一という場合も」

「…………」

 尾形の、ひどく言いにくそうな言い方にはたと動きを止めて、土方は小さく唸ると足早に彼女の寝室へと向かう。

 まさか、三年寝太郎ではあるまいし。

 と思いながら襖を勢いよく開けた。


「…………」

「────い、いた」


 布団にくるまり、気持ち良さそうな寝息をたてながら、綾乃はぐっすりと寝入っている。

 土方は、無性に腹が立ってその掛け布団をひっぺがした。

 しかし彼女はぴくりとも気付かぬまま、すやすやと眠っている。

「おい三橋、てめえさっさと起きろ」

「…………」

 無反応。

 土方は黙って敷き布団をずるりと引き出した。その衝撃でごろりと綾乃が転がるも、依然として起きる気配はない。

 袴をたくしあげ、土方はドン、と床をならす。

「おいこら、起きねえなら──」

 と言いかけて、土方は一瞬ゾッとした。

 まさか、このまま一生起きないなんてことは。

「ふざけるのも大概にしろッ。おい」

 頬を叩いても、水を顔にかけても、綾乃は嫌な顔をするくらいで、眠りから覚めることはない。

「…………おかしい」

 これは本格的におかしい。

 ようやく異常事態と判断した土方は、庭で素振りをしていた永倉に声をかけて、綾乃の様子を見てもらうことに。

 なぜ俺が、と心のなかでつぶやきながら、永倉は綾乃の顔を覗きこむ。

「目が、覚めんと──なるほどこりゃあ」

 永倉は眉をしかめた。

 布団をすべて引き剥がされ、顔には水をかけられ、あげく頬も叩かれ過ぎたのか赤くなっている。

 あまりにも悲惨な姿に、永倉は笑いをこらえた。

「いろいろ試しましたねェ」

「しかし起きない──こいつがいくら鈍いと言っても、ここまでして起きねえのはさすがにおかしいだろ」

「一番効きそうなのやりました?」

「あ?」

 永倉が身を屈めて、綾乃の耳に口を近付ける。


「……朗報だ。起きたら土方さんが抱いてくれるってよ」


 わずかに。

 びくりと身体を反応させたが、しかしすぐに綾乃は安定した寝息を立てた。

「あれェ起きねえ。こりゃおかしいな」

 無言で永倉の頭を殴ってから、土方は苦い顔で呟く。

「まさか、徳田もおんなじようになっているんじゃ──」

「確認しましょう」

「そうしよう」

 と、土方が廊下に続く襖を開けたときである。

「うわっ」

 目の前に、葵を抱えて立ち尽くす沖田がいた。

「おま、おまえ──おどかすな!」

「おいそれ、まさか」

 どうやら土方と永倉の予想は的中したらしい。沖田が震える声で呟いた。

「葵さんが…………何度声をかけても、目を覚ましてくれないんです──」

 こっちもか。

 そんな顔をして、土方と永倉は顔を見合わせると、肩をすくめた。


 ※

(……………)

 綾乃は、知らない座敷に立っている。

 藺草の薫りが鼻をつき、ふと視線を下ろすと畳の上に葵が眠っていた。

「葵」

 声をかけて肩を揺する。

 彼女はまもなく目を開けてここどこ、と口を開いた。

「知らない──わたしもいま、目ェ覚めた」

 

 かすかに、弦をはじく音がした。

 襖から隣室を覗く。縁側に腰かけた男がひとり三味線を携えている。

 変わり果てた姿ではあったが、その横顔には見覚えがあった。

「た、高杉晋作」

 葵の声に気が付いたか、高杉はゆっくりとこちらに視線を向けた。

「おお──貴様ら、」

 予想外にも、彼は顔をほころばせて

「生きとったんか」

 と言った。

 ふたりにはその言葉の意味がよく分からなかったが、初対面で与えた印象が悪かったわりには、予想以上に歓迎されていることは分かった。

「…………」

「ようここが分かったな」

 まあ座れ、と畳を叩く。

 遠慮がちに腰を下ろしたふたりに、高杉はまた、笑った。

「今日は調子がええ──」

 人は死ぬ間際、体調が良くなると言う。


「──おもしろき、こともなき世をおもしろく」

 すみなすものは、心なりけり。


 高杉は唐突につぶやいた。

 昨日床のなかで上の句を考え付いたらしい。世話人の女性がそれに下の句を合わせてくれたのだ、と高杉は言った。

 綾乃と葵は息を詰まらせる。

 その句は現代において、彼の辞世の句であると言われている。

 彼の死が近い。

 綾乃と葵は、重苦しかった。

「どうだ」

「……良い句ですね」

「ほうじゃろ」

 畳には、布団が敷かれている。

 ここでずっと寝たきりの生活を送っていたのだろうか。葵は布団を指し示した。

「横になったほうがいいですよ、身体に障ります」

「おぬしらのいう通り」

 思ったより従順に床へ入りながら、高杉は言った。

「──女と異国は怒らせると怖ェな」

「あ、」

 あの日、啖呵を切ったことを思い出す。

 遠いありし日を懐かしむ彼の顔は、ひどく穏やかだった。

「おぬしらが、三条橋から身を投げたと聞いたときは、嘘かまことかと惑わされた」

「…………」

「殺しても死ななそうだと思っとったが、やはり生きとったな」

「残念?」

「いや、わりに安堵した」

 高杉は屈託のない笑みを浮かべた。

「……一回しか会ったことないのに」

「貴様らは一目会うたら忘れられんよ」

 また会えてよかった、と高杉は息を吐くようにつぶやく。瞳を閉じた。

 微睡んでいるようだ。

 すると、バタバタと玄関口が騒がしい。

 綾乃と葵は慌てて隣室に身を隠す。

 襖から覗きうかがえば、やって来たのは見覚えのないふたりの男だった。あとから分かったことだが、このふたりとは、井上聞多と福田侠平のことである。

「おひとりで大人しゅう寝とります」

「ああ、よかった」

「……おう、」

 ふと、高杉が小さく声をあげる。

 一瞬のまどろみから戻ってきたらしい。

「あっ高杉さん」

「聞多と福田さん。いつの間に」

「つい先頃、見舞いに参上しました」

 福田が微笑むのを見て、高杉は笑った。

「ええ句ができた。──良い句と言われた」

「どなたに」

 井上の問いに、高杉は沈黙する。そして

「……はて、だれにだったか」

 と首をかしげた。

「…………?」

 綾乃と葵はこの頃から、小さな違和感を感じ始めることとなる。


「のう、」


 高杉の掠れた声が、妙に部屋に響いた。

「ようく聞け」

 かすれながら、かつてよほどに褒められた彼の独特な声音は、未だにその場の人間を惹き付ける。

「はい」

 福田がずいと身を乗り出して、高杉の口許を注視する。

「……ここまでやったから、これからが大事じゃ」

 小さな声である。


「しっかりやって呉れろ、しっかり──やって呉れろ」


 しかし、強かった。

 最期の力を振り絞った彼の遺言は、これまで幾千人が理論立てて説いた説法などよりも、よっぽど。

「……はい。──はい、かならず」

 よっぽど力強かった。

 葵はわずかに嗚咽を漏らし、綾乃は瞳を伏せた。

 それから間もなくのこと。

 彼は、静かに息を引き取った。


 慶応三年四月十四日。

 高杉晋作、病死。


 国の変わる瞬間を見ることなく、しかし国の変わる確信を持ちながら、高杉晋作は逝った。

 満二十七歳という若さと天賦の才故、なんとも惜しまれる死であった。


 ぱち、と瞳をあける。

 不安そうな顔でこちらを覗き込む土方と、綾乃はばっちり目が合った。

「ひっ」

 驚きのあまり、喉奥をひきつらせた。

 隣では同じように、葵が半身を起こしてぼうとしている。

「あれ──」

「おい、起きたぜ」

「すげえな。徳田と一緒に寝かせたら、ふたりともサクッと起きやがった」

「良かったァ……もう目覚めないかと思って、生きた心地がしませんでした──」

 土方と永倉、沖田を横目に、隣でぼんやりしている綾乃に目線を送ると、肩をすくませるジェスチャーが返された。

「無事で良かった──」

「────」

 ホッとした声で沖田は言った。

 よかった──という気分ではない。

 葵は、ただただ襲いくる虚無感にうなだれた。

 それはどうやら綾乃も感じていたらしい。

「……また会えて良かった」

 と独り言をつぶやく綾乃の顔が、言葉とは裏腹にひどく悲しげに歪んでいたからだ。


 ※

 高杉晋作の訃報は、瞬く間に長州の豪傑たちにも伝わった。

 木戸孝允きどたかよしも、そのひとりである。

 訃報を聞いたところで、涙は出なかった。

 どうというわけではない。

 今まで散々迷惑をかけられたのだ。少しばかり残念だ、その程度のこと。

 ──“しっかりやってくれ”。

 という遺言を遺したと聞く。

 彼がどれほどの思いだったか、木戸には想像もつかない。

「…………」

 昨年の十月に彼から貰った、喀血したという内容の書状を読み直す。

 どうというわけではない。

 また一人、仲間がいなくなっただけ。──何度も経験していることじゃないか。

(…………)

 と。

 自分に多くの言い訳をつくたびに、木戸の心は悲しみで溢れた。

 悔しくて悔しくて、涙がこぼれてくる。

 言い訳の数だけ垣間見えた、己の弱さを受け止めるために木戸はひとり泣いた。

 受け入れがたい現実をどうにか信じて、この先、生きて行かなければならないのだから。

 “しっかりやってくれ”。

 そんな彼の言葉は、のちに木戸ばかりではなく、長州全体を奮い立たせることとなる。

 それは、かつて師の死によって自分自身がそうしたように。

 気が付けば長州にとって高杉という男は、それほど大きな存在となっていたのだ。


「あの高杉晋作が病で倒れるか──」


 その訃報は、坂本龍馬にも届いていた。

 ほんの数日前、自分が海援隊を結成し生き生きとしていた頃、高杉は床の中で病と闘っていたのか。

 伊予大洲藩からチャーターしたいろは丸が転覆する様を眺めながら、そんなことを考えている。が、じわじわと現実が押し寄せてくると、坂本はぶるりと首を振って叫んだ。

「否──あかん、あかんぜよ!」

 こうなったのは今から五分ほど前のことである。

 坂本の乗ったいろは丸が大坂に向けて長崎を出発し、数日が経った今日。

「危ない危ない危ないッ」

「ぶつかるぶつかる!」

 長崎に向かっていた紀州藩の明光丸と衝突。

 無惨にも、チャーターしたいろは丸が沈没したのであった。

「…………」

 むすっ、とした坂本率いる海援隊は、明光丸に乗り換えて近くの鞆の浦に上陸した。

「どがいしてくれる。あん船にゃぁ……ミニエー銃四百丁、銃火器三万五千六百三十両、金の塊を四万七千八百九十六両百九十八文は積んじょったがで、損失額は半端じゃあないですけんども」

 と、珍しく坂本が怒っている。

 ──しかし、この時。

 海援隊隊士の何人かは、笑いをこらえるため口の中を噛み締めた。

 実はこれ、後年に調査された結果、銃火器はおろかミニエー銃すら発見されていない。

 沈没して銃がまるごとどこかに流されて消えたとも考えられるが、あるいは。

(坂本さん、まじすげえ)

 坂本が、チャーター元に支払う損害賠償金を巻き上げるためついた嘘だったとも言われている。

「さ、坂本さんどがいする。あいつら呑気に幕府に任せます、とかほざきおった」

「とりあえず航海日誌もろもろ、見せてもらおうやいか。奴ら、徹底追及しちゃるキ!」

(この人、平気で嘘ついたくせに本気で怒っている──)

 そんなことがあって、海援隊側は常に賠償金交渉をし続けたわけだが、四日経ったある日、交渉がまとまらないうちに明光丸が当初の目的である長崎へ再び出航。

 更にキレた坂本は、自分がついた嘘など棚の上の方にあげてしつこく紀州藩を追い回すことになる。


「っちゅうことがあってな」


 二ヶ月後。

 坂本は、京都にいた。

「大変だったね、いろいろと」

 何故か、綾乃と葵の三人でまったりと二条城付近の茶屋で団子を食べている。

 感情のこもらない葵の感想に、坂本はけらけらと笑う。

「おまんら、投身自殺は噂やったがか」

「まあ噂のような本当のような……」

「で、賠償金は決まったの?」

「おう、一応にゃあ。なんと八万三千両。すごいろう」

 得意気にどや顔をした坂本に、今度は綾乃がけらけらと笑う番だった。

「船に積んでいたのは、あっても四万いくらかの金塊だけなのに、八万ッ。ぼるねぇ!」

「あの船代も含まれとるキニ。安い方ぜよ」

 ちなみに現代で換算すると、八十億くらいの金額であるらしい。

 ひとしきり豪快に笑ってから、ふと、坂本が言葉をこぼした。

「しっかりやってくれ」

「────」

「高杉さんが、最期に言った言葉らしい」

 彼が死んでから二ヶ月。

 坂本は蒼空を仰いで、

「わしは変えるぜよ、こん国を」

 と言った。

「…………」

 その横顔を見つめて綾乃が思うのは、彼の行く末である。これからどんどん人も世も大きく変わる。そんなときは、決まって多くの人が死ぬものだ。

 史実通りならば、彼もまた、いまから半年後に死ぬと聞く。

 当然、助けたいと思う。

 思うが、思えば思うほど綾乃のなかによぎるものがあった。

 それは、山南の死である。

 彼は死ぬ間際、

 ──必ずしも、生かすことが正義ではない。

 という言葉を遺した。

 それがよぎるたび、助けたいと思う気持ちが己の傲慢に思えてならないのだ。

(どうすりゃいいのよ)

 団子をひとつ食べた。

 近くで荷車を牽く音が聞こえる。砂埃が立ち、視界がくもる。しかしその前に綾乃の視界はじわりと歪んだ。正解でない道を選ぶのが、綾乃はとてつもなく怖かったのである。

 そのとき、じっと黙っていた葵が唐突につぶやいた。

「綾乃──私たち、そもそも違ったのかもしれない」

「え?」

「あの日、ここで話したでしょ。助ける、助けないの話」

「…………」

 思えばこの場所で。

 ふたりが珍しく意見を違えたことがある。

 あれはたしか、はじめて高杉と顔を合わせてまもなくのことだった。

「私は、大切な人を助けられたらそれでいいって思ってた。綾乃は、みんなを助けたいけどそれはいけないことだって諦めてた」

 どうやら葵も、いままさに同じことを考えていたようだ。

「高杉が死んだときに、おもったの」

 助けたかった、って。

 葵の呟きをぼんやりと聞きながら、坂本が団子の串を舐める。

「無理かもしれない。出来ることなんかないし──相手が求めてすらいないかもしれない。けど、なにかすればよかった」

「…………」

「誰であっても、どんなに不可能でも──優先順位とかじゃない。助けたいと一瞬でも思ったのならやるべきだって。余計なことするなって怒られたって、やってから後悔する方がいい。ずっといい……」

「……葵」

「いま、すごくすごく後悔してる。だから分かったの。──やっと分かった」

 と、葵は泣いた。

 坂本が串を皿に戻す。そらそうじゃ、と笑った。

「やらぬ後悔はあれど、やった後悔はいらん。おぬしらがほんにやらねばと思うたがやったら、やってみらぁええがで。なんの話か知らんけんども」

 綾乃はだけど、と眉を下げる。

「──それが正義とは限らないって」

「そいがどうした」

「え?」

「己の正義だけ考えんさい。正義なぞ人によって変わるもん、相手の分まで気にするだけ無駄なことよ。そいで怒られたら、そんだけのことやキ。なァ」

 と、坂本は葵の頭を撫でて、また笑った。

「…………」

 綾乃は、嗚呼と思った。

 目から鱗が落ちた気がした。

(自分の正義──)

 坂本の言葉は傲慢だ。わがままといってもいい。けれど、これこそがこの時代を生きる風雲児の覚悟であり、それが綾乃にとっての答えでもあるような気がしていた。

 何故、この世界に自分達がやって来たのかをずっと考えてきたが、やっとわかった。

 元々、正しい答えなどないのだ。

 必要なのは、それを答えとする己の覚悟ひとつだったのだ、と。

 綾乃の瞳から、まばたきとともに涙がこぼれたけれど、気持ちは妙に晴れやかだった。

 その心持ちのまま、蒼空を仰ぐ。

 宣戦布告だ。

 『運命』というものを、誰が操っているのかは知らない。が、しかし。

 負けるわけにはいかない。

 綾乃は、覚悟を決めた。

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