水の都の駆け抜く勇者

HIRO

第一章 約束 再開 初仕事

「「また明日!」」

「三本の剣、一つはルミエル、一つはイグニス、一つはカルディア」


「これらは始まりの剣と呼ばれる、そしてそれらが作り出した世界」


「これが僕らの住む……」


「聞き飽きたんだよ!」


「せk……えぇ」


小さな一軒家にある庭、そこで響く少年の声。

それに対して、言葉をせき止められる少年がいた。

いかにも活動的な少年は木刀を持って、それをもう一人の少年に突き付けた。


「もう何べんも聞かせてもらったよ! 耳にタコが出来るほどに!」


嫌な顔をしながら叫びをあげる、少年の名はアルバート・ブレッドマン

黒髪黒目、日焼けしたはだ、ここ一帯ではよくみられる姿だ。

種族は人間、この世界でもっとも繁栄しており、見受けられる種族だ。

性格は少々短期それでいて考えが足りない、有り体に言えば馬鹿だ。

しかし彼は12歳で粗削りかつ自己流ながらも剣の才能に溢れる稀有な存在だ。


「『これが僕らの住む世界【ラクシア】』だろ、嫌でも覚えるわ!」


「うん正解、でも、全容までは覚えてないんだろう」


そういうとアルバートは苦虫を潰した顔をする。

本を畳み優し気な雰囲気を漂わせ微笑む少年の名はエドモンド。

あちらこちらに跳ねた猫毛と吊り上がった猫のような目。

そのどちらもこの一帯では珍しい灰色をしており、肌も異様に青白い。

そんな彼はナイトメア、特徴として色素が全体的に薄いというのがある。

そしてナイトメアはこの世界で忌み嫌われる【穢れ】を内包する種族。

彼もまた実親に捨てられるが。心優しき育ての親に拾われる幸運に出会えた。

その為、この日まで腐ることなくまっすぐそして理知的に育っていった。

ナイトメアは総じて魔法の才能を持ち。

彼もまた成人したばかりの15という若さで魔法を使う事を得意とする。


「大体! そんなもの覚えてたって、役に立つのかよ!」


「そんなものより俺にはこの剣がある! 俺はこの剣で騎士になる!」


アルバートは剣を振りかぶり、素振りを始める。

事実、彼には才能がある、このまま強くなれば王国の騎士だって夢ではない。


「でも、君はパン屋の息子じゃないか、家を継ぐべきじゃないか?」


「そんなもん知るか! 俺は俺の生き方を貫く!」


そう、彼はパン屋の息子なのだが。それを言って説得しても

帰ってくるのはこんな主張や言葉ばかりだ。


「そうかい、まあ騎士になれる可能性が0ってわけじゃないけどさ」


エドモンドがこういうにも、理由がある。

この国の王子、ヴァイス・ハーヴェスは若く革新的な存在だ。

臣民にもそして貴族からもその人望は厚く次期国王への声も大きい。

そんな彼ならば、才能のあるアルバートを見れば……とエドモンドは思っている。


「お前が可能性は0じゃないって言ってくれるなら、きっとなれるさ」


「そっか……僕も君が騎士になる姿を見てみたいね、陰ながら応援する」


「応! そろそろ日が暮れちまうな! 帰った方がいいぜ」


「うん、父さんに怒られちゃうね、また来るよ、それまでに勉強しろよ」


「次はパン持ってきておいてやるよ……あー、勉強は、気が乗ったらな」


「それじゃぁ……」


「おう」


「「また明日!」」


しかしこの約束が果たされるには長い年月を待つことになる。


「エドモンド君だね、殺人罪の容疑で君を逮捕させてもらう」


衛兵に呼び止められ、言われるがままに彼はついていく。

エドモンドはこの日から3年を暗い牢獄で暮らすことになるのだった……

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