未来は希望に満ちていた

@grow

第1話 夢を現実にする為に

置いてかれた小学生時代。

虐められる中学生時代。

笑われる高校生の今。


結果、引きこもった。

その後、藤山透は、ある行動に出た。


家族との仲は良好。

でも、惨めな自分は嫌だ。

そんな透は気温の低い夜、裸になりクーラーを付けて睡眠薬を飲んで眠った。

*頭が悪くこれで死ぬと思った


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「はぁ。体験してきなさい」

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「おはよー透。起きないと一線超えちゃうぞ?」

「嬉し恐ろし発言が聞こえた!? 今の声は弓、か?」

「お? 今日は一発で起きたね、ちぇ。そうだよ弓だよ。さ、支度して出かけないと学校に遅刻するぞー」


生返事を返し身支度を終わらして学校に向かう。

何で俺は学校に行ってるんだ?

それに、弓はお隣の家の子で昔は遊んでいたんだが、男子は男子、女子は女子で遊ぶようになった。中学では虐められた俺が仲良くするのはまずいと考え、徐々に疎遠になっていたはず・・・。


弓と会話をしながら学校まで歩く。

校門が見えたところで、金髪ドリルお嬢様で有名な生徒会長、神城サリナが立っていた。


「透と愉快な女達の一人Yさんではないですか。こんな遅刻ギリギリに来るなんて余裕がありませんね」


愉快な女達? Yって弓だから?


「はっ。透と一緒に通学できないからって僻んでんじゃないわよ」

「な、私が貴方ごときにそんな感情を持つはずないじゃないですか。ねえ透。また生徒会の仕事で人手が足りないの。お願いできるかしら」

「(生徒会長と接点?)はい、俺で役に立てれば」

「もちろんですわ。透がいるだけで活力が溢れてきますから」

「(溢れるのは活力だけじゃないでしょ)」

「Yさん、今何かおっしゃって?!」

「別にー。いい加減イニシャルで呼ぶのやめてくれませんかー? それとも、人の名前も覚えられないんですかー?」


弓が生徒会長、神城さんと仲良く話しているので邪魔しないようにそそくさと下駄箱まで走る。

学校には良い思い出はなかったが、何でか教室に入っても挨拶から始まり普通に会話が成立している。


昼休みになった。

弁当を持ってない透は購買部に行くため立ち上がると周りから驚きの声が上がる。

え? いや、俺の方がえ? 何だけど。やっぱ隠れていじめられるの? 俺。

と顔色を悪くしながらもなんとか教室から出ようとすると女性とぶつかりかけた。


「きゃ! あ、先輩でしたか。どうしました?」

「え? あ、蒼井か?」

「そうですが、可憐って呼んでくださいって。はいこれ。いつものお弁当です。授業終わったらまた来ますので」


そう言ってあお、可憐は帰っていった。

蒼井可憐。

同じ部活の後輩で将来のためってことで弁当を毎日作ってくれているらしい(クラスメイト情報)。

確かに部活は一緒だったけど、話したことなかったんだけどな。


放課後に可憐がきて弁当箱と共にお礼を伝えた。一緒に帰らないかと聞かれたが、生徒会の手伝いがあるから断ると肩を落としていってしまった。


生徒会に向かう透。生徒会にも神城さんにも関わらないはず。なんだろうな、これ。

俺高校でもいじめの対象のはずなんだけど。


「藤山です。失礼します」


扉を開けると神城さんが一人で仕事をしていた。


「あら来ましたのね透。てっきりYやKが一緒に来るかと思いましたがお一人ですか」

「あ、はい。頼まれたのが俺だけなので。弓とは朝以降会っていませんし」

「そう。では、そこに座ってくださる?」


神城さんに言われたまま椅子に座る。

そんな俺に満足したのか仕事の続きに戻る神城さん。

え、座らせてそのまま放置? 新手のイジメ?


神城さんに手伝って欲しいことは何か恐る恐る聞いてみる。


「透はそこに座って仕事をしている私を見続ける。それが仕事よ」

「え、ですが、人手が足りないと」

「ええ、ですので透を呼びました。透が見てくれるだけで私の仕事速度が上がりますから」


他のメンバーは諸事情でお休みしているらしい。

見てるだけで良いなら楽だから良いけど・・・。

髪型は独特だけだ、綺麗でスタイルの良い神城さんを近くで見ていられるのはお得だ。


仕事の目処が立ったのか。書類を片付け始めた。


「さて、日も落ちてきましたし、家まで送って差し上げますわ」

「良いですよ。特に何もしていませんし。歩いて帰れる距離なんで」


そういって断ると、悲しそうな表情を浮かべ俺の袖を軽く摘んで一言。


「少しでもお話ししたいのですが、ダメかしら? 歩いて下校するのは家から禁止されていますので」


そんな風に頼まれちゃ断われないーー!!


校門に止められている車に乗せてもらい少しの間だけサリナさんと話をする(名前で呼べと頼まれた)。

家に着くと、今日は楽しかったと笑顔を見せてくれて車は走って行った。


家に入ると頬を膨らましている弓がおり、何に拗ねているのか教えてくれないので、宥めるのに一苦労だった。


布団に入り今日の出来事を思い返す。

弓に起こされ一緒に登下校。

可憐から手作りの弁当をもらう。

サリナさんと友人以上(自己判断)の付き合いをしている。


・・・なんで?

俺が知ってる学校生活と全く違う。

そういえば、クラスメイトと話していたし、授業もわかる問題が結構あった。

クラスメイトと話すなんてありえない。

頭の出来が悪いのか、努力が足りないのか授業が分かるのはおかしい。


そこで透は思いついた。

これ、夢じゃね? もし勉強ができてコミュ障じゃない俺だったらこんな学園生活があったんじゃないか? という妄想を見たんだ、と。

でも、体を冷やしながら睡眠薬を飲んで自殺したことを思い出す。

死後の世界? 夢の世界? どっちなんだ?


そんな風に考えていると声が聞こえてきた。


「どうでした、藤山透。別の世界の貴方の生活は」

「別の世界? つか、貴方誰ですか」

「私は夢を司る神です。あなたが馬鹿な自殺方法をしたことで可哀想になり、幸せな現在を送っている藤山透の生活を体験してもらいました」


夢神が言うには、運動や勉強、会話など努力をすることで似た様な世界になっていたと言う。

しかも、今からでも努力をすれば少しは近づけると助言を受けた。

そんなことを言われては努力するしかないじゃないか。

今の俺には家族以外何もないんだから。

頑張れば普通の学校生活が送れ、弓やサリナさんや蒼井と仲良く話せる世界が待っているかもしれないんだから。


「どうやら希望を持ってくれたようですね。では、夢から覚ましましょうか。あ、最後に一つだけ。睡眠薬を飲んでも死にません」


夢神の言葉を聞きながら、意識が現実世界に戻って行った。


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「あ、先生! 看護師さん! 透が目を覚ましました」


母親の声とざわめきが聞こえてくる。

目をしっかり開けると家族が驚きと喜びの表情を浮かべていた。他に弓の両親も室内にいた。


「あ? みんな何してんの。てか、え、ここどこよ」

「あんたは真っ裸で寝ていたから、風邪を引いていたのよ。しかも、こんな季節だからより病状は悪くなって約3ヶ月も入院していたのよ!!」


透が冬休み前に自殺未遂したので今は3月の下旬になっているらしい。

そんな透にさらに悪い情報が。


「しかも元から不登校だったから出席日数が足りなくてまた2年生をやり直すのよ。まあ、学校に行かないあんたには意味のない事かもしれないけど」

「は?! じゃあ学校に行ってもサリナさんは卒業してるし弓は先輩で可憐は同級生ってこと?! あ、頑張ったら近づけるってそう言うことか?」


驚いていると、足音を響かせながら弓が病室に入ってきた。

「弓、いたのか」

「いたわよ悪い? 元気になったのなら良かったわ。それよりも。何今の。生徒会長と他にも女の名前が聞こえてきたけど」

「弓は知らないっけ? 部活の後輩だよ。ってそんなことどうでもいい。弓、勉強教えてくれ! 俺の頭じゃ高校の授業に太刀打ちできない。それと、出来れば一緒に通学してくれ! 少しでも会話を成り立たせる様にならないといけないんだ!!」

「いじめにあっていても、家でなら問題なく会えるのに。避けていた私に頼むの。ふーん」

「う! た、確かに都合よすぎるかもしれない。でも、あの時は虐めで精神がボロボロだったからであってさ・・・」

「まあ、良いわ。やる気になったのなら。教えてあげるわ。先輩として」


そう言ってくれた弓の耳は少し赤かった。


「ありがとう弓! よし、めざせイチャコラな学園生活!!」


ちょ、どういうことよ、それ!!


弓の言葉を流しながら決意する。

夢で見た世界に少しでも近づける為に、俺は今までの俺と決別だ!

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