黒氷
ay
第1話
正気に戻った時、自分の目を疑った。
割れた花瓶。何も音がしない静寂。血まみれの自分の手。そして倒れている彼女から流れている俺の手に付いている血と同じ血。それは尋常じゃない量でもはや彼女が生きているとは思えなかった。
「おい…、小夜?」
自分のした事を信じたくなくて声が震える。声が反響しただけで、小夜の可愛いハスキーな声が聞こえない。
「さ、小夜…」
立っていられず床に膝をつく。目がかすむ。涙が止まらない。
服や身体にこれ以上血が付くのも気にせず、這うようにして小夜に近づき、その体を抱きしめる。
「ごめん。ごめん。ごめんんんんんんん」
唸っても泣いても彼女は帰ってこないことなど分かっているのに何でこんなに悲しくてむなしいんだろう。自分に人間的な感情を生み出してくれたのは結局小夜だけだった。
もういない。だって俺が殺したんだから。
黒氷 ay @ayamiayami
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。黒氷の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます