俺の彼女は学園アイドル。因みに三人います。
全人類の敵
告白
「あのっ!」
「……?」
「俺と……付き合ってください!」
現在の時間帯は昼休み。
場所にして、喧噪漂う自教室。
突然だけど、人が人に告白する理由って何だと思う?
そんなもの、好きだからの一言で片づけてしまった方が速いのかもしれない。
俺だって、好きな異性がいるから告白する、それが何よりの美学であると思うし、一番綺麗で王道的なやり方だと思う。
そもそもの話、人間が生き物であることは昔の偉い人が小難しい数式を並べて説明するまでもなく、そのくらいは俺たちにだって分かることだ。
なぜ?
欲求があるから。
食欲、睡眠欲、そして性欲。
世の中の恋愛って、特に日本だと古文時代の穢れの無い恋愛から、現代の少女漫画の様に美化され過ぎているのが現状だ。
海外に出れば、これは偏見でも何でもないんだけど、性欲を満たすためだけに付き合うって人も中にはいるだろう。
もちろん日本の現役高校生にだって、セフレの関係を持っている人がいることぐらい小耳にはさむ。
……だけど、俺は生憎それには反対派なんだ。
もちろん性欲はあるし、女の子といちゃいちゃしたいって気持ちはあるよ?
でも何よりも、時間をおいてゆっくりと二人の関係を育てていって、この人となら一生いられるって本能が叫んだ時、そういうことをするべきだと思う。
考えが古臭いだって?
それでも全然良い。
そして高校生活を充実させる上での三本柱、それは一に勉強、二に部活、三に恋愛だと思うんだ。
恋愛って所詮は本能と一時の気に迷いから生じる薬物みたいなものだと思うけど、今の俺にはそうは思えない。
だって、こんなにも体全身が熱いのは生まれて初めてなんだからさ。
「…………っ」
もう一度繰り返すけど、現在は教室。
俺は一人の女生徒に向かって、一世一代の告白をしている最中だ。
頭を下げて、右手を差し出す。
緊張で手汗が滲むのが伝わってくるけど、そんなもの気にしてられない。
入学早々友達作りに失敗した俺だけど、好きな子に想いぐらいは正直に伝えたい。
一目惚れは、生まれて初めてだからさ。
「…………」
俺が告白した女生徒、それはこの学園の誉れ高きアイドル。
名前は
茶髪のショートボブで、一見茶目っ気に見えなくもないけどその実中身は聖人だ。
誰にでも分け隔てなく優しく、スタイルも抜群。
肌は上質なシルクのように真っ白で、何よりも彼女の笑顔は理性を崩壊させる。
……そんな涼川さんは、現在俯いていた。
周りの生徒たちは俺が告白したことに驚いたのか、はたまた返事を聞き逃さまいと集中しているのかは分からないけど、凄く静かだ。
物音一つとすらない。
まるで時が止まったかのような錯覚すら覚えてくる程だ。
もうダメかと、やっぱり俺なんかが告白なんか片腹痛いし、何よりも釣り合わないよな……なんてマイナス思考を働かせていたその時――
「わ、私もね……涼くんのこと……実はずっと前から好きだったの」
あ、俺の名前は
……いま、俺の名前言ったよね?
「だ、だからね、その……良いよ」
「…………へ?」
その言葉を聞いた瞬間、俺は目をこすってから現実をもう一度確認する。
目の前には頬を赤く染めて、もじもじとしている涼川さんが一人。
周りには目を大きく見開いて、腰を抜かす生徒たち。
「今日から、よろしくね……涼くんっ」
俺の手をぎゅっと握って、恥ずかしいのか目を逸らす涼川さん。
俺は嬉しいを通り越して、気絶しそうでたまらなくなっていた。
今日から俺たちは晴れてカップル。
ゴミみたいな俺と、女神の様な涼川さん。
(よし、まずは明日から一緒に登下校だ!)
――まあ、この日から一か月の間、彼女とは一言も話せていないんだけどね。
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