再会、そして・・・

勝利だギューちゃん

第1話

ここは・・・どこだ?

俺は確か・・・


「気がついた?」

「えっ?」

声のするほうに目をやる。


「君は、小内さん?小内奈美さん・・・」

「覚えてくれたんだ。久しぶりだね、湯谷栄治くん」


クラスメイトだった、小内奈美(こうちなみ)さん・・・

確か、仲は良かったと思う。


でも、去年の暮れに交通事故で・・・


「そこから先は、言わないで・・・」

人差し指を唇にあてる。


「君がいるって事は、ここは、あの世?」

「外れ。この世とあの世の境目よ」

「三途の川?」

「当たり」

拍手をされるが、嬉しくない。


「びっくりしたよ。どうしてここへ来たか覚えてる?」

「確か、道で突然倒れて・・・」

「うん。駆けつけてきたら、君だったもん。驚いたよ」

いたずらっぽく笑う奈美さん・・・


生きている頃と変わっていない。


「で、どうしてここへ・・・俺を迎えに来たのか?」

「ううん。その逆」

「逆?」

どういうことだろう・・・


「君を止めに来たの。君はまだ、あの世へ行ってはいけないわ」

「えっ」

「まだ、君が来るべきところではない」

「どうして?」

「なら訊くけど、君はこの世に、未練はない?」

言葉に詰まる。


確かに未練がないといえば、大ウソになる。

でも・・・運命だとしたら・・・


「君はまだ、あの世へ行ってはいけないわ」

「えっ」

体をポンと押される。


「奈美さん?」

「君はすぐに、意識を取り戻す」

「な・・・」

笑顔が遠くなって行く。


「叶えて、君の夢を・・・」

「夢?」

「何十年かしたら、また私が生きていた頃のように・・・」

最後の言葉は、耳に届かなかった・・・


でも、無意識のうちに何かを掴んでいた・・・


目を開ける。

ここは・・・病院・・・


横を見ると妹が寝息を立てている。

看病してくれてたんだな・・・

頭を撫でる。


手を見ると、何かを掴んでいた。

「これは、リボン?」


奈美さんに押された時に、何かを無意識のうちに掴んだが、

リボンだったのか・・・


「まだ、君に助けられたな」

部屋の窓から外を見る。


雲の形が、奈美さんの笑顔に見えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

再会、そして・・・ 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る