◇梅原探偵事務所◇

天然水

第1話(1)「探偵との出会い」

「成功報酬、紀州南高梅3キロでどう?」


空間に混乱が起こる。

この言葉を発したのは、まるで御伽噺に出てくるような王子様系イケメン―梅原皐月。そして、只今混乱状態の少女―夕崎蒔。

突然謎の言葉を浴びせられ、理解が追い付かない蒔は、開いた口がふさがらなかった。


事の始まりは2週間前。親友が失踪してしまったこと。その親友―八神瀬里奈と蒔は、幼稚園からの幼馴染だった。瀬里奈は八神コーポレーション社長の娘だった。容姿は黒野ストレートロングヘアーに、同じく黒い大きな瞳と長い睫、おまけに身長は170センチもあり、驚く程ハイスペックな女子である。だが、彼女はクラスメイトから「お高くとまってる」「人を見下している」などと思われ、人と接するのを拒んでいた。

しかし、蒔だけは違っていた。

瀬里奈のことを無垢に受け入れ、いつも瀬里奈の味方でだった。そんな蒔に瀬里奈はだんだんと心を開いていった。だからこそ、蒔は瀬里奈の失踪の真相を突き止めたいのだった。

蒔は幾つかの探偵事務所を訪ねてみたのだが、中3ということが伝わると、まともに話を聞いてもらえないどころか、事情を話すだけで追い払われてしまっていた。

そんな時、蒔の友達―結谷琴から、とある探偵事務所の話を聞いた。

『ねぇ、この探偵事務所訪ねた?梅原探偵事務所って言うんだけど。』

『訪ねてない…けど…何か特別な探偵事務所なの?』

琴の言葉に、蒔が問い返す。

『それがさぁ、どんな依頼をお受けします、ってキャッチコピーがあるうえ、代金が無料って噂だよ!』

あまり瀬里奈と話さない琴が、そんなにテンション高めで話してくるので、蒔は押され気味だった。だが、蒔は『どんな依頼でもお受けします』のキャッチコピーが、脳裏から離れなかった。

『本当なのかな…でも、それは行ってみないと分からないことだよね。とりあえず行ってみるよ!』

『そうこなくっちゃ~場所は千代田区のELECTRICってビルの、七階らしいよ。私も一緒に行きたいところだけど、その日はちょうど予定が…』

『大丈夫。一人で行ってくるよ。場所教えてくれてありがとね!』

蒔は、翌日行ってみることにした。

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