異世界奴隷転生——因果応報編——

みし

因果応報編

 俺は水立甲だ。白いモノには目の無い芸術男だ。

 今日もSNSで、「タバコ屋、酒が合法なのに白いモノがダメなのは首相の所為だー白いモノは安全だって海外でも言ってている」と書き込んでやった。書き殴るとスッキリしたので白いモノをやる。こいつは昨日仕入れた超上物だ。一発キメると天国に飛ぶと言う。こいつを大量にキメてやろう。そう思うと早速準備を始める。


 すげー気持ちいい……そのまま意識は宙に飛ぶ。


 ……

 ……


 ふと目覚めるとそこは河原だった。俺はで白いモノをキメていたはずだが、とにかくひたすら石ころが転がっている河原だ……。

 老婆が立っていた。俺をじっとガン見している。

「おい。ババァなにみてんだよ」

「ひゃはは、これは生きの良い死人だねぇ……ところで六文銭はもっているか?」

 老婆はけたたましく不気味に笑う。薄すら寒い思いが背中をなぞる。

「六文銭……いつの時代の話だよ。ババァ。ここは江戸時代かよ?」

「ふん、渡し賃すらもってないとはね。変わりにそこで石でも積んでるかい?」

 見ると子どもが沢山おり、石をひたすら積んでいた。石が積み上がりそうになると周りを囲んでいる鬼がそいつを蹴り飛ばす……子どもはそのざまを見ながら死んだ魚の目をしながらまた石積みを始める………こいつは鬼の所業だ……いやこいつは鬼だから良いのか。

「まあ、いいわい変わりになるものはあるんかね」

「こいつはどうだ。上質の粉だ。グラム1万くだらんと思うが?」

「ふん……こっちでは一文にもならんやつじゃねぇ。まぁ、お前さんの場合またここに来るだろうし、今回はツケにしといてやろう。ふひゃひゃひゃ」

 また老婆の高笑いが虚空に響く——しかしツケ?もう一度……頭がもやっとしてよく分からねぇや……。

 とにかく老婆は船に案内すると、そのまま俺はそれに乗れせされられた。

 そこには閻魔大王と自称するイケメン野郎が立っていた。見ただけでわかる。こいつは絶対リア充だ……。リア充●●すべき……。

「その面で、名前が閻魔大王、アンタ名前のセンスねぇな」

「それはどうでもいい。判決を下す。地獄に行くにはまだ早いな。異世界送りでどうだ?」

「判決?地獄?異世界?何言ってるんだ……何逝かれているんだおまえら」

「逝かれているのはお前だ。獄卒どもさっさと連れて行け」

 俺の周りを小鬼が囲むと俺を担ぎ上げて連れ去っていく。簀巻きにされたまま俺はなすすべも無く大きな穴の中に投げ込まれたのだった……。


「ひゃひゃひゃ、今回も生きの良い若造でしたな」

「しかし、異世界送りの判決が多すぎるな……。少しに獄卒調べさせておくか……獄卒。ここ十年の判決の傾向を分析してこい……必要なデータはこれとこれと……」

「そのデータは何処にあるのでしょうか」

「そいつはクラウドに保管してあるぞ。サーバー天国に置いてあるけどな。まぁアカウントを発行しておく。それから端末とソフトは準備してある」

「はあ、あいてぃと言うものをやらないと行けない訳ですか」

「もうすこしするとえーあいとか言うものも入るらしいぞ。死人が増えたのに閻魔大王が不足していてな。一部をAIが代替するらしいぞ」


 そんな会話が繰り広げられているころ、俺は見慣れない大地で目が覚めた。

 目が覚めると周りに見知らぬ服を着た見知らぬ男達に囲まれている。

「おい、お前等なんだよ……そもそもここはどこだよ教えやがれ」

 男達は俺に槍を突きつけると巻き簀にした。

 男達に俺を地下牢らしきものに放り込んだ。


 しばらく俺は地下牢の中で過ごした、出てくるものは水と白いモノだけだ。どうやらこいつらの奴隷らしい。奴隷といっても牢屋でゴロゴロしているだがな。しかし、この白いモノは俺の居た世界より遙かに上物だ。少し摂取だけで夢心地じゃねぇか……これはこれで良い暮らしじゃねぇか……その時の俺はそう思っていた。

 何日もそう言う日が続く……。

 時々、男達がやってきて、俺にムチを浴びせていく。最初は痛さで悲鳴を上げていたが、段々そんな気持ちも無くなっていた……。そもそも痛みなど感じやしねぇ。この白いモノさえあれば全部大丈夫だ。

 もっと白いモノが欲しい……。そいつが俺の頭の中の十割を占めていた。だが奴らは毎日一定量しか寄こしやがらねぇ。

 ある日「いいから、そいつをもっと寄こせ」と詰め寄ってみた。

 そうすると男達は頷きあい……俺を牢屋から出して、祭壇らしき所に連れて行った。

 そこに立っていた男は俺が敬愛する元首相ソックリの顔をした男だった。

 元首相ソックリの男が手を上げると俺は取り押さえられて首を祭壇の上に押さえつけられる。

 それから上から斧が振ってくる。

 悲鳴を上げる間もなく俺の首が飛んでいる……。首からは赤い血がどろどろ落ちているのをはっきり見ていた……だがなんだが気分が良い……。そのまま意識が飛んでいく。


 目が覚めると……俺はまた地下牢に居た。どうやら夢だったようだ。

 男は水と白いモノを持ってくる。

 俺は白いモノを貪る様に摂取した……。やっぱりこいつは辞められねぇ。

 以前より白いモノの量が増えたようだ。もう少し欲しいがまぁ良いだろう……。

 それからしばらくすると、男達が祭壇らしき所に連れて行き、俺の首を斧で振り下ろした……。


 そして目が覚めるとまた地下室。このような生活が何百回も続いた……。

 流石の俺もおかしくなりそうだ……。だが、白いモノさえあれば何とかできるだろう。

 そう思っていたがとうとう耐えられなくなった。なんせ白いモノの量は一日摂取切れない量まで増量されている……これ以上摂取しても聞くわけがねぇ——もしかしてここのまま無限ループが続くのか——そう考えると絶望が闇を覆った。


 ……はっと目を空けると爽やかで最高気分だ……だが見回すと見慣れない景色が広がって居る。天井は白く、俺の手には点滴が打たれている。最高な気分で目覚めたのは確かだった。ぼんやりとした後景がはっきり見えるとそれはどうやら病室のようだった。そのうち看護婦がやってきて血圧と体温を測ると意識が回復したのをみて、もうじき医師がやってきて説明すると言う。医師の説明は良く意味が分からなかったが、何日も意識が目覚めないので病院に運ばれたそうだ。そして肝臓と腎臓の数値が滅茶苦茶だったらしい、胃洗浄を繰り返し、点滴でようやくここまで落ち着いたという……。しばらく治療が必要ですな。医師はそういった。

 俺は二度と白いモノをやらないと誓った……。


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