心に星を持つ男

大月クマ

あれは僕らの……

 彼の名前を覚えているだろうか?

 スーパー戦隊でもなく、メタルヒーローでもない、もうひとりのヒーローのことを。

 今回のお題『最高の目覚め』

 〝カタルシス〟で、ピンと来たヒーローだ。


 誰だって?


 まあまあ待て。

 別に焦らさなくても分かる?


 では、名前を紹介しよう。


 マシンマンだ!

 星雲仮面マシンマン。


 知っているか?

 なに知らない?


 では、説明するので、読んでほしい。

 なぜ、〝カタルシス〟と彼が関係あるのか。


 彼の名前はニック。プレアデス星団アイビー星からやって来た異星人だ。

 その星の大学生四年生で、卒業論文で他の惑星のレポートを書くために地球を訪れたのだ。ところが、子供が大嫌いな天才科学者プロフェッサーKが、その頭脳でただ子供をいじめて喜んでいた。


 ヒーローだから、子供がいじめられるのが許せない?


 いや、彼は違う。

 最初に出会った地球人、女性カメラマン葉山真紀のためだ。

 当初は異星人のサンプルのつもりで接していたが、徐々に好意――私の見解では、一目惚れだったような――を抱くことになる。この女性がスクープを求めて走り回り、どうしてもプロフェッサーK率いる組織テンタクルの事件に巻き込まれるのだ。

 そして、毎回ピンチになる。

 そのピンチを密かに観察していた彼が、マシンマンとなって救う――マシンマント命名したのは彼女で、ニックも気に入りその後名乗るようになる。正体を隠して……。

 彼女に好意を抱いているニックは、高瀬健と名乗り、当初は1週間だった滞在予定期間を延ばし、用心棒として長期滞在を決意するのだ。


 ここまで来て、まだ〝カタルシス〟の話をしていない。


 マシンマンの武器、レーザーサーベル。

 犯罪組織テンタクルが送り込むのは、決まってロボットと犯罪者。この組織の力を持ってすれば、世界征服も容易いのだが、プロフェッサーKは全く興味を見せない。ただ単に、子供をいじめ、悲しませ、泣き声を上げさせることに全ての力を注いでいる。ロボットであるアンドロイド兵士――低予算が嘆かわしい――が、片腕のみ個性的なパーツを付けた量産型だ。

 マシンサーベルでの必殺技・マシンサンダーはアンドロイド兵士には、『Z』字に斬りつけ破壊する。だが、人間である犯罪者には『M』斬りつけて気絶させることが出来る。


 そう殺さないのだ。


 そして、気絶した犯罪者には、掌から発射される人間の悪い心を善に変える光線。


 〝カタルシスウェーブ〟


 ここでようやく〝カタルシス〟が出てくるわけだ。

 気絶させた犯罪者はカタルシスウェーブを受けると、悪行を激しく反省し警察への自首をほのめかすのがパターンとなっている。

 つまり彼等にとって、〝カタルシスウェーブ〟は〝最高の目覚め〟を提供してくれる。

 それは、テンタクルが壊滅――プロフェッサーKを演じた天本英世自身の、毎年恒例で行うスペイン旅行の都合――し、新たに現れたオクトパスに対しても姿勢は変わっていない。


 ヒーローであっても、人の命を奪わない姿勢が私は好きだ。

 長ったらしく、書いたがそういうことだ。

 知っている人には、知っている。

 星雲仮面マシンマン。


 この物語の最終回は……。

 ニックの卒論の提出期限が近付いたため、手っ取り早く犯罪組織を壊滅させて、正体を明かさないままアイビー星に帰って行くというモノだ。

 まあコメディタッチなところも、私は好きだ。


 その後、アニメ『ゲンジ通信あげだま』で、異星人の主人公が夏休みが終わったから、と帰ってしまうのも、オマージュではないかと思っている。


 ところで、ニックはその後どうなったか?

 最終回で、葉山真紀に「長い旅に出ます。きっと戻ります」と手紙を残したが……。

 今は外国で、中古車ディーラーをやっているようだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

心に星を持つ男 大月クマ @smurakam1978

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説