第41話:婚約式
柔らかな日差しが獣人族の王城を優しく包み込み、晴れやかな祝典を祝って居るようだ。
式典が行われる謁見の間にはエルフの王女、天使の皇女、魔族の王子そして精霊王たちがアリスの登場を今か、今かと待って居た。
「アメリア皇女、アリスフィーヌ嬢のドレス姿を見て来られて居るのでしょう?」
「えぇ、それはそれは美しい姫君になって居ますわ」
精霊に愛され妖精に愛される魔術を極めた人族。
本来なら獣人の王子との婚姻を認めたくない者も居る。
ウィルの婚約者として候補に挙がって居た公爵家からも代表がアリスを値踏みする為とばかりに構えて居る。
アース国から国王や王妃は招待されて居ない。が、王妃がアース国の侯爵令嬢として紛れ込んで居るのにアイザックたちも気づいて居た。
(確かアースには参加を許しておらなかった筈)
(えぇ。王妃としてではなく、あくまでもアースの侯爵令嬢として来たみたいですわ)
アリスを強引に連れ帰る可能性も無いとは言い切れない為、アイザックとマギー、アメリアはメイフィスの動向を注視して居る。
「大変長らくお待たせ致しました。只今よりウィル王子とアリスフィーヌ様の婚約式を行います。お二方の御登場です」
入り口の扉がキー・・・と言う音と共に開かれ正装に身を包んだウィルと、桜色のドレスを纏ったアリスが入場して来る。
その姿は拒否を宣言するつもりだった者たちすら魅了して行く。
マデリーンが使った魅了の魔法などではない、アリスが纏う美しきオーラが参加者全員にも見え更に、森の妖精たちが花々を持ってアリスたちの周辺を飛び回り、幻想的な風景を作り出して居るのだ。
「これは何と美しい光景だろうか」「噂には聞いて居ましたが妖精に愛されし令嬢でしたのね」
ニコニコとアリスの美しい姿に笑みを浮かべる妖精王と精霊王たち。
アリスの無事な姿を見たメイフィスは感極まり暴走し掛ける。
(あぁ!アリスフィーヌ様は御無事だったのですね!?どうにか・・・どうにか我が国に戻って頂けるよう働きかけ・・・られませんわね。
暴走せずに済んだのは、彼女が冷静さを保って居たからに他ならないが、それが抜けてしまえばレンシルを除いた王族、全てが暴走してしまって居ただろう。
「ここに我が息子ウィルとアリスフィーヌの婚約が成立した事を宣言する!」
「「「「おめでとうございます」」」」
一斉に祝辞が述べられるとウィルは騎士の礼で、アリスは淑女の礼で
「「ありがとうございます」」
と感謝の意を表した。
「ウィル。アリス嬢を幸せにするのだぞ?」
「勿論、誓ってヴァカス王子のような事は有り得ません」
アース国のヴァカスが何をしでかしたのかを参加者全員、周知して居る。
稀代の魔術師として噂されて居る令嬢とウィルの婚約。
誰も拒否する事なく婚約は成立したのだった
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