第25話:残された懸念
* * * *
闇の精霊から風の精霊に伝わったアース王城での出来事は、それぞれ配置について居た王族へも伝わって行く。
真っ先に伝わったのは魔族の部隊。
「アース王城で王妃様と第一王子の手により危険は回避されたとの事、何事も起きる事なく戻れるのは有難い」
「アイザック様、戻られますか?」
「ああ、苦労を掛けてしまったが、戻ろう」
「「「「「はっ!」」」」」
最悪の事態を避けるべく動いて居た一行では有るが、王城にて最大級の雷が落とされたと知れば、おのずと危険が回避された事は周知できる故の撤退。
「流石はメイフィス様だな。賢き王だと言われて居たギルヴィア様だが、今回の事柄が公表されてしまえば評価は落ちてしまうな」
それほど進行して居なかったとは言え、軍を動かして居たアイザックは先代のアース王が懸念して居た出来事が回避されて良かったと胸を撫でおろす。
エルフ族にも王城の出来事は伝わり、緊張感を保って居た一行の力は抜け、馬鹿さ加減に口も軽くなって居るだろう。
そしてウィルソン邸を守って居た天族も天界へと戻って行った。
* * * *
「メイフィス王妃の英断が無ければアース国は、先代王に顔向けなど出来ぬ事態となって居たで有ろうな」
「お爺様・・・」
「アリス、そなたが幸せになれるのならウィル王子に託したいと思う。エヴァンスは爵位を剥奪し平民となっておるし、マデリーンとか言う女性は王城の塔で幽閉されておると聞き及んだ」
「これまで、マデリーン様が動かれないのが逆に不思議ですわ」
そう、一番警戒しなければならない相手が1人、残って居る。
魔法封印の塔で幽閉されて居るマデリーンが何も事を起こして居ない事が不気味なのだ。
次男ばかりでは有るが王子に手を出し、宰相の息子に手を出し、団長の息子、魔法師長の息子・・・4人もの男性に粉を掛けて何がしたかったのかが判らないのだ。
「確かにのぅ・・・。
まさかの事態が起こる事になろうとは、この時、誰1人として気づく事は無い。
何故なら、彼女が【ここが乙女ゲームの世界】だと信じ切って居るからこそ、【シナリオ通りにならない事態を軌道修正】する為の行動に出る事になる。
彼女にとってはゲーム世界だと思って居ても、ここは現実世界。
その事に彼女が気づけば回避も可能なのだが、こればかりは回避不可能な事態なのだ。
「それだけでは有りませんわ、お爺様。父上が簡単に後妻を連れ戻った事も不思議では有りませんか?」
「・・・まさか・・・アイリスの死も誘発されて・・・?」
「居るかも知れませんわね」
アイリスが病気を患う前は、政略とは言え子供が生まれるのを楽しみにして居たエヴァンスが、急に態度を変え自宅に寄り付かなくなった。
娼館に通うようになる「きっかけ」が有るに違いないと踏んだのだ。
「・・・可能性は有るとして何故だ?」
そう何故盛る必要が有ったのか?が未だ不明では有るが、マデリーンが行動を起こす事によって全てが判明するまで、あと少し
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