第11話:計画的な仕返し1


 * * * *


 ウィルたちと共に獣人族の王城へと向かったアリスは、歓迎され迎え入れられた。


「ようこそアリスフィーヌ・セレンティア嬢。話はウィルから聞いて居ます。大変な目に遭いましたわね」


 そう声を掛けてくれたのは何とウィルの母ジュリア。


「お、王妃様、このように迎え入れて下さって有難き幸せに存じます」


 大慌てて最大級の挨拶をしようとするのだが、


「アリスフィーヌ嬢、普通で構わぬ」


 王の言葉によって遮られ、そこには第二王子も居るのだ。


「そう、おっしゃられますが、わたくしは冤罪とは言え罪を犯したとされる身。このような出迎えを受ける理由が有りませんわ」


「十分に有りますよ」


 ジャン王子が何故、王家がこぞって出迎えたのかを教えてくれる様子が伺えた。


「ジャン様?」


「ウィルにも風の精霊が力を貸してくれて居てね、いち早くアリスフィーヌ嬢が理由も無く断罪され国外追放されてしまった、と伝わって居たんだ」


「ま、まぁ・・・」


「ウィルがアリスフィーヌ嬢を保護し、人族以外の全てでヴァカス王子に仕返しざまぁをしようと計画したんだよ」


「勿論、わたくしも手を貸させて頂きますわ」


 マギーが口火を切る。


「私もヴァカスには痛い目に合って貰わねば気が済まぬ。アリスフィーヌ嬢の反論すら許さなかった態度、あれは王子として許される範疇はんちゅうでは無い」


 アイザックは怒りを露わにして、拳に力が入ってしまう。


「マデリーン嬢の行動が信じられなかったですものね。何かしら策を講じてヴァカス様たちに近づいたとしか思えないですものね」


 アメリアはマデリーンが何かしたのだろうと、推測した。


「取り敢えずは皆、座って話した方が良かろう?」


「「「「「あ・・・」」」」」


 アルフレットの指摘で立ったまま意見を交わして居た事を思い出した一行は、用意して有るソファーに腰を下ろした。


「まずアリスフィーヌ嬢、そなたは魔術を得意としておったな?」


 王が会話の進行役を務めるようだ。


「はい。わたくしは魔術を極めるべく学園でも学びましたわ」


「そなたですら感じぬ魔法が掛けられて居た、と言う可能性は?」


「ヴァカス様や宰相様の次男、騎士団長の次男、魔法師長の次男にですか?」


「そ、そんなに?」


 3人だけでは無いのだが、アリスが気づいて居る人数は学園で関わった者だけ。


 自分の父が魔法によってマデリーンを愛するよう仕向けられて居るとは気づいて居なかった。


「学園でアリスフィーヌ嬢を断罪するにあたり、関わった者たちは、その3名です」


 ウィルが補足する。


「魔法ならば1人1人、掛けて行った・・・と言う事だろうな」


「ですがアルフレッド王様、わたくしの鑑定では見えませんでしたわ。もしかすると見えない魔法が掛けられて居たかも知れませんが・・・」


 その言葉を聞いて王妃が思い当たる魔法に気付く。


「まさかとは思いますが・・・禁術とされて居る・・・魅了の魔法では?」


 全員が顔を見合わせ「はっ!」とする。


「その魔法なら合点が行きます。アリスフィーヌ様が何度もマデリーン嬢をたしなめたと、おっしゃられて居ましたが、それすら聞き及んで貰えなかったと。まあマデリーン嬢が脳内花畑ならば、と言う前提ですが・・・」


ウィルがマデリーンが脳内花畑状態だと見抜く。


 なるほどな・・・と顎に手を当て思案するアイザック。


「魅了の魔法ならば鑑定を阻害する事も容易いだろう。そうなれば3名ともに魅了された状態で断罪に加わった・・・と見なければならぬな」


「ですが一体、何の為にでしょうか・・・」


 アリスの疑問は最もで有る。


 何しろマデリーンが乙女ゲームのヒロインでアリスが悪役令嬢だ、と言う事を「誰も知らない」のだから。


 ここはゲーム世界では無く、実際に存在する世界・・・その事に気付いて無いのはマデリーンだけで有る

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