第9話:拘束(魔法)からの解放

 レンシルが気づいた少しの違和感・・・その正体が魔法では?と思ったからこそ魔法封じのかせをマデリーンに嵌めたのだ。


「はっきりとした事を言えないけれど、君たちは彼女を魔法でみたいだね」


「レンシル、もしや・・・」


「えぇ、阿呆な弟掛かって居たのでしょうね。父上から魔法を込めた怒りで解けてしまったみたいですからね」


「まさかとは思うが・・・魅了の魔法・・・?」


「禁術の魔法ならば早急に対策をしなければなりません」


 そう声を発したのは宰相。


自分の息子や騎士団長の息子、魔法師長の息子たちが「しでかした失態」に怒りしか沸いて居なかった。


「魔法封じの塔への幽閉は勿論の事、二度と使われないよう枷では無い道具の開発も必要ですな」


 宰相の言葉を聞いた魔法師長の次男が


「み、魅了の魔法と言うのを知らないのですが、どのような効果を持った魔法なのでしょうか」


 と聞いたのだが、彼は魔法師長の息子。


 それすら気付かないとは・・・と思われても仕方ない事だった。


「・・・魔法師長の息子とも有ろう者が、何の為の勉学なのだ?」


「うっ」


 至極当然の事を言われて、ぐうの音も出ない。


「ヴァカス様」


「は、は、はい?!」


 いきなり話を向けられ挙動不審となるのは第二王子として、どうなのか・・・と言いたげな宰相。


「マデリーン嬢と出会ったのは学園ですな?」


「はい。彼女の方から昼食を誘われたのが最初です」


「彼女に好意を寄せている、と自覚なさったのは?」


「・・・それが判らないのです。何故、彼女に好意を持ち婚姻したい、と望んだのか全く持って、そうなる要因に心当たりが無いのです」


 記憶すら操作されたのか・・・?とは思うものの、専門家が未だ到着して居ないので何とも言い難かった。


「お待たせして申し訳ない。我が愚息が勉学を怠っただけでなく、自らも魔法の支配下に置かれるなど・・・鍛え直す必要が有るようだ」


 ギロリ・・・と親から睨まれた次男は「蛇に睨まれた蛙」状態。


「魔法師長、そのくらいにして・・・。彼らが未だ魅了されておらぬか判断できるであろうか?」


 即座にブツブツと詠唱を唱え調べると綺麗に魔法が解除されて居る事が発覚した。


「・・・どうやら皆、呪解されて居るようです。魅了魔法は恋愛関連の事柄のみに反応する魔法ですので精神には影響ないかと」


「そうか」


「アリスフィーヌ嬢の迎えを・・・」


「無駄でしょうな。彼らがアリスフィーヌ様を魔の森にのは2時間ほど前・・・で御座いましょう?」


「ああっ」


 その事実に王妃は嘆き、王は「しでかした」ヴァカスに飽きれ頭を抱えた。


「魔法封じのかせすら嵌って居なければ、望みは有ったかも知れないですね。その逃げ場は馬鹿によって阻まれてしまいましたけれど・・・」


 兄にジト目で睨まれたヴァカスは、肩身が狭い。


 そうしてしまったのは自分では有るが、魔法によって判断が出来ない状態にさせられて居た。


 情状は酌量される知れないが、起こしてしまった事態は戻す事は不可能なのだ

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