anti-killers ~Another Side of KillerSS~

@strider

Lesson01 最初の記憶

 思い出すことのできる一番古い記憶は血みどろの惨劇だ。の亡骸と、もはや原型をとどめていないを、俺は狭い箱の中から眺めていた。


 そこからしばらく、俺の記憶は黒く乗り潰されていて、次に思い出せるのが、オアシスと呼ばれる施設での記憶だ。



 当時の俺はまだ十歳になったばかりだったと思う。その施設は砂漠の真ん中に立っていて、三階建ての小屋のような場所だった。小屋とは言うが敷地はだだっ広くて、一階は何もない体育館のようなスペースで、二階には食堂やトレーニングマシンや風呂があって、三階は宿舎になっていた。


 宿舎には二十ほどの部屋があって、それぞれに四人の子どもと、一人の監督者が入居していた。監督者は準構成員ミドルと呼ばれていて、その二十人が施設の管理を任されていたが、年齢は俺たちとたった二、三歳しか違わなかった。


 俺たちの日常は社会勉強と訓練に費やされた。


 社会勉強では、教材の映像を見せられて、いろいろな国の言語やマナーなどを中心に学んだ。これは楽しかった。勉強のあとであるテストに合格すれば、飴玉やチョコレートがもらえたからだ。

 訓練はきつかった。準構成員ミドルに指示されながら筋力トレーニングをしたり、施設オアシスの周辺を走ったりする基礎訓練や、部屋ごとにグループを作ってグループ対抗試合をする格闘訓練、エアガンを用いた射撃の練習、ゴムナイフでの切り合いなど。準構成員ミドルたちは俺たちを徹底的にしごき、訓練の日の夜は、宿舎のある三階まで階段を上がるのも辛いほどボロボロになった。


「今日は模擬戦リアルファイトをする!」


 週に一度、本部から構成員ボディが様子を見に来て、食料や医薬品を置いていくのだが、彼らはまれに模擬戦リアルファイトをするように俺たちに指示した。


 ドスッ、ドッ、ドスッ。腹や背中を殴打される音。


 ジュッ、ビッ。ゴムナイフが肌をこすり、皮膚が焼ける音。


 パスッ、パスッ。エアガンの玉が皮を弾けさせる音。


 模擬戦リアルファイトは防具なしで行う真剣勝負だった。五人一組で別のグループと戦って、どちらかのグループの全員がギブアップするまで行われた。


 きつい訓練にも俺は音を上げたことがなかったが、この模擬戦リアルファイトだけは大嫌いだった。相手が泣き喚いていてもギブアップを宣言するまで執拗にいたぶり続けなければならないのも苦痛だったが、だからと言って自分がギブアップすることもできなかった。

 負けたグループは準構成員ミドルともども構成員ボディから酷い叱責を受ける。たいした怪我もないのにギブアップした者には、激しい折檻が加えられた。それから三日ほど施設オアシスの二階にある反省室ハングリーに閉じ込められて、食事も与えてもらえない。模擬戦リアルファイトで負った傷を癒すために、包帯や消毒薬だけは差し入れてもらえたので、消毒用のアルコールを飲み酔いで空腹を紛らわす者が多かった。

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