白銀の魔導士は報告書がお嫌い

としぞう

第1話 天使の目覚め

夢を見ている。




真っ暗な空が見える。その空はゆがんでいる。

いや、ゆがんだ地平線が見えるから、空がゆがんでいるように見える。

地平線?いや、これは前にも見た、水平線だ。



眼前には雲が流れている、灰色の雲だ。

雲の切れ間から、暗い海が見える。



頭上には銀色の月。とても気持ちの良い光を浴びて、私は空を飛んでいる。

景色は猛スピードで後ろへ流れている。

耳元で、風が切る甲高い音が絶え間なく響く。


甲高い、不安定な音。


水平線が白く光り、突如目の前が明るくなる。

太陽が現れた。


そうか、これで終わりか、、、


そう思うと、体中の力が抜け、水平線へ向けて堕ちていく。

雲を突き破り、真っ黒な海にめがけて堕ちていく。


アンッ!


少女の体がビクリとはねて、目を覚ました。


「うーん、気持ち悪い~」


透けるような白い肌、首筋に細い髪の毛がまとわりつく。

少し、汗をかいている。


「なんか変な夢を見た。でも、なんだっけ?」


変な夢をみて目覚めたが、内容は覚えていない。

目覚めが悪いのは、いつものこと、そしてどんな夢かは、いつも覚えていない。


ベッドから出て、シーツと枕カバーをはがす。

部屋の隅にあるかごにそっと入れる、


「今日は洗濯しようかしら。」


冷たい床を素足であるくと、ピタピタと薄暗い部屋の中に足音が響く。

眠たげな顔の少女は、ワンピースのパジャマを脱ぎながら、窓のほうへと歩いていく。


シェードを上げると、窓から白い光が部屋に射し込む。

ほんの一瞬でいままで色のなかった部屋が、白く輝きだす。


漆喰を塗った白い壁にわずかに混ざる微細な石英質が朝日を反射する。

反射する光は、部屋の中の影をキラキラと照らし出す。


窓辺に立つ白い背中は、窓の光を浴びて逆光で黒い影を作っていた。

部屋中を走り回る光の粒子は、少女の背中を、夜空の星のごとく輝かせ始めた。


ほんのりと産毛をまとった肌は、周囲に光を蓄えたかのように、その輪郭を輝かせる。

透きとおる肌の白さをひと際目立たせているのは、黒い髪。

風に揺らぎながら、白い光受けて白銀の帯をその黒髪に走らせる。


秒速299,792,458メートルの光の粒は、1秒と掛からずに白銀の天使を部屋の中に照らし出した。


窓の外は快晴。


「うーーーん、いい天気。」


背筋を伸ばしてからいっぱいに朝日を浴びて小さく一息つく。


私の名前はカオリ。

12歳の女の子です。


今日は休日だけど、早起きはやはり気持ちがいいわね。

おまけに天気が良いと、気持ちよさも2倍。得した気分ね。


いつもは、すこしだけ仕事をしているわ。

そう、こんな歳でも働いているのよ、大変ね?とよく言われるけれどそんなことないわ。


私は今の仕事が苦じゃないの、だって楽しいのよ。


そんなことより、朝ご飯にしましょう。

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