12・感無量の一言に尽きる
ラーズさまと一緒に旅を始めて一カ月が経過した。
路銀を隠した残り二個所を回った後、オルドレン王国から南に位置する隣国のドゥナト王国に渡り、そこにある
もちろん、クレアという偽名で。
しかし冒険者登録希望者は脛に傷を持つ者が多いため、身分が明確でないと登録できない。
冒険者登録希望者が私の様な逃亡者と言う可能性もあるし、登録した冒険者が罪を犯せば、冒険者組合の信用に関わる。
ただし、他の冒険者が保証人になって貰えれば話は別だ。
他の冒険者が身元保証人になれば、偽名でも登録できる。
そして私はラーズさまに保証人になっていただいた。
保証人はランクC以上であることが条件だったが、ラーズさまもランクCだったので問題はなかった。
ちなみに、ラーズさまの実力ならランクAでも不思議ではないそうだが、冒険者となってからまだ一年と 経験が浅いので、ランクCに留まっているという。
しかも実績を積むにしても、それだけランクの高い依頼は滅多にないそうだ。
だから、必然的にランクアップのチャンスは少なく、だからなかなかランクが上がらない。
私が冒険者として登録するにあたって、当然 試験はあったが、筆記試験はもちろん、実技試験もなんなくクリア。
だてに魔法学園を卒業してはいない。
護身術も真面目に受けておいて良かった。
剣筋が良い、さすがラーズさまの推薦だと、試験官から褒められたくらいだ。
それに魔法が使えたことも大きなプラスになった。
魔法が存在するこの世界だが、当然のことながら、魔法使いの数は多くない。
魔法が使えるだけの強い魔力を持つ者が少ないのだ。
たとえ私のように中級までしか使えなくとも、魔法が使えるだけで、様々な仕事に有利に働く。
結果、登録したばかりの冒険者はどんなに強くても、様子見を兼ねてランクFから始まるのが通例だが、筆記試験が満点だったこともあってか、私はラーズさまと一緒に働くという条件付きで、特例で一つ上のランクEからスタートできた。
合成魔法については伏せておいた。
こんな特殊な魔法、他の人に知られたら、リリア・カーティスやリオンたちに伝わってしまうかもしれない。
そうなれば、あの女はクレアと名乗っていることに気付く可能性がある。
用心に越したことはない。
でも、これで私は晴れて冒険者の一人となった。
前世の記憶を思い出してから憧れだった。
魔物をバッタバッタと倒していく冒険者。
複雑に入り組んだ古代遺跡、迷宮、滅びた廃都を踏破する冒険者。
錬金術の素材を求めて山や草原、森を探索する冒険者。
それが現実に、自分がなれたのだ。
感無量の一言に尽きる。
冒険者組合に登録すれば、登録者は国を超えて身元が保証される。
そうして冒険者たちは、数々の仕事を引き受けることができるのだ。
その冒険者の仕事は大まかに分けて三つ。
調査。採取。そして、花形である討伐。
冒険者の能力や強さは、冒険者組合が仕事達成などの実績を査定してランク付けされる。
それは魔物の強さの基準にもなっている。
F。最低ランク。能力や強さはごく普通の一般人。
身元さえ確かであれば誰でもなれるようなランクで、剣も握ったことのないような人が多くいる。なんと、冒険者組合登録者の四割を占めている。しかし、採取の仕事では人海戦術が効果的なので、こういった人たちが重宝される。ただし危険が大きい討伐の依頼は受けられない。
E。一般的な兵士と同程度。
このランクも冒険者組合登録者の四割を占めている。一応、討伐の仕事を引き受けることができるようになるのはここから。
D。分隊規模の働きができると認められる。冒険者として一人前と認められ、本格的に働けるようになるのはこのランクから。
このランクの冒険者は、一般的な兵士を三人 同時に相手をすることができると言われる。
このランクに分類される魔物は、
C。小隊規模の働きができる。
このランクの冒険者は、普通の兵士の十人力と見られる。
B。中隊規模の働きが期待される。
普通の兵士相手に百人斬りが達成できると目される。
分類される魔物は、戦鬼や闘鬼、妖鬼などの
A。大隊規模。このランクは一騎当千と称される。
魔物の分類は、
ゲームではヴィラハドラはこのランクに分類されていた。そのヴィラハドラに勝ったのだから、ラーズさまの実力は、これより上のランクSと言うことになる。
S。師団規模。
万夫不当と畏怖される。
このランクの魔物は、
SS。一軍に匹敵する。これに対処できれば伝説の勇者と称えられる。
非公式にランクSSSと言うものがあるらしいけど、これは冒険者組合だけでは対処不可能と判断される事案らしい。
国の総軍を上げなければ対処できないレベル。
ランクSSでも不可能の様な気がするけど、一応対処可能とされる人物はいるということになっている。
そして、その人物は表向き秘匿されている。
表立たせればその人の日常が常に危険に晒されてしまうというのが理由だ。
腕試しに挑戦してくるのはまだ良い方で、暗殺など手段を問わない方法で殺害し、名を上げようとする者も出るだろうと。
普段は他の冒険者と同じく、冒険者組合から紹介される仕事をしているという。
当然、その仕事のランクは高いらしい。
魔王バルザックの復活が世間に明るみに出れば、こういった人物も動き出すだろうけど、ゲームでは登場しなかった。
そもそも現実の魔王バルザックがどういう状態なのかも分かっていないけど。
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