にゃんこカミングアウト

ポムサイ

にゃんこカミングアウト

 我輩は猫である。しかしただの猫ではない。齢100年を越えしっぽが2本になった妖怪『ネコマタ』だ。

 現在は野良猫という世を忍ぶ仮の姿でこの辺りをうろついている。

 

 我輩がこの界隈のボスになって今日で丸3年。これを期に皆に我輩の今まで黙っていた秘密を打ち明けるとしよう。

 

 我輩はいつもの小金井市立日の出公園へと向かった。時間は夜の9時…そろそろ皆集まっている頃だ。


 公園に着くと魚屋のミノキチが広場の真ん中でウ○コをしているところだった。

 アイツめ…ウ○コは家で済ませてくるか、やるなら端っこでしろといつも言っているのに…。注意せねばなるまい。


「おい!ミノキチ!そんな所でするんじゃない!!」


「ニャー。」


「我慢出来なかったって…。端に行く位我慢出来るだろ?」


「ニャニャ~。」


「ギリギリまで我慢して広い所でするのが開放的でたまらないのか……って確信犯じゃないか!!もう仕方ないからちゃんと砂被せておけよ!」


「ニャ~ン。」


「分かれば良いんだよ、分かれば。」


「ニャニャニャ~ン。」


「お!伊藤さんちのモカじゃないか。どうした?」


「ウニャニャ~ン。」


「え!?田中さんちのジロキチが事故に遭っただと!?アイツは無事なのか?」


「ニャニャ~。」


「…事故は事故でも生放送の動物番組に出演してお茶の間に肛門のアップをお届けしてしまった放送事故か…。いいな~我輩もテレビ出たいな~…って、どうでもいいわ!!」


「ニャー!」


「お~!さすが磯野さんちのタマ!分かってるな~。そう、今日は我輩がボスになってから丸3年の記念すべき日なのだ。そこで皆に聞いてもらいたい事があるんだ。」


 皆が注目する中、我輩は隠していた2本目のしっぽを出した。皆さぞかし驚いて…驚いて…あれ?


「おい…これを見て驚かないのか?」


「ニャニャ。」


「いやいや、別に余興のイリュージョンじゃないから。」


「ニャニャニャ~ン。」


「うん…。別に2本あっても邪魔じゃないよ。」


「ニャニャー!!」


「誰だ!!今、ド下ネタを言ったヤツは!!」


「ニャ~ン。」


「あっ、そうそう、実は今まで隠していたんだが、我輩はネコマタなのだ。」


「ニャニャニャニャ~ン。」


「マタって付いてるからって下ネタじゃない!ネコマタって知らないのか?」


「ウニャ!」


「あ、そう…知らない…。じゃあ、教えてやろう!ネコマタっていうのはな…」


「ニャー。」


「え?別にいいって…。」


「ニャニャ~ン。」


「コテツか。うん。オシッコはあっちの方でしておいで…って、いちいち許可取らないで行って来い!」


「ニャニャ!」


「お~、ミカンは驚いてくれたんだな!」


「ウニャニャ!」


「そんな事で皆が驚くと思っていた我輩に驚いているってか?…やかましいわ!!」


「ウニャ~…。」


「そんなんだからモテないだ…って誰だ言ったのは!!」


「ニャニャニャ。」


「メスネコに避けられてるの分かってないのかね~…って…そうなの?気付かなかった…。待て待て!!我輩はメスだぞ!」


「ニャ?」


「だからメスだって!」


「「「ニャニャニャニャニャーー!!」」」


「そこで驚くんかい!!って知らなかったのがショックだよ…。」


「ニャニャ~…。」


「誰だ!!今、ババアって言ったヤツは!」


「ニャー!」


「あっ、コテツおかえり!いっぱい出してきたのか……報告しなくていい!!」


「ニャニャ~。」


「え?今なんて?」


「ニャニャ~。」


「ボスの任期は3年?嘘?聞いてないぞ。」


「ニャ。」


「お疲れ様でしたって…ちょっと待て。本当に?」


「ニャニャ。」


「あ…うん。ありがとう。まあ、別にいいけどさ。次のボスは誰なんだ?」


「ニャ~。」


「え!?ミノキチ?アイツは公園の真ん中でウ○コするようなヤツだぞ!?いいのか?」


「ウニャニャニャ~。」


「あ~、アイツが飼われてるの魚屋だもんな。それをくすねてきてもらうと…。それはボスじゃなくてパシリじゃないのか?」


「ウニャ~。」


「似たようなもんだろ…って、お前達そういう認識だったのか?」


「ウカー!」


「どうしたミカン?」


「「グルォ…」」


「タマ?コテツ?…ミノキチ?皆どうした!!」


「「「キシャーーー!!!!!」」」


「大丈夫かーーー!!!」


「ニャ?」


「あれ?皆…あれ?しっぽが…。」


「ウニャニャ。」


「あ…うん。皆今日で100歳?」


「ニャニャ?」


「そう、それがネコマタ…。」


「ウニャニャ~ン!」


「さっきから下ネタ言ってたのはタマだったのか!!」


 我輩は猫である。世にも珍しい妖怪ネコマタである。いや、であったと言うべきか。現在この町内の猫のほとんどがネコマタになった。そして驚くべき事にこの町内は……


 なぁ~んにも変わらなかった。


「ニャ~。」


「めでたしめでたし…って、なんじゃこの話!!」


 

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