第12話 ばれとる……
とりあえず、ノアが私の家に滞在するはめになったのは彼らにとってイレギュラーなことだった。
ノアは私と結婚する気がない、だから此処に入れるのはタイムリミットがある。
私との婚約をノアが一方的にふいにしたとなれば、流石にノアはよほどのことがない限りもうマクミラン領へはこれない。
私は特に何かする必要はない、むしろ何もする必要はなく、のらりくらりとかわす、それだけでいいのだ。
ノアは絶対に私と婚約が進んでは困るのだから……
私ののらりくらり作戦は大成功だった。
まさに、無駄に時間が過ぎていくという言葉がふさわしく、時間をかけれないノアにとって無駄に時間が過ぎていく。
ノアにとっての大誤算は、私はノアが何を探りたいのか知っているということだ。
それは会話を行う上での圧倒的なアドバンテージとなる。
ましてや、ノアは私がノアが切り出したい話題が何か知っているということを想定していない。
話しがそちらに向きそうになれば、私がほんの少し会話の方向性を無理ない範囲でかえれるのだから。
これを繰り返していたら、ノアにタイムリミットが来るはずだった。
私はノアを甘く見ていた、私だけが加護のおかげでいろいろ把握していると思っていたのに……
毎晩寝る頃になると、下の階で始まる二人の反省会。
すっかり慣れてしまった私は、今日も始まったわ~とのんきに二人の会話をながめていたのだ。
『流石におかしい……』
ノアがそう言ったことで私はどきっとした。
『おかしいのは、貴方様ですよノア様。流石にそろそろ一度家に戻らないとまずいですって……当初は日帰りの予定でしたし。ノア様がフラっといなくなるのは毎度のことですが、流石にもうマクミラン領への滞在が一か月を過ぎてます』
ヴィンセントの会話に沢山のホントが混ざる。
そろそろノアの滞在を切り上げないとあちらさんは都合がわるいのだろう。
『帰れるわけないだろう。今私が知りえた情報は、マクミラン姫君が好きな色がすみれ色ってことと、プリンは固めってことをはじめとした、どうでもいいことばかりだ』
ヴィンセントの一度戻ろうという提案をノアはバッサリとやる。
『ならさっさと本題を聞けばよろしいでしょう。お得意の話術でそちらに話しを持っていけばいいのに……』
『ヴィンセント……お前はちっともわかってないんだな。だから、お前はいつまでたっても三流なんだ』
『なんで俺のことさり気にディスってくるんですか!?』
『お前気が付いていないのか……私は、本気で情報収集をしようとして、この下らない情報しかマクミラン姫君からいただけなかったんだ……』
ノアはだいぶ話術に自信があったようだ。
コールドリーディングという単語を知っていた当たり、かなり心理的に持っていきたいほうに持っていくのが上手いタイプだったのだと思う。
私もノアの目的がはっきりとわかっていなければ、自然な流れで会話がそちらにながれてしまったと思う。
『といいますと』
『マクミラン姫君は、のらりくらりと私と確信的な会話にならないようにあえて話題を変えているのだと思う』
『ノア様の気のせいでは? 話の腰を折ったり、全然関係ない話を突然されるなどと言ったことはなく。自然にお二人は話していましたよね?』
『13回、私が占いの話しに持っていこうとして失敗した回数だ。これはもうマクミラン姫君が意図的に避けていると言わざるを得ない。ただ、私はそれで一つ確信したことがある――――あの占い師には、おそらくマクミラン姫君も一枚かんでいることだろう』
私は思わず飲んでいたお茶を拭きだした。
ヤバいヤバいヤバい。
ノアはいつだって、私の話を私に惚れている体でニコニコと柔らかな笑みで聞いてくれた。
あの笑顔はつくりものだということは気が付いていた。
途中から私が意図的に話題を変えているかの確信が欲しくて試し行為をしていたとは……
危なかった。
『だからだ、ヴィンセント。おそらくマクミラン姫君は私が姫君と婚約をするつもりがないのを知っていて。それをしらない体で私に接し、私が聞きだしたいことを知っているうえであえて話題をそらせていたのだろう』
『絶対考え過ぎだと思いますよ。ノア様のような方がそう何人もいらっしゃったら私は胃にきっと穴が開きます』
ノアの話しは、ほぼ正解している。
『はぁ、だから、私は今ヴィスコッティ領にもどれば、もうマクミラン姫君とのことに前向きな返事でもしない限り、せっかくマクミラン領に何か関係があるとまでわかっているのにこれ以上の謎が解けなくなってしまう』
『アンタ探偵じゃないでしょうに……占い師のことなんか迷宮入りさせておけばいいじゃないですか。いい加減たった一度負けた占い師のことなどさっさとお忘れください』
『負けたのではない、私の読みが甘かっただけだ。次は絶対に……』
『勘弁してくださいよ……』
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