幕間1
「やぁ、皆集まってくれて嬉しいよ」
真っ暗な部屋の中に宙に浮かぶ無数の半透明な画面の中に映像が浮かぶ。
少々ノイズが激しく、映像は人物を映している事は分かるのだが、個人を把握出来る程綺麗ではない。
その宙に浮かぶ画面の中央、部屋の主と思わしき人物が座っていた。
地面に着きそうな程長い黒髪、何処の民族にも当て嵌まらないような様式の服を身に纏い、頭上には幾重の光輪が歯車のように噛み合いながら回っている。
部屋の主は自身が光を発しているのか、部屋の中央付近は少しだけ明るくなっている。
「では、早速だけど悪い知らせがある。インベーダーがこの世界に侵入を果たした」
各々画面から動揺の声が漏れる。
「信じられないと……まぁ、ボクも信じたくは無かったけどね。だけど、侵入を許してしまったのは間違いないんだ」
部屋の主が指を鳴らすと手の中に黒い物質が現れる。
とある魔法少女の身体に刺さっていたインベーダーの鎧の破片だ。
「この前、偶然インベーダーと遭遇した時にインベーダーが纏っていた物さ。解析の結果、これはシャドウを高密度に圧縮し物質化した物だと判明した。仮にこの物質をシャドウスチールとする。シャドウスチールはインベーダーの反応を抑え込み、シャドウの反応へと偽装する効果がある。これがどう言う意味か分かるよね?」
つまり、シャドウに紛れてインベーダーがこの世界に侵入をしている事に他ならない。
『――――』
「ああ、確かに都市部のシャドウの集中発生もインベーダーの仕業かもしれないね。シャドウに紛れて世界に侵入を果たすには絶好の条件だ」
『――――』
「その通り。キミ達は現実世界の都市部を集中的に警戒して欲しい。ハザマの警戒はボクが行おう。何せ目だけは多いからね」
真っ暗な部屋の中で今後のインベーダー対策練られる。
大まかな方針が決まった段階で画面の映像が1つ、また1つと消えて行く。
そして、最後に1つだけ残った。
『――?』
映像の中の人物が何やらゴソゴソ動いている。
どうやら通信を切ろうとしているようだが、端末が操作を受け付けてくれないらしい。
「あ、実はキミには別件で頼みたい事があるんだよ」
端末の映像が切れないのは暗い部屋の主の仕業のようだ。
「キミにはとある魔法少女に修行を付けて欲しいんだ」
『――――』
「必要無かろうって?いや、そうでも無くなっちゃったんだよ。初変身直後に死に掛けたせいか致命的なエラーが出ちゃってさ。魔法少女としての戦い方がほとんど分からない状態になっちゃって直る見込みも無いんだよ」
『――』
「しっかりとした契約を結べなかったから、せめて戦えるだけの力を与えたい。それに……キミはニートで暇を持て余してるでしょ?」
『―――!!!』
「え?またまたー。そんな図星だからってムキにならなくても」
『―――!!!』
「ふーん……じゃあ何してるのさ』
『――!――…………』
「ま、良いけど。キミのプライベートには干渉しないよ。は?はぁあああああ!?!?」
話の途中で突如叫びを上げた部屋の主に映像の人物はビクリと身を震わせる。
「何やってんの!?何やってんの!?ばっかじゃないの!?ボクの言いつけ無視して何やってくれてんの!?え?はぁ!?怪異討伐!?単独で!?」
何やらプチパニックを起こして絶叫を上げる部屋の主を見て、未だに映像を切る事が出来ないでいる人物は心の中でふと思う。
もう夜も遅いし良い加減開放してくれ。
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