3分で攻略された迷宮

ソーヘー

まさか3分で攻略されるとは...

ここは迷宮。いつも暇な日常を過ごしているワシに今日は久しぶりに朗報が届いた。


「何?挑戦者だと」


「はい‼︎3人パーティーの冒険者だと思われます!排除しますか?」


「いや、久しぶりの客人だ。存分に楽しまなくちゃいけないな。フハハ」


ワシは久しぶりの客人に胸が高鳴っていた。迷宮ボスなんてほとんど出番がない、大抵の冒険者は最深部には辿り着けないからだ。

最近は攻略難易度が高いからか冒険者すら来なくなってしまっていたが、まさかまだ挑んでくる者がいたとはな。


ワシはしばらくその冒険者らを観察してみると、ついに冒険者らは迷宮に足を踏み入れた。


「この迷宮には様々なトラップがある。冒険者よ、トラップに苦しめ‼︎」


しかし、冒険者らはトラップに苦戦している様子もなく、あっさりとトラップを攻略してしまった。


「バカな...まさかトラップを攻略してしまうとはな。だが、次の階層には迷宮の番人がいる。そう簡単にはいかないぞ」


冒険者らは楽々と次の階層まで辿り着いてしまった。すると、冒険者の目の前に迷宮の番人が姿を現した。


「ここは任せてくれ」


冒険者の一人がそう言うと、迷宮の番人と対峙した。するとワシはその異様な光景に言葉を失った...

なんと、迷宮の番人が一撃で倒されてしまったのだ。


「瞬殺だと⁉︎迷宮の番人は推定レベル70のモンスターだ。並の冒険者じゃ到底敵わない。上級者でも苦戦するレベルを一撃で倒すとはな...」


ワシは困惑していると、エネミーが報告をしにやってきた。


「大変です‼︎あの冒険者らがこの迷宮に入ってまだ2分しか経っていないのに、もうここまでやって来ます‼︎」


「落ち着け...たしかに、今までの冒険者とは一味違う。だが、次の層...つまり最終層にはワシがいる。攻略するのは不可能だ」


ワシはそう言うと、報告にきたエネミーを冒険者に向かわせた。

まさか、2分でここまで来るとはな...普通の冒険者ならここまで辿り着くのに早くても半日はかかるはずだ。なのに迷宮をなんだと思っているんだ⁉︎そんな簡単に攻略されてしまっては流石にまずい。このペースだと3分後にはこの迷宮を攻略されてしまうだろう...ワシはもう迷宮ボスを引退しようと思っていたんだが、


「最後は本気でいくぞ...冒険者共よ」


ついに、冒険者は迷宮ボスまで辿り着いた。



緊迫した雰囲気の中、ワシは目の前の冒険者らを警戒していた。特に迷宮の番人を一撃で倒したやつは要注意だ、あの破壊力は全盛期のワシに匹敵するだろう。他の二人は目立った動きはないものの、その内の一人はおそらくトラップをあっさりと攻略したやつだ。侮れない...


「俺がいくぜ‼︎」


冒険者の一人がそう言うとワシへと歩いてやってくる。


「あんたがこの迷宮のボスか?」


「いかにも、ワシがこの迷宮の主を務めている。それにしてもここまで随分と早かったな...お主ら一体何者だ⁉︎」


すると、冒険者は立ち止まってワシの問いに答えた。


「俺らは元々この世界の人間じゃねぇよ?転生してきた転生者ってやつだ。だから、冒険者歴はまだ3ヶ月ぐらいなんだよな」


なるほど、どおりであの強さだ。噂は聞いたことがある。異世界の住人が稀にこの世界へと転生することがあると...そして、そのほとんどの転生者にはチート級の能力が備わっているんだとか。


「転生者か...本気でいくぞ‼︎」


「望むところだ‼︎」


こうしてワシの最後の役目は終わった。

冒険者らは見事にワシの迷宮を攻略していった。攻略不可能とまで言われたワシの迷宮だったが、その冒険者らが攻略した時間は...


わずか3分程度だった。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

3分で攻略された迷宮 ソーヘー @soheisousou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ