とりあえず書いてみた小説のようなもの

古川砅

ジェームズの冒険

 アメリカのある街はずれに、リンゴの木があった。

 街に住むある男、ジェームズがその木の側を通りかかったとき、木から実が落ちた。それを見たジェームズはすごいアイデアを閃いた。どうすごいかは説明が難しいが、とにかくすごい発見をした。

 ジェームズは街の人たちに自分がすごい発見をしたことを話して回った。発見がどのようなものか、その発見がどうすごいか、街の人たちはジェームズの話を聞いてもあまりよくわからなかったが、ともかく彼がすごい発見をしたことは街中、そして街の外にまで広がった。

 ジェームズの話はメキシコのとあるやばい組織の下っ端にまで伝わった。

 やばい組織の下っ端はこう思った。

「そのジェームズって男を拉致って、すごい発見とやらで金儲けをさせれば最高じゃね? 俺イカしてるぅー」

 そう思った下っ端はその日のうちにアメリカに飛んで、現地のワルを何人か雇ってジェームズという男を捕まえるように命令した。ワルたちはすぐにジェームズの居場所を掴み、彼を捕まえにいった。

 家の前のハンモックでシードルを飲んでいたジェームズは、突然現れたワルたちに驚いて一目散に逃げた。すごく逃げた。ジェームズは知らない街に着いた。

「ハアーイ。お兄さん、飲んでいかない~?」

 客引きの女がジェームズに声をかける。

「俺は今忙しいんだ。どうしてかわからないけど、ワルたちに追われてるんだよ」

「へえ~、大変ー。あー、じゃあ私がかくまってあげようか?」

 親切そうに提案する女に、ジェームズはこう応えた。

「断る」

「ええ~?」

「お前もワルの仲間だからな!」

「……!」

 そう、客引きの女も実はワルの仲間だったのだ。

 ジェームズは賢い男だったので、女の仕草とかで見破った。

「ちっ……! だったら力づくさ!」

 女はどこからともなくチェーンソーを取り出して、ジェームズに切りかかった。

 ジェームズは第一撃をひらりとかわすと、身の回りに何か武器がないか探した。路地裏だというのに、すごく掃除が行き届いていた。ごみ一つない。

「なんてこった!」

 ジェームズは毒づいた。そこでジェームズはポケットの中に、朝食に使ったピーナッツバターの瓶が入っていたのを思い出した。

「ついてるぜ!」

 ジェームズは瓶の中身を手にすくって、女の顔にこすりつけた。

「ぎゃあああ! 目が!」

「唐辛子パウダーが入ってるからな!」

 ジェームズは甘くて辛いものが好きだった。女は悶絶した後、痛痒のあまり気絶した。

 女の叫び声を聞いて、警察官が二人 (ここでは警察官A・警察官Bと呼ぼう) 駆けつけた。警察官はジェームズに職質を始めようとした。これはジェームズにとって幸運なことである。彼らに事情を話せば、警察はきっとジェームズを保護してくれるだろう。

 しかし、ジェームズはさっきの戦いの影響で少し混乱していた。ジェームズほど賢い男にとっても、混乱している最中に正しい判断を下すことは難しい。だからジェームズは彼らもワルの仲間だと思って「食らいやがれ!」ピーナッツバターの瓶を警察官Aに叩きつけた。

「ぐわー!」

 警察官Aは倒れた。けれど、警察官Bは無傷だったので、警察官Bが公務執行妨害でジェームズを逮捕した。

「しまった! 俺としたことが! 違う! 誤解なんだ!」

「黙れ! 言い訳は署で聞いてやるからな!」

 警察官Bはジェームズを縄で縛ると、警察官Aのために救急車を電話で呼び始めた。

「しめた! これはチャンスだ!」

 ジェームズは特殊な方法で縄を抜けると警察官Bの隙をついて逃走した。

 そう、ジェームズの発見とは、人体が他の物体をするっとまるでトンネルのように通り抜けることを可能とする理論だったのだ!

 発見とリンゴとの関係はジェームズにしかわからない。


(続きません)

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とりあえず書いてみた小説のようなもの 古川砅 @wataru_hurukawa

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