09

 うわぁ、ちいさい。みて、カエルの手みたい、透き通った爪。ほんとだぁ、ちいさくてもちゃんとしてる。感心しちゃうね。


 髪の毛もふわふわの、くるくるで、あなたに似てる。目元は私? ほんと? うーん、でもどうしてだろう。あの子に似てる気がする。ううん、全然関係ない、赤の他人なんだけど。わたし、この目をみたことあるなぁって。思って。


 あははは。托卵? カッコウの? あなたそんなこと考えてたんだ。そうじゃないよ。おもしろーい。遺伝子検査機関が公表してるよ。実際に托卵が行われてた数字。うん? そもそも子供の遺伝子検査を公共機関に頼むような家庭の人間はそんなことしない? 用心深いなぁ。私がいつそんなことする余裕があったの。仕事で忙しくて、それどころじゃないよ!


 でもなんだろう。むかしね。男の子なんだけど。中学生の頃に。

 すこしだけ、かかわりがあった男の子に似てるなぁって。


 好きじゃないよ。全然。そんなんじゃないし。その子も私も、全然違う相手のことが好きで、でもほら、ライバルみたいな。そういう。なんか思い出して、懐かしくなっちゃった。貧血と酸欠で、ぼーっとしてるからかなぁ。やたらと昔のこと、思い出しちゃう。


 なにはともあれ、うまれてきてくれてありがとうだね。ながいじかん、おつかれさま。つかれたでしょう。ゆっくりしてね。あ、ほらみて、手、握った。ぎゅーって、離さないよ。あ、いまくちびるがうごいた。もぐもぐって。もしかして、よろしくって、言ってるのかなぁ。はじめまして。ようこそ。



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