第9話 いじめの代償
一方、俺は由紀子の家に上がり込んでいた。
「どうですか、私の家、いい家でしょう」
由紀子は得意げに俺に言った。
由紀子の家は新しく最近、建てられたものらしく中は新品の家具が置かれていて由紀子の家が金持ちなのはすぐに分かった。由紀子の両親は何をしているんだ?
「おお、由紀子の家、きれいだな。建て替えたのかよ」
正憲が感心して聞くと由紀子はやはり得意げにこう答えた。
「そうよ。お父さんが大金を手に入れたから建て替えることにしたのよ。いいスポンサーを見つけたらしいわ」
「わお、すごいじゃない。いいお父さんを持って幸せね。由紀子」
「ふふふ」
「ええ、そうですね。」
俺は笑顔でうなずいた。しかし、俺は由紀子の父親が金持ちになったのは何か裏があるような気がした。
俺はそう思ったが、ひとまず置いておき、作戦を進めることにした。
由紀子は俺たちをリビングに案内した。
リビングは広く、高そうな調度品もあり、かなり派手だった。
「おお、広いな。由紀子の父ちゃんやるな」
「ああ、すげえ」
孝と良太は感心していた。
「おお、すごい」
俺も感心しつつ、腰に差したサイレンサー付きのシグザウエルP232に手をかけた。
「あ、そういえば、僕、皆さんに見せたいものがあるんです。」
「うん、何すか?」
正憲が興味津々に聞いた。
「ああ、これです。」
俺はそういうと、P232を抜いて良太に発砲した。
弾は良太の眉間に当たり、良太は一瞬で即死した。
「え!」
由紀子たち4人は一瞬、何が起きたのか分からなくなり、呆然と立ち尽くしていた。
しかし、俺はさらにP232を発砲し、由美子と孝も即死させた。
「うわああ」
「いやああ」
その時、ようやく由紀子と正憲は我に返り、正憲は慌てふためいて担いでいたリュックから何かを取り出そうとし、由紀子は必死の表情で高そうな洋酒が入った戸棚に走ろうとした。
しかし、俺は素早く2人に発砲し、正憲の右手と由紀子の左足を撃ちぬいた。
「ぎゃああ」
正憲はリュックを落として転倒し、由紀子も戸棚の前で倒れ、傷口を押さえてのたうちまわった。
俺は2人を殴りつけて失神させると、正憲のリュックと由紀子が駆け寄った戸棚を調べた。
正憲のリュックと戸棚の下の引き出しには拳銃が入っていた。
正憲の拳銃は旧日本軍でよく使われていたブローニングM1910だった。おそらく、1945年の敗戦時に持ち出されたまま使われていなかったためか、あまり痛んでおらず、まだ、使用に耐えられそうだった。380ACP弾も50発近く、弾薬サックに入っていた。
そして、戸棚にしまわれていた拳銃は
「S&WM29」
そう、その拳銃はダーティ・ハリーで有名な44マグナムを使用するリボルバー、S&WM29だった。
ちなみに浩香は保育園の時にこの拳銃を知っていつか必ず手に入れたいと思っていた。俺はそのことを聞いていたからもちろん、S&WM29を回収した。
「いい戦利品だな。浩香に持っててやろう」
俺はそう言いながらM29と引き出しにあった44マグナム弾の入った箱を持ってきた小型のナップザックに入れ、失神している由紀子と正憲の服をナイフで切り裂き、裸にした後、2人を縛り、さるぐつわもゆるくかませると由紀子の胸と正憲の下腹部をライターで炙ってやった。
2人は絶叫し、意識を取り戻した。
「いやああ、痛い」
「うわああ、助けてくれ」
2人は激痛にのたうち回る
俺はそんな2人を見ながらこう言った。
「助けてくれ?それは不可能だ。俺はお前らを皆殺しにするために由紀子に近づいたんだ。由美子たちはもうくたばった。お前らもすぐにあとを追わせてやる。」
俺は補弾したシグザウエルP232を2人に向けた。
「いやあ、やめて、なんでもするから」
「そうか、じゃあ、お前らの拳銃はどうやって手に入れたものなんだ?」
「わ、私のはこの前、アメリカに旅行に行った時、お父さんがお土産に買ったものよ。気づかれずに飛行機の中に持ち込むのは意外と簡単だったわ」
「お、俺のはひいじいさんが戦後に軍隊から持ち出してそのまま家にあったやつを最近になってお袋が持ち出して俺に護身用にくれたんだ。」
2人は必死になって答えた。
「そうか、なるほど、それじゃあ、由紀子、お前の父親はかなり金を持ってるみたいだが、どうやってその金を稼いでるんだ。」
「そ、それはお父さんにいいスポンサーがついたから・・・」
「スポンサー?誰だそれは」
俺はナイフで由紀子の臀部を切り裂いた。由紀子は絶叫する。
「いやああ、痛い、言うわ、お父さんは中国や韓国に盗んできた電化製品や自転車を密輸する仕事をしてるのよ。日本の製品は中国や韓国でよく売れるからたまらないって言ってたわ、だから、お金がたくさん入ってくるのよ。拳銃を飛行機の中に持ち込めたのも密輸をやってて飛行機の中にバレずに持ち込むノウハウがあったからよ。」
由紀子は苦痛に呻きながら答えた。
「なるほど、お前の父親は密輸で荒稼ぎしてたわけか、よくわかったよ。それじゃあ、もう1つ聞こう、片田浩香を知ってるか、お前らの昔のクラスメートだった。彼女にお前たちは品のない嫌がらせをしていたらしいな。彼女は毎日、お前らから嫌がらせを受けて苦しんでた。何でそんなことを飽きずに続けてたんだ。」
俺は鋭い目つきになって聞いた。
「ひ、浩香を、た、確かに私たちはお遊び感覚で少しからかってはいたけど、別に悪意はなかったわ、あくまで遊びのつもりだったのよ。」
「あ、ああ、俺たちに悪気はねえ、浩香が考えすぎなんだ。」
2人は浩香が悪いとでもいうような口調で言ったが、俺はもちろん、賛同しない。こう続けた。
「遊びのつもり、悪気はない、まあ、そうだったんだろうな。だが、相手はそう思ってくれてたのか?いくら善意のつもりでも相手からしたら悪意でしかないことはいくらでもあるんだぜ、彼女からしたらお前らのは品のない嫌がらせにすぎない。俺はそういう野郎が大嫌いなんだ。」
俺はそう言って、正憲の右足に1発撃ち込んだ。正憲は絶叫する。
「うわああ、や、やめてくれ、確かに俺たちが悪かった。だけど、俺たちより、ろくでもない奴がいる。そいつがどういうわけか浩香をいじめててみんなそいつに追随してたんだ。そいつが浩香に何もしなけりゃ、俺たちも浩香に手を出さなかった。悪いのはそいつだ。そいつを殺してくれ、名前は・・・」
「高潔厚だろ」
「な、何で知ってるの?そ、そうよ。厚よ。厚は保育園の頃から誰かにひどいことをするのが好きだったみたいで保育園の頃はいろんな子にちょっかいを出してたけど、浩香にいじめをするようになってからは浩香だけをいじめるようになったわ、浩香はいじめがいがあるからいじめてるって得意気に言ってたわ、厚はスポーツ万能で気さくな感じでクラスで人気があって小学生の時からは浩香以外に手は出さなかったから、彼がやるならって面白半分にみんな浩香に嫌がらせをするようになったのよ。仕方ないでしょ。スポーツ万能の人気者と暗くて地味な女じゃ、人気者が正しいって思っちゃうし、その人のまねをしちゃうでしょ」
由紀子は言い訳がましく答えた。
「なるほどね。つまり、お前らは厚に追随して浩香をいじめていたわけか、厚のまねをしたのが運の尽きだったな。それと、もう1つ聞くが厚は桜って名前の女と付き合ってなかったか?」
「桜ちゃん?ああ、そうだ。厚は小学2年くらいからそんな名前の子と仲が良くて遊んでるって話してた。桜ちゃんは元気で明るいかわいい子って感じで厚と同じでクラスで人気があったらしい。桜ちゃんとは中学まで付き合いがあったらしいけど、今はどうか分からない。」
なるほど、やはり、厚と桜はつながりがあったのか、しかも、小学生の頃からかだから、あの時、親しげに話してたんだな。
俺は福島潟で見た桜と厚を思い浮かべながらこう続けた。
「よし、それじゃあ、お前らに生き残るためのチャンスをやろう、厚は今、どこにいるんだ。正直に答えろ」
「あ、厚は北区にいるはずよ。卒業する時、教えてくれたわ、最近、会ってないからいまもそこにいるかは知らないけど」
「北区だな。よくわかったよ。」
厚の居場所が分かったのでどうやって厚をなぶり殺しにしてやるか考えながら俺は答えた。
「ああ、由紀子の言うとおりだ。な、なあ、俺たちは助けてくれ、俺たちが浩香にやってたことなんて厚に比べたらかわいいもんだ。それに、厚が何もしなければ俺たちは浩香に何もしなかったんだ。だから、厚が悪いんだ。俺たちは見逃してくれ」
正憲は必死の表情で哀願した。
しかし、俺は2人を生かしておく気は毛頭ない。当然、こう答えた。
「いや、そんなことはできないね。お前らも死ぬんだ。確かに1番悪いのは厚だ。しかし、お前らも共犯だ。五十歩百歩に過ぎない。あばよ」
俺は2人に弾丸を撃ち込んだ。
2人は悶絶し、絶命した。
「じゃあな」
俺は由紀子たちの死体に向かっていった。俺は証拠になりそうなものを探した後、すぐに脱出しようとしたが、その時、家の中に誰かが入ってくるのが分かった。
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