ダックVSチェリー

@hironorik7

第1話 福島潟

 4月上旬のある日、俺、鴨下聖夜は新潟県新潟市北区、かつては豊栄市と呼ばれていた場所を訪れていた。

 俺は4月2日に生まれたからその日の時点で17歳、世間では高校2年生だが、俺は新潟市の通信制高校に通いながらアルバイトで生計を立てる毎日で休む暇はあまりなかった。

 俺は17年前、新潟市南区、かつては白根市と呼ばれていた場所で生まれた。

 俺の両親は父親が小学校の教師、母親が保育士だったが、両親は俺にやたら厳しく冷たく当たっていて俺に常に暴言を浴びせてきて、些細なことで俺に殴るけるの暴力を加えることもしばしばで食事の際は魚の頭や野菜くずのような生ごみのようなものを食わされることもあって俺は毎日、苦しい日々を過ごしていた。

 両親が俺に何でそんなことをしていたのかというと、両親は俺を苦しめればそれをバネに俺が力強い立派な男に成長すると思っていたらしく、俺を立派な男に育て上げたくてそんなことをしていたらしい。だが、もちろん、そんなことで俺が立派な男に成長するはずはなく、俺は両親のバカげた思いやりにいつも腹を立てていた。

 学校でも俺は周りからひどい仕打ちを受けていた。

 俺は保育園の時から何故かクラスメートたちから嫌がらせを受けるようになり、俺はからかいや冷やかしのような品のない低レベルの嫌がらせを毎日のように受け続けた。

 俺はしばらくは耐えていたが、我慢ができなくなって激昂し、クラスメートたちを殴りつけたことが何度もあった。

 俺は身体能力が非常に高くクラスで一番なのはもちろん、3、4歳離れた相手よりも身体能力が優れていたほどで俺は戦いとなればどんな相手にも勝つことができ、何度もクラスメートたちを力でねじ伏せた。

 しかし、教師たちが必ずクラスメートたちの肩を持ったせいで俺はそのあとで謝罪せざるをえず、その時のクラスメートたちのイヤらしい顔は虫唾が走るほどだった。

 だから、俺は嫌がらせに必死で耐える毎日で俺は何とか平静を保っていたが、クラスメートたちの嫌がらせはやむどころか悪化していくばかりで教師たちも「気持ちは分かる」とかわけの分からない理由でクラスメートたちを応援までしていて俺への嫌がらせがなくなることはなく、俺はいつもクラスメートたちや教師たちに怒りと憎しみを抱いていた。 

ちなみに俺は両親にクラスメートたちの嫌がらせを話したこともあったが、両親は教師たち以上にクラスメートたちの肩を持ち、クラスメートの低レベルな嫌がらせを俺の将来のためになるとか言ってなぜか称賛していた。

 俺は両親にはすでに5歳の時には嫌悪感を抱いていたが、この俺よりも他人が大事という態度に本当に腹が立ち、俺は当時まだ七歳だったが、両親に殺意を抱いたほどだった。

 そして、それ以来、俺は両親を親だとは思わなくなり、義務教育を終えたらすぐに家を出て縁を切ると誓った。

 俺はそれからも両親やクラスメートからひどい扱いを受け続けたが、俺とは異なり、いつも楽しそうに生活していた女がいた。

 その女の名前は尾崎桜、どういう女かというと明るく活発なかわい子ちゃんといった感じの女でクラスでの人気が非常に高く、いつも友達に囲まれていて楽しそうに過ごしていた。

 ちなみに俺は友人もおらずいつも一人で周りの人間とは争ってばかりいた。だから、俺は敵がおらず、いつも楽しそうに過ごしている桜がうらやましく、俺と桜でここまで扱いに違いがあるのはなぜなのかいつも考えていた。

 桜はクラスメートや教師たちから「さくらちゃん」と呼ばれて慕われていた。理由は名前が「さくら」だからだが、桜は今もかなりの人気を誇る「カードキャプターさくら」という漫画にはまっていて桜が「カードキャプターさくら」の話をよくしていたので主人公である木之本桜と桜の名前が同じということもあり、「さくらちゃん」と呼ばれるようになったらしい。桜は「さくらちゃん」と呼ばれて満足していた。ちなみに桜の一番お気に入りのキャラはさくらの兄の木之本桃也でいつも「桃也さんのお嫁さんになりたい」と口ずさんでいた。

一方、俺は周りから「カモ」と呼ばれていた。理由は俺の姓が鴨下で「カモ」という字が入っていたからだが、桜と違い、俺はあざ笑われていた。

俺は「カモ」と呼ばれるときは非常に気分が悪かった。同時に桜と俺の扱いがここまで違うことに怒りを抱いていた。

 俺は桜が人気がある理由が知りたくなり、探りを入れて桜を一日中、見ていたことがあったが、俺は何となく不思議に思ったことがあった。

 桜は確かにいつも明るくクラスメートや教師たちと楽しく接しているように見えたが、その時の桜の表情には作ったような不自然なところがあり、裏に何か隠しているそんな気がしたんだ。

 もっとも、俺以外でそれに気づいている人間は皆無だった。俺も気にはなったが、小学5年からはクラスメートの嫌がらせが激化したこともあり、それどころではなくなってしまった。

 俺は小学5年から中学卒業までは毎日のようにクラスメートたちに暴言を浴びせられ、サンドバック代わりに殴られたり、けられたりすることも多くなり、俺の憎しみは募るばかりだった。

 俺は嫌がらせをなくすことはできなかったが、奴らに復讐してやろうと思い、その日に備えて身体を毎日のように鍛えることにした。

 俺は身体能力が高かったからトレーニングは全く苦にならなかった。それに自分を苦しめてきた敵を倒すための準備をしているのだと思うといくらクラスメートや教師たちから苦しめられようと耐え続けることができた。

 そんな中、俺が中学3年になったとき、桜が転校することになり、俺の前から姿を消した。

 クラスメートや教師たちは桜が転校したことを悲しんだが、俺は別に何とも思わなかった。

 俺は桜が突然、転校した理由が気になったが、その時は理由が分からなかった。しかし、何かがあるとその時から思っていた。まあ、その時は何となくそう思っただけだったんだがな

 そして、桜が転校してから4カ月が経った夏休みのある日、今度は俺の両親が阿賀野市の五頭山に山登りに行ったきり、行方不明となり、捜索が行われたが見つからず山で遭難して死亡したと判定された。

 俺は両親が山登りに行ったとき、中学の受験のための夏期講習に出ていたため、事なきをえたが、俺は両親が死んだと聞かされても別に悲しくも何ともなかった。ただ、バカな人間が2人死んだという感覚しかなかった。

 そして、中学の卒業式の日、俺をからかおうと近づいてきたクラスメートたちを俺はまとめてボコボコにしてやった。

 特に俺におかしな優越感を抱いて俺をサンドバックのように扱っていた5人、名前は小原正人、船橋郁恵、内田一善、黒岩芽以、大平誠二を半殺しの目にあわせてやり、止めに入ったいつもクラスメートたち、特に今あげた5人をかばっていた教師も顔面に一撃を食らわせて失神させ今までの復讐をしてやった。

 俺は鼻血を出したり、頭から流血して呻いているクラスメートたちに一瞥をくれると「あばよ」と言って立ち去り、そのまま、奴らと会うことはなかった。

 俺は中学卒業後にすぐに働きに出ようと思ったんだが、いまの日本では学歴がないとまともな扱いをしてもらえないので高校は出ておこうと思い、両親が死んだことで何とか働いて金を稼がなければならなかったので通信制の高校があると知り、定時制の高校より時間が持てて有利だと思い、その高校に通うことにし、両親が残したわずかな金で安い借家を借り、アルバイトをして働きながら生活をすることにした。

 俺にとって勉強は戯言だったが、いくら働いても何とか生活できるだけの金しか稼ぐことができず、貧しく苦しい日々が続いていた。

 俺はもちろん、こんな生活を送り続けるのはまっぴらだった。しかし、俺は生活を抜け出す方法を考えたが、いい案は浮かばなかった。

俺が進学してさらに勉強するためには大金が必要だが、そんな金を俺は用意できないし、どこかから借りようにも金は返さなければならない。それに、すべてが上手くいく保証はない。そうなれば、俺には借金だけが残ることになる。

 俺は何度考えても何も浮かばないので、気晴らしに必死で働いて貯めた金でオーストラリアに行くことにした。

 何で俺がオーストラリアに行こうと思ったのかというと俺は保育園の頃から拳銃を撃ってみたいと思っていて、どこに行けば撃てるか調べてみてオーストラリアに観光客向けの射撃場があると知り、さっそく行ってみることにしたんだ。

 俺は様々な銃を撃ってみたいと思い、22ロングライフル使用の拳銃から44マグナム使用のリボルバー、上下二連の散弾銃、ボルトアクションのマグナムライフルまで様々な銃を撃った。

 俺は初めて射撃を体験したが、銃を撃っている時と弾丸を標的に命中させたときはとても爽快で気分がよく、射撃を体験して日本に戻った後、何とか本物を手に入れたいと心から思った。

 しかしながら、俺が日本にいる以上、合法的に堂々と拳銃を手に入れることは不可能だった。

 みんなはおそらく知らないと思うが、実は日本でも拳銃を手に入れること100パーセント不可能じゃない。オリンピックでピストル射撃が存在するように拳銃を使った射撃競技が存在し、射撃用としてなら日本でも購入が可能なんだ。

 しかし、基本的に誰でもチャンスがある諸外国と異なり、日本の場合、異常なまでの規制があり、100パーセント不可能でないというだけで事実上、購入は不可能といってよかった。

 俺はほかの国と日本の銃規制、特に拳銃に対する規制を調べてみて日本の規制は厳しいというより異常であり、狂気を感じたのを覚えている。

 だが、俺は合法的には購入できないと思ったが、それでもどうしても手に入れたいと思ったんだ。

 もちろん、拳銃を手に入れた場合、いまの日本では不法所持となる。だが、それでも手に入れたい思いが強かったし、それに俺は日本(というより、世界中で)で銃規制を声高に叫んでいる奴らを見て、奴らは言っていることはもっともらしいが、ただただ声がでかく、偉そうで高圧的であり、よく考えて行動しておらず、ただ、何かに八つ当たりして問題を解決した気になっているそんな印象で俺を苦しめてきたクラスメートたちや奴らをかばっていた教師たち、俺の両親と似たような感じがして俺は奴らに嫌悪感しか沸かなかった。だから、奴らの考えに従うつもりはなく、奴らに一泡吹かせてやりたい気がしたんだ。

 だから、俺は拳銃を手に入れようと思ってどうすれば日本で手に入れられるか考えていた。しかし、どこに行けば手に入るのか分からなかった。

 だが、俺がオーストラリアから帰国して1カ月が過ぎたある日、俺はその日、久々に休みだったので新潟市中央区を訪れていた。

 俺は駅南のブックオフで買った銃器雑誌を読みながら、萬代橋の近くのデパートでコーヒーを飲みながら考え事をしていたんだが、その時、1人のドイツ人が声をかけてきたんだ。

 彼は22歳の時に日本に渡ってきて会った時は25歳、上越市に住んでいてその日は土曜日で中央区に遊びに来ていたらしかった。

 彼は日本、そして、日本人に尊敬の念を抱いていて、ドイツは日本に特に好意は抱いておらず中国におかしな憧れを抱いているようだが、それは間違いで日本と仲良くするべきだと熱心に語っていた。

 彼はドイツでエアピストル、火薬ではなく空気やガスを使って弾丸を打ち出す拳銃を用いたエアピストル競技を行っていて、ドイツでは18歳から無許可でエアピストルやエアライフルのような空気銃を無許可で購入できるので日本でも一八歳以上ならエアピストルが買えると思っていたので長岡市に遊びに行った時、長岡市の銃砲店でエアピストルを買っていこうと思って立ち寄ったらしいが、エアピストルやエアライフルが許可制でしかもエアピストルにはドイツでは想像もつかない規制がかけられていると聞いて驚愕したらしかった。

 ドイツでは射撃競技が盛んで空気銃はもちろん、火薬を使う本物の銃、もちろん、拳銃を使った競技も行われていて21歳以上ならもちろん、許可制で手に入れるのは大変だが、拳銃を堂々と購入できる。だから、日本の規制もドイツと同程度だと思っていたらしいが、ドイツとは全く違う規制があり、俺と同じで狂気に近いものを感じたらしかった。

 彼が日本の規制がこうなったのはいつか聞いてきたので俺は1945年にGHQが日本の占領政策としてこのような規制を作り、それが今になるまで続いてきた結果だと答えた。

 みんなは豊臣秀吉が行った刀狩の影響で今の日本の銃刀法があると思っているかもしれないが、それは間違いだ。秀吉は銃や刀剣類を許可制にしただけで別に全面禁止にしたわけじゃない。それにこれは農民一揆の防止のための統治政策だ。勘違いするなよ。実際、武士でなくても自営用に脇差程度の短い刀は購入できたし、銃も許可を取れば購入できたんだ。日本の銃刀法は諸外国、特に今のドイツのように規制と利用のバランスをとったものだった。それは明治時代以降も続いたんだが、GHQが日本を円滑に統治するため、今のような銃刀法を設定し、それが今の銃刀法のもとになった。つまり、今の法律はダグラス・マッカーサーが作ったものなんだ。

 俺がそう説明すると、彼は連合国の統治政策の結果だったのかと憤っていた。

 彼は第二次世界大戦時の連合国にはいつも怒りを抱いていて戦争の責任を当時のドイツに押し付けようとする姿勢は許さないと言っていた。だから、連合国が日本人を上手く支配するためにそんな法律を作ったのだと聞いて連合国の日本に対する侮辱に激怒したんだ。

 日本は第二次世界大戦の時はドイツと組んでいたし、当時の日本の戦いぶりは悲壮ではあったが、尊敬すべきだと彼は思っていた。だから、連合国の日本弱体化のための様々な工作に怒りを抱いたんだ。

 俺と彼は話が合ったのでそれから、少し話をした。彼は今、日本国籍を取得し、日本人になったあと、日本ライフル射撃協会に入会してハンドライフルというエアピストルを改造した空気銃を使った競技を始めてエアピストル競技に進み、それをやりながら日本でドイツと同じように拳銃を使った射撃ができるようにしたいと考えていると話してくれた。

 俺に話しかけたのは俺が銃器雑誌を読んでいて日本で銃器好きな人は珍しいと思って声をかけたらしかった。

 俺は彼に本物を手に入れたいと話した。すると、彼は「本物が欲しいなら手に入れてきてあげようか」と俺に言ってきたんだ。

 俺は一瞬、「本当か!」と思ったが、彼が真剣な表情で言うので俺はまだ、半信半疑ながら「お願いします。」と答えた。

 彼は笑顔で上越市に帰り、それから二週間後に駅南で俺に会い、手に入れてきた拳銃を俺にくれた。

 彼が持ってきてくれたのはアメリカ軍の制式拳銃になったイタリア製ベレッタ92Fだった。

 本当はドイツ製のヘッケラー&コッホUSPかワルサーP99を俺にあげたかったらしいが、ドイツ製の拳銃は日本では手に入れにくいらしく、中国や韓国、ロシア、フィリピンや途上国の安物の拳銃しか出回っていないらしく、神奈川県に行って在日アメリカ軍の兵士から何とか手に入れたのがこのベレッタ92FSだったらしい。ベレッタ92FSには二つの替え弾倉と9ミリパラベラム弾100発をつけてくれていた。彼はワルサーやヘッケラー&コッホの銃を手に入れられなくてごめんと頭を下げたが、俺は本物を手に入れることができてうれしかった。それにベレッタ92FSは左手でも撃ちやすい拳銃で左利きの俺にとっては好都合だった。俺は彼に感謝し、ベレッタ92FSを受け取った。

 それから、俺は人気のない山の中でベレッタ92FSを撃って銃の腕を磨いた。弾薬はドイツ人のところに遊びに行ってその時にもらった。俺が射撃の話をすると彼はほほ笑んでいた。

 山の中には始め、バスと電車を乗り継いでいったが、交通費がかかりすぎるので車で行けたらと思い、不法駐車されている車を拝借して練習し、運転を覚えた。

 さらに俺はバイト先で偶然、拾った財布に入っていた免許証を見て偽名の免許証を作り、堂々と運転ができるようにした。

 それから、俺はレンタカー会社で車を借りて銃を撃ちにいくようになった。車を飛ばしているときは銃を撃っている時と同様、気分がよく、勉強や仕事でのつらさを忘れることができたので救われた気がした。俺は18歳になったら本物の免許証を手に入れて自分の車、俺はセダンタイプしか興味がなかったからセダンだな。を手に入れたいと思った。

 そんな風に俺は17年間生きてきたが、俺が苦しい生活から抜け出す方法は未だに見つからず、バイト漬けの大変な日々を過ごしていた。

 だから、俺はその日、気分転換に出かけようと思い、新潟市北区の福島潟を訪れていたんだ。

 俺が福島潟に来ようと思った理由は俺は昔から「カモ」とバカにされていてカモという鳥のことが気になり、彼らについて調べていた時があり、カモという鳥はなかなかきれいで俺のクラスメートたちはバカにしていたが、俺はなかなか魅力的な鳥に見えたんだ。

 だから、新潟でたくさんのカモを見られる場所に行ってみようと思い、オオヒシクイというガンが渡ってくる場所として有名な福島潟に行ってみることにしたんだ。

 俺はその日、朝から起きて電車とバスを乗り継いで福島潟に行くことにした。理由は俺が17歳で世間的には免許が取れない年齢だから車で行くのはマズい気がしたからだ。

 俺は電車でまず、豊栄駅に向かった。豊栄で降りた俺は駅の売店でパン一個とコーヒーを1本買って朝食にすることにした。俺は相変わらず金に困っていたから金を節約するためにパンとコーヒーだけを買うことにしたんだ。

 俺はその粗末な朝食をすぐに平らげ、福島潟行きのバスが来るまで時間があったのでまた売店に入って雑誌のコーナーに行って今日の新聞を見ると、長岡市でタカの仲間であるオオタカが撃たれて殺されたという記事が載っていた。

「またか」

 俺はその新聞記事を見て顔をしかめた。実はこれに似た事件が最近の新潟県ではしょっちゅう起きていたんだ。

 まず、その年の1月に白鳥で有名な阿賀野市、かつては水原町と呼ばれていた場所でハクチョウで有名な瓢湖でオナガガモ、キンクロハジロ、ホシハジロ、ヒドリガモというカモが合わせて10羽も殺される事件が発生した。

 さらにその2週間後には同じく阿賀野市でタカの仲間であるノスリが撃ち殺されているのが見つかり、2月の終わりには佐渡でトンビの名前でよく知られているトビが殺され、その1週間後には俺が生まれた南区で飼われていたマガモが、さらに加茂市の加茂川で野生化していたアヒルが殺されているのが見つかった。

 弾丸のライフリングが一致したことから警察は同一人物の犯行とみて調査しているらしかったが、手がかりは皆無らしく、捜査は行き詰っていた。

 警察は空気銃の所持者を洗ったらしいが、県内の所持者のライフリングと一致するものはなかったらしい。

 俺は県外の人間か、もしかすると不法所持の空気銃を持った人間の犯行かと思った。空気銃もかつてと異なり、威力が向上し、もちろん、22ロングライフルほどの威力はないがカモやキジのような大型の鳥やウサギやキツネのような中型の動物もとれるようになった。それに火薬を使わないからか銃声も非常に小さくバレにくい。だから、俺は密輸した空気銃で非合法に狩猟をやってるやつの仕業かと思ったんだ。

 もっとも、俺はそういうやつがいても特に気にはならなかった。しかし、記事を見て銃規制の奴らはもちろん、環境保護の奴らが狂ったように騒いでいるのを見て俺は顔をしかめた。

 俺は銃規制の奴らと同様、環境保護をやっている奴らも大嫌いなんだ。

 こいつらも口では偉そうなことを言っているが、やはり、誰かの悪口を言って問題を解決した気になっているような印象で俺はクラスメートたちや教師たちと重なって見えて嫌悪感を抱いた。

 だから、俺は気分が悪くなって新聞を戻すとバス停でバスを待つことにした。

 俺はバスを待つ間、桜が小鳥が好きで将来は自然を守る仕事に就きたいと言っていたのを思い出した。まあ、その時は何となく思い出しただけだったんだがな

 バスが来ると俺はそれに乗って福島潟に着いた。

 福島潟はちょうど春だったこともあり、植えられている桜が満開だったが、俺は桜を見ても何も感じなかった。

 その日は土曜でイベントが行われるらしく10代の俺とほぼ同年代らしい男女が忙しそうに動いていたが、俺はそれを無視して、福島潟に設けられている観察小屋に向かった。

野鳥の観察小屋で俺は望遠鏡でカモたちを観察した。福島潟には様々な種類のカモが渡ってきていて彼らが餌を探しながら動き回るシーンは見てて飽きなかった。

 それに福島潟にはオオワシやオジロワシのような猛禽類も渡ってきている。その日も俺はタカの仲間であるノスリ、そして、オオタカを見ることができた。

 オオタカがカモの群れを鋭い目つきで見ている姿は勇ましかった。

 俺は一通り、観察すると外に出ることにした。

 それから、俺は福島潟にあるビュー福島潟という建物に入り、福島潟の自然についての展示を見て回った。

 福島潟にはオオヒシクイをはじめとする様々な鳥が生息していて珍しい植物もたくさん生えているまさに自然の宝庫といった場所だと思った。

 俺は展示物を一通り見て回り、屋上の七階に上がった。

 屋上からは福島潟とその周りが見渡せて素晴らしい眺めだった。

 福島潟ではどうやら野鳥を観察するイベントが行われているらしく自然保護団体のメンバーが参加する人たちに説明して回っていた。どうやら、カモのような水鳥ではなく、小鳥を観察するイベントらしい

 俺はイベントに参加している家族連れや友達同士で参加している学生たちを見てうらやましく思った。

 俺も周りから普通に扱ってもらえたらこんな風に過ごせていたんだがな

 俺がそんなことを考えていた時、人の気配がして誰かが屋上にやってきたのが分かった。

「うん」

 俺が気配のした方を見ると俺と同い年くらいの1人の少女がやってくるのが見えた。

 彼女は知的で真面目そうだが、暗く表情に乏しく地味な印象で普通の人は「暗い女」、「さえない女」くらいにしか思わなかったと思う

しかし、彼女は地味で華やかさはないがよく見るとかなりかわいい顔立ちだったし、胸はあまり発達していないが細身でスタイルはいいとすぐに分かったし、髪も長めできれいで俺からすると魅力的な美少女に見えた。

「なかなかかわいい子じゃないか」

 俺は彼女が気になってさらによく見ると不自然なことに気づいた。

 彼女は確かに地味でさえない感じだったが、目つきが鋭い感じで心の中に深い闇を抱えているような感じで彼女の本質は見た目とは異なる気がしたんだ。

 それと、彼女の服装にも少し違和感を覚えた。

 彼女は濃い青色の飾りとかは一切ついていないシンプルな服とミニのプリーツスカートと濃い青色一色の服装だったんだが、彼女のスカートはかなり短くて彼女のような地味な感じの少女がそんなスカートを穿くだろうかと少し疑問に思ったんだ。それと、彼女はシンプルな服を着ていたが、着方を工夫してかわいらしく見えるように工夫しているようだった。だから、俺には彼女が単なる暗く地味な少女には思えなかったんだ。

 俺はますます、彼女が気になって彼女を見ていた。

彼女は福島潟の方を向いていたが、暗く無表情のままただ遠くを眺めていた。

 その時の彼女の表情は悲しそうでそれでいてまた目つきが鋭くなっていて心の中に闇、怒りや憎しみのようなものを抱えている気がした。

 まあ、普通の人は別にそんなことには気づかなかっただろうし、気づいたとしてもあまり深くは考えなかっただろう。

 しかし、俺は彼女にますます興味がわいて彼女のことをもっと知りたいと思ったんだ。

「よし」

 だから俺は彼女に話しかけることにした。

「あのすみません」

 俺が笑顔で話しかけると彼女は驚いた表情になったが、すぐにこう答えた。

「は、はい。な、何でしょう?」

 彼女の話し方はぎこちなかったが、無理やり作ったような不自然さがあり、これは彼女の本当のしゃべり方じゃないと俺は直感した。

 俺は気にせず、こう続けた。

「はい、さっきからあなたのことをとてもかわいい人だなって思いまして失礼ですが、声をかけさせてもらったんです。よかったら僕とお話をしませんか?」

 すると彼女は信じられないといった表情になって話し始めた。

「わ、私とですか?い、いいんですか?私は地味で口下手でさえない魅力のない女ですよ?話しても面白くないかもしれませんよ。」

 彼女は自虐的に言ったが関係ない。俺はこう続けた。

「いえ、そんなことはありません。僕からするとあなたはすごく魅力的です。だから、仲良くしましょう」

 俺は即答した。

「そ、そうですか、ありがとうございます。じゃ、じゃあ、下の階にあるカフェでお話しませんか、ここじゃ何ですし」

「ええ、そうですね。あ、まだ紹介がまだでしたね。僕は鴨下聖夜、中央区の定時制に通ってます。よろしくお願いします。」

「鴨下さんですね。私は片田浩香、加茂市の農業高校の2年生です。南区に住んでます。よろしくお願いします。」

 彼女、浩香は丁寧な口調で答えた。

「片田浩香さんですね。南区ですか、僕も実は南区の出身なんです。じゃあ、行きましょう」

「ええ」

 俺と浩香は3階にあるカフェに向かうことにした。ビュー福島潟にはエレベーターもあるんだが、実は階段で行ったほうが早い。浩香もそれを知っていたから俺たちは階段で下に降りることにした。

 ところが、俺と浩香が階段を降り始めたその時だった。

「き、きゃあ」

 浩香はつまづいて転げ落ちた。

「大丈夫ですか?」

 俺は声をかけたが、すぐに視線をそらした。

 浩香は階段から転げ落ちてぶざまな格好でうつ伏せになっていたんだが、その時の浩香はスカートが腰までめくれあがっていて浩香の下着と臀部が丸見えになっていたんだ。

 浩香の臀部はかなり大きく100センチ以上あるように見えた。それと、浩香は下着も濃い青色の飾り気のないシンプルなものを着けていたんだが、サイズが小さめで布面積が少ない下着を着けていたから浩香の尻が下着に入りきらなくて下着が食い込んで尻が丸見えになってしまっていた。

 普通の人はその時の浩香を見ても「無様な女」、「みじめな奴」くらいにしか思わなかったと思う

 しかし、俺には浩香の尻がすごく魅力的に見えたのを覚えている。

 浩香の尻はかなり大きいが形が非常によくかわいらしい印象で俺には魅力的に見えた。それに臀部と下着が丸見えの状態で無様に這いつくばっている浩香を見て、普通の人は何とも思わなかったともうが、俺からするとその時の浩香はかなりグッときた。まあ、そう思うのは俺だけだろうけどな

「いたた、転んじゃったわ、あれ、どうしました?」

 浩香は俺が視線をそらしているのを見て後ろをよく見るとスカートがめくれているのを見てあわてて隠した。

「きゃあ、す、すみません。お見苦しいものを」

 浩香は真っ赤になりながらスカートを戻した。

「あ、いえ、僕の方こそすみません。片田さんのを見てしまって」

「あ、いえ、私が転んだのがいけないんです。あの、さっき見ちゃったと思いますけど、私昔から下着や服のことでクラスメートからからかわれてたんで濃い青色のシンプルな服と下着しか着けられなくなっちゃったんです。それに私、胸とお尻の大きさが違いますし、胸にサイズを合わせてますし、大きめのパンツはかわいくないんで着けたくないんで小さめをいつも着けてるんでいつもお尻がパンツに入りきらなくてお尻が丸見えになっちゃってるんです。まあ、今は何を着ててもからかわれることはないんですけど」

 浩香は恥ずかしそうに言った。

 なるほど、濃い青の服と下着を着けてたのは昔、周りからからかわれてたからか、俺も服のことで低レベルな嫌がらせを受けてたからよくわかる。そんなことは気にするなっていうやつがいるが、冗談じゃない。やられるほうは信じられないくらい気分が悪いんだぞ、そのことを理解しろよな。それと、面積が少なめの下着を着けてたのは大きめだとかわいくないからか、なるほどな。シンプルな服をかわいく見えるように着こなしてたのも同じ理由か彼女、服装には気を使ってるんだな。

 俺はそう思いながら、続けた。

「そうでしたか、僕も着ている服のことで嫌がらせをされて嫌だったことが何度もありますからよくわかりますよ。まあ、気を取り直していきましょう」

「ええ、そうですね。」

 俺と浩香はそこで話を打ち切って3階のカフェテリアに向かった。

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