俺の妹は天使(リアル)です
すみれ乃
第1話「こんにちは、天使です」
「こんにちは、蒼さん」
そう、アイツは確かにこうやって話しかけてきた
まだ幼い時…というより、まだ母親の腹の中に納まっている時の話だ。
声が脳内に直接、がんがん響いてくる。
「っ!?!?」
ハッキリ宣言出来る。
俺は人生でこの時ほど驚いたことはない…いや、まだ人生始まって数か月な訳だけどこれより驚くことなんてそうそうないだろう。
「はじめまして、天使です」
て…ん…し…??どういうこと?
混乱を極めている俺をよそに、自称天使はマイペースに話を続ける
「あなたをお迎えに来ました。一緒に天国に行きましょう!」
あまりにも気軽に言うもんだから思わず頷きそうになって…固まる
ちょっと待てよ天国って死んだ人が行く場所だろ?俺まだ死んでませんけど?なんなら、生まれてすらいませんけど?!?!
「もちろんですよ、生まれる前に摘み取れっていうのが神様のご命令ですので」
どうやら俺の考えていることは全部自称天使に筒抜けらしい。一言も声を発していないのに会話が出来ちゃう何とも不思議な感覚…ってそこじゃない、関心している場合じゃないんだよね
ねぇ、摘み取れってどういうこと?
「ようは、生まれるのを阻止しろ…まぁ一言で言えば、殺してしまえって感じでしょうかね~?」
いや、頼むからそんなゆるりと言わないでくれ。
え、なんで?なんで俺そんな神様レベルの方に殺されるの??
この世に生を受けてから俺がしたことといえば、腹の中でのんびり成長しただけだ。
「あのですね、あなたは今から18年後、世界中を震撼させる超大規模テロ事件を起こすんです」
はぁ…
「しかもかなり残酷な」
ほぉ…
「さすがにヤバ過ぎるということで、リスクは未然に防いでおこう!というのが神様のお考えですね」
へぇぇぇ…
「ちょっと、さっきから気の抜けた返事ばっかりしないでくれます?まったくもってテロリスト感がないんですけど」
いや、未来のことはさておき今はただの赤ん坊なんですけど
まだ0歳の俺が18歳の時にあーだこーだって言われても何のリアリティもないし、何も感じない。
「とにかく!!お分かり頂けましたか?それでは、今度こそ天国に行きましょう」
え、え、マジ待ってガチで言ってる?
「ガチです大マジです。なんてったって神様のご命令ですからね」
むりだって!嫌だよ、いくら偉い人の命令でもさ…
〈あっくんにもうすぐ会えるわねぇ〉
〈そうだなぁ、楽しみだ〉
その時、腹の外から声がした
これはきっと、俺のお父さんとお母さんの声だ
「………」
この声は天使にも聞こえたらしい。罪悪感を持ったか、あるいは後ろめたさでも感じたのかな…下を向いて押し黙る
俺の名前は北条蒼、愛称はあっくん、顔はお母さんいわく母似、お父さんいわく父似…
きっと俺はこの両親に育てられて幸せな人生を送るはずなんだ
それなのに…どうして天国行きになってんの?ねぇ?天使さん???
俺が問い詰めると、自称天使はしばらく悩んだ末にすっと顔を上げた
「分かりました」
自称天使の思ったよりも落ち着いた声に、俺は思わず身体を硬くする
「あなたの誕生を楽しみにされているご両親には何の罪もありません」
それは確かに…
外からは俺に向けたあたたかい言葉がいつも聞こえてくる
「それに、私も実際あなたに会ってみてあなたがテロを起こすような人には思えませんでした…あなたはあまりにも普通で、何の特徴もなくて、これといって気になるところもないので…」
ん…んんん…???
若干ディスられた気がしなくもないけど、俺は普通よりちょっとだけ紳士だからここはあえて聞こえなかったことにする。
「だから、あなたを生まれさせます」
それって、天国行き回避ってこと?
思わず安堵のため息がでる
よかった…、本当によかった。未来に犯すかもしれない罪で生まれる前に天国行きなんてそんなの悲しすぎる
「その代わり」
すっかり安心しきった俺に、自称天使はとんでもない条件を出してきた。
「私はあなたの妹になってずっとあなたを監視します!」
な、なんだって!?!?
俺の妹は天使(リアル)です すみれ乃 @aoi0125
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