時刻は午前10時をお知らせします
最近、新しい楽しみができた。
研究室に入ってきた後輩は、これまで自宅通学だったのが入室に伴い一人暮らしに変わったとのことで、目下自炊に奮闘中らしく、毎日昼時に手製の弁当を広げては、おかずの試食をさせてくれる。曰く、こちらの弁当も参考にしたいのと、友人たちに試食を頼むと講評も何もそっちのけですぐに食い尽くされて自分の取り分がなくなってしまうからと。
大学から自転車で20分の実家住まい、弁当も相変わらず母任せのこちらとしては日々美味しくなっていく弁当の中身に目がくらむばかりなのだが、おかずの一口交換はずっと友人たちとしていたことだし、進学してその相手もいなくなってしまったなと少し寂しい思いを抱えていたところでもあったので、願ったりかなったりではある。
さて、そんな後輩が、毎日入れてきているおかずがある。
ぬか漬けだ。
渋くはないだろうか。初めてきいたとき、思わず聞き返してしまったのは記憶に新しい。
「漬けて出して切ればそれで一品できあがるから、なんて言うんだろう、俺の実働時間はほぼないじゃないですか。楽ですよ。それにとりあえずこれで野菜分が確保できるからあと冷凍食品とか味付け肉買ってくるだけでもそこそこのバランスになんとかなりますし。これ全部父からの受け売りなんですけど」
そう言いながら見せてくれたお弁当は、なるほどたしかに肉と野菜。スーパーで売っていたという味付け肉を炒めて、ぬか漬けを付け合わせに。夕飯と同じ組み合わせなのだそう。
後輩が研究室に入って3ヶ月、一人暮らしを始めて2週間。
実家から分けてもらったぬか床に市販の発酵ぬか床を加えて始めたと言っていたぬか漬けは、いまのところ順調なようで、日々美味しいぬか漬けを食べさせてもらっている。
さて、今日は何を漬けたのだろう。
ぐぅと鳴ったお腹をおさえながら、画面を追った。
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