究極のゲーム。

@sushi_zamurai

ARデバイス【RAT】

Augmented Reality。拡張現実。


通称 ”AR”


近年、飛躍的な技術の進歩によって開拓された今までとはまるで違う、もう一つの現実。

現実と仮想世界が一緒になった世界。

それは夢と現実がほぼ同化、共存し、存在する世界でもある。


ARと聞けば、スマートフォンなどのデバイスを通して現実世界に仮想世界のものを映しこませているものを想像するのではなかろうか。ひと昔前ではAR技術を駆使して、現実世界の地図や気象とゲーム世界をマッチさせモンスターを捕まえるゲームが社会現状を引き起こすほど大ヒットした。


だがそれはあくまでも画面の中の話である。

本当の意味で、現実と仮想世界が遜色なく混在する世界ではない。


つまり本当のARではないと言える。


しかし、人類は可能にした。本当の意味でのARを。


そんなことを可能にしたデバイスがRAT。通称ラット。

それは目の周辺を覆うスポーツタイプのメガネとほぼ同じ形状をしている。大きな違いはフレームが全体的に厚くなっていることと、ヘッドライトのように頭とメガネを固定することである。

一見すると、スポーツしている人がつけているただのメガネである。


しかし、これには最先端が全て注ぎ込まれている。

高性能小型カメラ、ジャイロ、超小型バッテリー、スピーカー、マイク、レジバー、振動センサー、等々……

小型化と性能を追求し、極限まで技術をのうしゅくした人類の技術の結晶である。

その大きな特徴は、網膜に直接画像を送り続けるという新技術を搭載した点だ。RATに搭載されたカメラが撮影した映像を脳が画像を認識する網膜に送る。これにより、網膜が生きている人間ならだれでも同じ景色をみることができる。たとえ弱視であろうとも、失明していなければメガネやコンタクトレンズなしで世界を認識できる。

また、目に直接画像を送りつけているので、視界には現実世界の情報プラス、オンラインのデータを表示することができる。

例えるなら、頭にスマートフォンが入ったようなものである。

友達とのメッセージのやりとりや、今日の天気、現在の時刻、株価、ニュース、自分の健康状態等が現実の視界に紛れ、入ってくる。

正に夢のデバイスである。


しかし、新技術はすんなりと歓迎される訳ではない。


RATが登場した頃、社会はRATに反対していた。例えば、「網膜に直接映像を送る技術」は、脳への影響があるのではないかと叫ばれたり、RATの登場により、衰退する産業が出ると予想されていたからだ。

実際、衰退した産業はある。

スマートフォン関連である。

今までスマートフォンでしていた作業のほとんどがRATで代用できるようになってしまい、電話、メッセージのやりとり、動画、写真の撮影、SNSえのアクセス等。

皮肉なことに、RATに搭載された部品の小型化、高性能化のノウハウはスマートフォン開発のものだ。

RATの販売台数と反比例するような形でスマートフォンは徐々に販売台数が減少し、スマートフォン関係の中小企業は、その変革に対応出来ず潰れた所も出た。

大企業は、その莫大な金、営業方針の転換と高い技術の動員により何とか生き残ることが出来たが、経営規模を収縮せざるを得なくなったり、大規模なリストラをすることとなってしまった所もあった。


RATは良い意味でも悪い意味でも我々に大きな影響を与えた。


それはゲームも例外ではない。


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