大農業時代
第16話 職場体験――始まりの詩――
農業を体験してきた。
今日の体験は、総合すると『まあそうだよね』ってところか。
とりあえず覚えている限り時系列順に書いていく。
俺はもののふ。コンプライアンスは一切考慮しない。全て書く。仕事を紹介してくれた友人がこのサイトに辿り着いている可能性が結構高いのだが、それでも書く。
まず、9時に現場へ向かう。グーグルマップによると片道3kmの山道だ。本当は自転車で行く予定だったのだが、家に唯一残されていた自転車は母が乗っていってしまったので、徒歩になる。大体30分だ。
今回の俺は相当気合いが入っていたので、しっかり8時には家を出た。いやこれは嘘だ。8時に家を出るつもりで10分頃に出た。まあそれでも十分である。
相当気合いが入っていたので山道も苦ではなかったのだが、半分越えたあたりで、ちょっと萎えた。前日に歩き回っていたので足が疲れていたのだ。それでももちろん歩を止めるほどではない。
そんでそれらしき場所に50分頃に着いたのだが、人が全く居ない。友人と連絡を取りつつ、オーナー(この呼称が正しいのかは分からない)に電話してみた。
どうやら場所が違うらしい。友人と合流してくれとのことだったので、合流する。この友人は面倒見が良いので助かる。
後で分かったことだが、ここの農家はかなり広く農地を所有しているようで、日によって作業場所が違うようだ。
友人もイマイチ場所が分かってなかったので、車で迎えが来る。タバコを吹かしたにーちゃん2人組だ。少し香った。
友人とにーちゃん達の他に、俺より一回りほど上っぽい人も一人居た。全員にとりあえずの挨拶を行い、車に乗り込んだ。
ORANGERANGEが流れていた。リーチが掛かった。タバコを吹かして、ORANGERANGEを聞く若いにーちゃんである。
前に別の友人が話していた、日雇いの引っ越しのバイトに行った際、やはりイケイケのにーちゃんの車に乗せて貰い、そのにーちゃんが、Youtuberによるブスにブスって言う企画の動画を見てゲラゲラ笑ってた、という話を思い出した。その話を俺が聞いた際、経験したことはないけどそういうのってあるよなーと思ったものだが、今まさにその状況かと思った。
しかし実際には気の良いにーちゃん達で、意外にも年下の大学生で同じバイトの立場であり、俺にも積極的に話を振ってくれ、文句の付けようがなくて逆に困った。
我々オタッキーはイケイケのにーちゃんと対峙した際、相手を勝手に悪者にしてしまいがちだが、相手が良くしてくれるならば、こっちもちゃんと良くすべきなのだ。それがコミュニケーションである。コミュニケーションに於いて、相手が良くしてくれるのにノリが合わないからといってコミュニケーションを遮断する場合、当然悪はこちら側である。所詮善悪でしかないが、そのことを忘れてはならない。
当然俺は一線は越えない。ついて行かない部分はついて行かない。だが俺の尊厳だけは保ちながら、コミュニケーションはちゃんと行う。人としても仕事としても、そうあるべきなのだ。
強いて言うならイケイケの奴特有の「下ネタがド直球すぎる」ってのは嫌な点である。
まず向かった先はほうれん草畑だ。
現場には唯一の社員だという人がいて、当然のようにタバコを吹かしていた。ここで俺は、これは農業では普通のことなんだと学ぶ。皆当然のようにタバコをポイ捨てするのだが、地球は困っても俺は困らない。俺の環境適応能力の高まりを感じた。
ほうれん草の収穫は特に難しいことも無く、友人に教えて貰いながらあっという間に終わる。
採ったほうれん草を車で仕分けのおばさん達のところへ運ぶ。俺は車に乗ってるだけだけど。
ちなみに俺は無免である。農業をする上で困るだろうとは気付いてはいたが、金が無いので免許なんて取れない。しかも車の運転したくない。免許取れるだけの金を得たら専属のドライバーを雇おう。なんちゃって! ええ~オモロ~w
おばさん達に軽く挨拶する。どうせ俺の名前なんて誰も覚えられないだろう軽い軽い挨拶を一応ね。あるわ~。
水を盗む。
次は確か畑でよくある盛り上がってる台形のアレを平す。めっちゃ休憩しながら。
今回働いてみて一番衝撃的だったのは、めっちゃ休憩することだ。待ちの時間も長いし休憩の時間も長い。今回は朝と昼で6時間くらい働いたけど、その内半分くらいは作業してなかったように思う。正直俺のサボリの血が騒いだ。
そんで次はスコップでなんか土手作った。これらをちゃんと説明できるように俺は学んでいかねばならない。
午前の部が終わった。
俺がヒョロヒョロ過ぎるからか、会話の取っ掛かりのためか、やたらとキツくないか心配されるのだが、今まで俺がやってきた仕事の中でも相当に楽な方だった。もちろんこの日が初めての体験で俺に出来る仕事なんて全然無いから楽だってのはあるだろうが、それにしても楽だった。
一番キツかったのは暑さだ。日当たりが干涸らびるほど良好で、一昨日辺りからタイミング悪く死ぬほど暑いので、死ぬほど焼けたし、参った。
そんでもまあ楽な方で、なんとなく、バイトの人達と話しながらダラダラ働く未来の自分の姿が見えてきた。俺が最も得意とする生き方だ。これだけを伸ばしてきた。何かやってるフリを。
昼休憩は1時間くらいあって、俺は飯を持ってきてなかったので大学生達が家まで送ってくれた。迎えにも来てくれた。ケツメイシだった。
昼はまずナス畑に行った。なんかバッテリーがおかしいっぽくて、やること無いので話しながらダラダラしていた。
次に前述した台形のあれやこれやの畑に行き、ダラダラした。
次にダラダラしながら、台形の盛り上がりにビニールをかぶせ、杭をハンマーで打ち付けてビニールを止める仕事をした。はっきり言ってあんまり上手くは出来てなくて、「これ俺の所為でビニール吹っ飛ぶかもな」と思ったけど、なんかもうダラダラした気分だったから、いいことにした。
学びとしては、とにかく真っ直ぐに杭を打ち込むこと。ちょっと曲がったときは気合いでねじ込むこと。ビニールを折り込む際、織り込んだ下の部分もちゃんと貫通するように杭を打つこと。
今回ダラダラしてた上に出来が悪かったとはいえ、ちゃんと学ぶことは忘れていなかった。杭を打つという単純作業の際も頭を働かせ、学びを止めなかった。これは俺的に良かったことだ。
そんで午後の部も終わった。
今度は社員の人が家まで送ってくれた。皆、善良だった。
とりあえず5月から週3で働くことになった。
おわかりいただけただろうか。
やはり、俺は俺なのだ。
農業王になろうと本気で思っていたのに、俺は俺にしかなれない。
サボらずに読んできて俺をある程度理解している人は、『まあそうだよね』と思っていることだろう。悔しい。悔しいぞ!
だが、今回の俺は諦めない。俺は農業王になる。
まず、座学する。週3勤務なので結構暇がある。実家暮らしで週3なら金は余裕なので、もっとシフト入れることは可能だが、それよりもまず俺自身の知識を底上げする。俺は人から教えてもらうより、自分で知る方がモチベーションが上がる。勉強することで、知識と興味を得る。
次に、「誰かやってー」みたいな状況ではやる気を示す。俺はやはり常にやる気を持って働くことは出来なさそうなので、何か状況的にやる気を出せそうな時は頑張る。見せつけられる場面でのみやる気を出すことで、能力と周りからの評価を上げる。
ここ最近、目的を意識するのが重要だと書いてきた。
しかし、農業王とは何なのか……。
少なくとも今の俺は知らない。
俺はポメラDM200を使っているのだが、PCを経由せずに投稿出来るようになった。わーい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます