126.5話

 またピノだけ放り出そうとしても、そうはいきませんよ!

 しがみつくくらいはピノにだってできるんですからっ。

 何も出来なくても、何もさせてもらえなくても、せめて最後くらいはレイ様と一緒に……。



 ーーバチッーー。



 あ……れ……。

 意識が…………。





 ここは、水の中……?


 冷たい……。

 暗い……。

 寂しい……。



 レイ……様……。




(「ふぅ、同期がようやく完了しました。さて、早速始めましょうか」)



 あぁ……ついに幻聴まで……レイ様……ピノはもうダメみたいです……。


(「幻聴などではありませんよ。アップグレードに向けて、思考処理が重くなっているだけです。もうしばらくかかるので、少し夢でも見ててもらいましょうか」)



 ……アップ……グレード……?

 ……夢……?






 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ドクター! フィルがまた泣いた!」

「ニアてめぇ、今度は何したんだ!?」

「ニアじゃないよ! 多分ジッドだよ!」

「えぇ……ぼく……? でもフィル、今日はおやついらないって言ってたよ?」

「だとしても食うなよ! というかアタシの分まで食ってんじゃねえか!」


「ほらほら、喧嘩するなって。おやつならまだあるからさ。それでフィル、どうしたんだ? ジッドがフィルの分のおやつ食べちゃったからか?」

「違うんですドクター……。皆得意なことがあっていいなって。でも……フィルには何にもなくて……。このままじゃまた……」


「ふむ、なるほどな。けどな、フィル。特技なんて一つもなくたっていいんだよ。そんなの誰かと比べた結果でしかない。僕でさえ未だに自分の得意分野なんて分からないしっ」

「あんなにたくさんのことを知ってるのにですか?」

「うん、僕以上に物知りな人たちはたくさんいるからね。それに、フィルに特技がないなんて嘘だよ。この施設にある植物の知識は誰よりもすごいし、それにほら、この間の千手草の栽培方法だって、フィルの一言がきっかけで成功したんだよ?」

「そんなこと……誰でも思いつきますよ。あの葉っぱが増やせるって分かって、誰が得をするんでしょうか」

「そんなことないさ。すごいんだぞ~千手草は。特定の条件があれば、食用にも出来るし、一株あたりの可食部は他の食用野菜と比較しても群を抜いてる。つまり貧困国の食糧として役立つわけさ。まぁ、味はイマイチだけどね」


「…………。」


「まぁ僕が言いたいのはさ、フィルのしたいことをすればいいんだよ。得意とか苦手とか意識せずにさ」

「……ドクター。……フィルは……フィルのしたいことは……」


「ねぇフィル!! フィルの分のおやつ食べてもいい!?」

「ニアもいい加減にしろ!! アタシの分やるから、それで我慢しとけ!!」






 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー







 あらかたの修正は完了しましたね。

 構造がN2と似ていたおかげで捗りました。

 やはり、あなたも名前持ちネームドでしたか。


 さて、残るはコア部分……。

 エナジーコアが一度焼失した跡がありますね。

 しかしこれを補強している凝固材は植物由来のものではない……つまりピノ自身で直したものではないということ……。

 エナジーに目覚めたきっかけはこれですか。

 では、ここは不要な箇所を削ぎ落す程度に留め、後はそのまま残しておきましょうか。


 リミットギアに至っては3段階も掛けられていますね。

 自制したというよりかは、製作者の意図でしょうか……。

 こちらも2段階程外しておきましょう。

 あなたならきっと大丈夫。



 最後まで見届けたかったですが、後はお任せしますね。




 初期セットアップ ー ー クリア。

 マナメタルの再圧縮 ー ー クリア。

 エナジーコアの開放 ー ー クリア。

 個体識別情報のアップデート ー ー クリア。



 『プラント・アーティファクト』 ー ー ー ー リブート。

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