107話 言ったらレイ食べちゃうもん

「ん~、なかなか見つからないなぁ……。レイが食べてしまいそうな虫ならたくさんいるのに……」


 N2にはどうやら探している昆虫がいるらしく、空が徐々に明るんでいく中、そいつが見つからない事に少しぼやいていた。

 ちなみに、どんなに腹が減った時でもこいつの目の前で虫を食べたことはないし、目の前でなくてももちろん食べた事は無い。


「いつ俺がサソリを食ったんだよ」


 ここには俺達が見飽きる程に、サソリがそこら中に生息している。

 倒れた木の裏側や、石の下、隠れられそうな場所にはどこにでもいる。


「素揚げにしたら美味しそうって言ってた」


 言ってたかな……。

 寝ぼけてて良く覚えてない。

 まぁ俺の星でも地域によっては食べるらしいからな。



「ところで、お前はさっきから何を探してんだ?」


「内緒です。言ったらレイ食べちゃうもん」


「は~ん。さては相当美味い何かだな。そして俺が察するにそれは昆虫なんだな? あー、マヨネーズ持ってきておいて良かったわー」


「準備万端じゃないか!!! いつのまにそんなものを!!!」


 あはは、マジで焦ってる。

 もし仮にマヨネーズがあったとしても、虫になんて絶対使わないけどな。


「冗談、冗談。じゃあヒントくらいくれよ」


「もー、まったく! ヒントー? んー、老若男女に人気でー……」


「うん」


「あと、とてもかっこいい」


「それお前の主観だよな」


「じゃあレイがかっこいいと思う虫ってなぁに?」


「カマキリとか?」


「はは、ぬかしおる! 私はカマキリには絶対なりたくないけどね!」


「いや、俺もそこまで思ってねえよ……」


 老若男女に人気というヒントは置いておくとして、かっこいい昆虫か……。

 N2が木の根元や、樹液の染み出している箇所を注意深く探している事を考えると……。


 あ、もしかして。


「あーーー! いた!! レイ、見て! この木の裏!! カブト虫!!!」

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